11.プレイヤー最前線はいずこか
ジョブに就いたセナは改めて冒険者組合に赴いた。何か手頃な討伐クエストが無いか探しに来たのだ。
始まりの街と比べるとかなり広いのでたくさんのプレイヤーが訪れても余裕がある。
「(こっちは納品でこっちは討伐。でもホールラットかぁ……。冒険者ランクを上げないと受注できるクエストが限られるみたい)」
セナの冒険者ランクは最底辺のアイアンⅠとなっている。アルファベットではないのは海外プレイヤーへの配慮だろうか。
クエストボードに貼られているクエストの多くはアイアンかブロンズ向けであり、シルバー以上は受付近くの専用ボードに貼られている。
「なあ君、初心者みたいだけどジョブには就いたのかい?」
「あ、就いてますけど……」
プレイヤー相手だと即座に発動されるぼっち属性。
「ああ悪い、初期装備だったからまだかと。クエストを受けるならマーケットか店で装備を購入しておくべきじゃないか?」
「あ、えと、マーケット……って、なんですか」
「マーケットはプレイヤー同士での売買が出来るシステムだよ。UIからアクセスできるから見てみるといいよ。じゃ」
アドバイスだけして先輩プレイヤーは去っていった。すでに何かしらのクエストを受けていたのだろう。
セナはアドバイス通りマーケットを覗いてみた。
「(えっと、絞り込み機能はこれかな。装備の防具、レベル15以上20以下にして……たくさんあるなぁ)」
このゲームでは店売り装備だけでもかなりの数があるため、そこにプレイヤーメイドの装備が加わると、絞り込み機能を使ってもそれなりの数になる。
レベルさえ満たしていれば誰でも装備できるものから、性別が一致しないと装備できないもの、特定のジョブに就いてると効果を発揮するものなど、プレイヤーメイド品は店売りより種類が多い。
「(頭装備は【くまくまヘッド】が今のところ一番優秀みたい。残念)」
ボスモンスターを討伐した報酬だけあって性能はいいのだ。ちなみにかなりの高値で幾つか出品されている。
「(胴装備は……うっ、高い……安いやつでも一万シルバーする……)」
性能がいい装備は自然と高騰するものだ。
しかし、それにしては全体的に値段が高いとセナは感じる。
「(レベルキャップって100だったよね。なんでレベル20の装備がこんなに高いんだろ)」
条件を変えても状況は変わらず、レベル20で装備できるものは軒並み高額に設定されていた。
レベルキャップが高めに設定されているのもあって、こんな序盤の装備が高騰している理由がセナには分からなかった。
さもありなん、発売から一ヶ月も経っていれば最前線はかなり先だと思うのが普通だ。
だがこのゲームは【スクラッチベアー】のように難易度が高く、今なお最前線はアルファディア周辺であり、プレイヤーの大半はこの街で足止めされている。
そのためレベル20帯の装備しか入手できず、トッププレイヤー達は少しでもいい性能の装備を求め、結果として装備全体の値段が吊り上がっているのだ。
「(……性能は低いけど、レベル10のこっちにしよう)」
財布と相談したセナは性能が一段も二段も劣る装備を購入した。それでも初期装備よりは強いのでデメリットは無い。
「(ちょっとムズムズする……。このゲームでもこれは同じなんだ……)」
ダイブ型VRゲームでは防具は二種類の方法で装備できる。
一つはリアルと同じように自分で着替える方法であり、もう一つは従来のようにシステムから装備する方法だ。
人前で着替えるなんて恥ずかしいこと出来ないのでセナは後者の方法で装備したが、一瞬で肌触りや重量が変化するのでムズムズとした違和感を覚えるのだ。
「(――よし、これにしよう)」
セナは悩んでから、報酬がいい討伐クエストを受注した。
安いとはいえ装備を一セット購入したので金欠になったのだ。
討伐対象のモンスターはアルファディアから東の沼地にいるポイゾトード……毒を持った大きなカエルである。
西は虫系の、北は無機物系のモンスターが出没するらしいとクエスト内容から推測したので、セナは弓矢が通じやすい東を狩り場に選んだのだ。
「これ受けます」
「はい……はい、確認しました。達成報告の際はポイゾトードの素材を一〇個納品してもらう必要があるので、道中で捨てたり売却したりしないよう気を付けてください」
「分かりました、捨てたり売ったりしません」
NPC相手ならぼっち属性を発揮しないセナであった。
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