87.お祈りの効果
気を取り直し、セナは視界に映るその画面に意識を向ける。
《――【女神の寵愛】を獲得しました》
《――【
《――『色褪せた古の狩人装束』が力を取り戻しました》
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【女神の寵愛】
・“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”の寵愛を受けた証。加護と専用ジョブの性能が上昇し、他の女神の魅了を受けなくなる。
・装備解除不可。
・改宗すると呪いに転じ、全てのステータス、ジョブ効果、スキル効果が半減する。
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寵愛はセナの予想通り、“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”から与えられたものだった。神像の正体に気付き、祈りを捧げたからだろうか。
デメリット効果である改宗云々は、彼女からすれば無いも同然なので気にしない。
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『古の狩人装束』
・
・所有者固定。
・自動修復。
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頭はMPとVITに、胴はVITに、腕と腰はSTRとDEXに、靴はDEXとAGIに、靴はAGIに、それぞれ二〇〇%の補正に成長している。
名称から色褪せたが消えたことで、装備自体の色合いも良くなっていた。
白っぽい灰色と黒っぽい灰色はハッキリとした白と黒になり、古風でありながら神官らしい色も取り入れられている。
全体的な形状には変化が無いが、色彩が豊かになっただけで強そうに見える。
セナは普段外しているフードを被り、ポーズを取ってみた。鏡に映る姿は中二心を擽られる格好をした自分自身だが、彼女は「格好いい……!」と呟いているので気に入ったのだろう。
「マスター嬉しそう」
「嬉しいからね」
実は、高レベルになったことで素のステータスは高くなっているが、『色褪せた古の狩人装束』のままではいずれ力不足になると感じていたのだ。
なぜなら、この装備を入手したのはレベル20の頃であり、マーケットに出回っているプレイヤーメイドの装備品も強くなっている。いずれ性能で追い抜かれるのは確実だった。
それに、女神様に貰った大切な装備から乗り換えるわけにはいかなかったので、偶然ではあるがこうやって強化されるのはありがたいことである。
……ところで、神像が無ければどうやって強化するのだろう。セナは疑問に思った。
「……やっぱりお祈りだよね、うん」
やはりお祈りだろうか。次段階への強化するはやはりお祈りしかないだろう。今回強化されたのは、たまたま規定値に到達していたからだろうか。
セナはそう思った。
「――さてと、じゃあ出発しようか」
それから改めて教会で祈りを捧げてから、セナはゼラルイータから旅立った。
サブジョブ関連のクエストにも興味はあるが、セナの最優先はレベル上げと信仰である。
「(レギオンを追い返したのって、たぶんジジさんだよね。だからあの神像は神域に繋がってるんだと思うけど……)」
次の街ラヴァシータへと続く道を進む途中、セナはレギオンを追い返した存在が何かを考えていた。
レギオンはとても強力なモンスターである。
それを一方的に追い返せる存在などジジか、それこそ神ぐらいしかいない。
「(だとしたら、なんで神域に繋がってるんだろう? 女神様のための場所で、繋げるのはジジさんしかできないはずなのに……。人が作った程度の物が、そんな簡単に繋がるはずないよね?)」
時々襲ってくるモンスターは従魔だけで蹴散らせるので、セナは余所見をする余裕があった。
……そもそも、出現するモンスターのレベルが今のセナたちからすれば弱いのだが。
「レギオンずるい。ずっとマスターと一緒」
「レギオンもレギオンだからずるくない」
「それでもずるい。レギオンとレギオンは同じだけど違うもん」
モンスターを斃し終わった少女レギオンがセナの下に戻ると、大人レギオンを指差して不満げに言った。どちらもレギオンだが、感情を表現したり発露する方法が異なっているようで、レギオン同士でも嫉妬したりするらしい。
「じゃあ、交代にしたらどう?」
「マスターもこう言ってる」
「むぅ……マスターが言うなら仕方ない」
それでもマスターであるセナを優先するのは共通しているので、彼女が言えば残念がりつつも大人しくしたがった。
少女レギオンはとても嬉しそうな顔でセナと手を繋ぎ、鼻歌を歌い始める。
……そして、ホーンラビットとヴォーパルバニーは死んだ目でその様子を眺めていた。
最初のフィールドでテイムできるモンスターの時点で、この二体はレギオンとは圧倒的なステータス差をつけられている。
今では小手調べとして自爆させられるか、トレイン狩りの囮としてしか使われていない。
グレーターセンチピードは蟲型モンスターなので強者に従うという本能で動いているが、もし少しでも理性があれば、今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られるだろう。
それだけ彼らは酷い扱いを受けている。しかも、頑張っても何一つ報われない最悪な職場だ。
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