26.コルタナ地下遺跡
冒険者組合に戻ってきたセナは調査内容をメモした用紙と、襲ってきた男の遺体と剣を提出した。
「うーん、最強のキメラを作るためにモンスターを集めていた、と。それに血を操る魔剣なんて聞いたこと無いですねー……」
組合員は訝しんでいたが、目の前に証拠があるので否定することも出来ない。
遺体と魔剣は証拠として保管されることになった。
「――ちょっと待て、ソレの首に掛かってる飾りはたしか……」
「知ってるんです? 先輩」
すると、別の組合員が声を掛けてきた。
先輩と呼ばれた彼は遺体の首下を探り、掛けられていた銀細工の飾りを取り外した。
「ああ、間違いない。生命教団という犯罪組織のものと同じだ。となるとコイツはその構成員だな。剣にも同じ紋様が彫られている」
十字架に瞳を合わせた紋様は、確かに魔剣と首飾りで共通している。
「たしか、最近はベータリマとの境にあるコルタナ地下遺跡で目撃情報があったな……。とりあえず、構成員には賞金が懸けられていたはずだから、まずはその支払いだな」
セナは賞金として五万シルバーを受け取った。
幹部であれば五〇万、総主教を名乗る男には一〇〇〇万もの大金が懸けられている。
「それで……一つ頼みたいんだが、コルタナ地下遺跡で連中が何をしているか確認してくれないか?」
《――クエスト:ガンマリードの異変がクリアされました》
《――クエスト:コルタナ地下遺跡の調査が発生しました》
「いいですよ。北に行けばいいんですよね?」
「ああそうだ。コルタナ地下遺跡には幾つか入り口があるが、全て内部で繋がっていたはずだ」
追加で発生したクエストを受注したセナは、ガンマリードを出立して北へ向かう。
ベータリマに続く街道をグレーターセンチピードに騎乗して爆走すると、一時間ほどで遺跡らしき建造物が散見されるようになった。
マップにはコルタナ遺跡群と表示されている。地下遺跡は文字通り地下に進めばあるのだろう。
セナは地面に降り、近くの入り口から内部に侵入する。
《――ダンジョン:コルタナ地下遺跡に侵入しました》
どうやらコルタナ地下遺跡はダンジョン扱いらしい。
「兎さんは探索してね。蜈蚣さんは……ギリギリ通れるかな。通れそう。ゆっくり着いてきてね」
兎二匹を先行させマッピングしつつ、セナはグレーターセンチピードを引き連れてじっくり探索しつつ進む。
地下遺跡の壁は砂岩のような素材で造られており、どこかの民族らしい紋様が延々と彫られていた。
勿論セナがその紋様を知っているはずもなく、それっぽいのがあるなぁとしか思っていない。
地下遺跡の通路はそこそこ広いが、グレーターセンチピードが通ると窮屈に見える。しかし、分岐を通じて背後から奇襲される心配が無いため、セナは後ろを気にせず進み続ける。
そもそもモンスターの姿が見えないため、奇襲どころか戦闘すら起こっていないが……
「あ、松明だ……? なんだろうこれ」
しばらく進むと、地面に松明が転がっていた。
地面と壁の隙間に煤のようなものが詰まっており、よくよく観察すると細い線が確認できる。
壁に掛けられている燭台のお陰で真っ暗闇ではないが、足下まで完璧に照らされているわけではないので、気付かなければスルーしてしまっていただろう。
セナは従魔を呼び戻し、細い線が続く先を確認する。
T字路を曲がり、次の三叉路を左に進み、その先にある階段を降りる。
階段を降りたあとの十字路は真っ直ぐ進んで、道なりに進んだら三つ目の分岐で右に曲がった。
「行き止まり?」
そこは行き止まりであり、壁画以外は何も無かった。
しかし、マッピングは順調に進んでいるので、ここまでの道が間違いでは無いだろうとセナは思う。
「(仕掛けがあるのかな。罠は無さそうだけど……あ、これ動かせそう)」
観察していると、壁画の一部が動かせることに気付く。
指先ほどの小さなパーツだが、僅かな凹みに沿って動かしていくと、壁画の内容が変わっていた。
剣を掲げる乙女が、剣に刺し貫かれたポーズへ。
乙女に付き従う男が、諸手を挙げて歓迎するポーズへ。
そして……重い音が鳴り壁そのものが地面に沈んだ。
「……わたしじゃ動かせないから、代わりに蜈蚣さんが押して」
壁画の奥には円形の空間があった。中央には悪魔のような石像と、横に突き出た棒がある。
命令されたグレーターセンチピードは、言われたとおりその棒を押した。
すると石像が回転し、連動するように部屋の地面が下がっていく。ゆっくりと、階段が形成されていったのだ。
そして、セナは完成された階段を下りていく。
壁に懸けられている燭台は、これまでと違って不気味なデザインとなっている。その意匠の変化から、セナはここが生命教団という組織の拠点だと確信した。
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