94.所属国を変更しよう
ダンジョンを抜けたセナは、タージイオタに到達した。
この街はエルドヴァルツ帝国に属しており、エーデリーデ王国の街々と比べるとやや統一化された印象を受ける。
街に入る際には軽いチェックが行われるが、エーデリーデ王国よりチェック要項が多いのにあちらより迅速に完了した。
なんでも、【看破】というスキルによって、嘘や隠し事を暴ける者がいるらしい。
「――冒険者組合へようこそ。なんの用事かな?」
セナはまず冒険者組合に向かった。国が違えど受付は綺麗な女性が担っているようだ。
「あの、この手続きをお願いしたいんですけど」
黒い便箋を取り出し、受付に渡すセナ。
内容を確認した受付嬢は驚いたような反応を見せた後、セナの冒険者証を預かった。
所属国の書き換えには時間が掛かるようなので、セナはしばらくレギオンと一緒に待つことにする。
「ねえマスター、この子はいつになったら仲間になるの?」
「うーん……少しずつ大きくなってるんだけど、分からないかな」
魔界アルラウネは確かに成長しているが、まだアイテムとして扱われている。なのでテイムの対象には出来ないのだ。
しかし、モンスターとなるのはそう遠くないだろう。
鉢植えの中の魔界アルラウネはぴょこぴょこと体を揺らして水と肥料を喜ぶ。
NPCの冒険者から変な目を向けられるが、レギオンは気にせず魔界アルラウネを可愛がった。
「――セナ様、お待たせしました」
三〇分ほど待っていると受付から声を掛けられる。
向かうと、所属国の書き換えが終わった冒険者証を返された。
ついでにランクアップもされたようで、ブロンズⅡからシルバーⅠに変更されている。
エーデリーデ王国では指名手配の影響でランクアップできなかったので、漸くのランクアップだ。
「セナ様はシルバーⅠとなりましたので、幾つか説明事項がございます」
どうやらシルバー以降のランクでしか利用できない権利や注意事項があるようなので、セナは大人しく受付嬢の説明を聞くことにする。
「まず、シルバーランクの冒険者は特別依頼を受けられるようになります。こちらは冒険者組合からの依頼となっており、契約書を交わしていただく必要がございます」
特別依頼は公にできない、もしくはしたくない依頼が半数を占めている。
他には未開拓領域の調査や冒険者の身分を利用した潜入調査など、色々な意味で危険な依頼ばかりなので、秘密厳守等の契約書を交わさなければならないそうだ。
「次に、指名依頼が受注出来るようになります。指名依頼は通常のクエストと異なり、報酬が依頼主のさじ加減で決まります。こちらは指名された冒険者に依頼を遂行できる能力があると判断した場合にのみ、提示させていただきます」
例えば、狩人として活動している冒険者にはその能力が活かせる指名依頼が提示される。
魔法が得意なら魔法の、剣技が自慢なら剣技に関する指名依頼、となる。遂行できない指名依頼は組合が弾くので、提示された時点でクリアは可能なクエストなのだ。
「セナ様はテイマーですので……」
「あ、今は狩人です」
「……狩人でしたら、観賞用もしくは食用のモンスターを捕獲したりですね」
セナは狩人である。しかし、冒険者組合に登録した時点ではジョブにすら就いていないテイマー兼アーチャーだったので、職業欄はテイマーと記されていたのだ。
今更な訂正をされても眉を顰めず、受付嬢は冷静に対応した。
「討伐依頼などは恒常、或いは緊急依頼ですので、あまり指名依頼になることはありません。ここまでで何か質問はありますか?」
特に思いつかなかったし、いざとなればヘルプを参照すればいいので、セナは「質問は無いです」と答える。
説明事項はこれで終わりのようで、受付嬢は深々とお辞儀をして世辞を述べた。
「ところで、そちらの鉢植えは……?」
「……あ、アルラウネの苗です。育ててます」
先ほどからずっと抱えていた鉢植えが気になって訊くと、セナはアルラウネの苗だと正直に答える。
苗、ということは幼体であり、つまりモンスターだ。
システム上の分類はアイテムでも、NPCからすればモンスターであることに変わりはない。
「テイムできるぐらい成長したらテイムします」
「……はい、そうしてください。アルラウネは大人しい生態をしていますが、街中に連れ込んでいいモンスターは従魔のみですので、以後お気をつけください」
ということなので、セナは鉢植えをインベントリに仕舞った。
それから受注可能な依頼の一覧に目を通す。
シルバーランクに昇格したことで、受注できる依頼の範囲が増えたのだ。
シルバーⅠの今は、レベル50からレベル70が推奨の依頼まで受注できる。
セナはクエストボードにあるクエストの中から、推奨レベルが70のものを探して受注することにした。
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