10.捧げ物をしよう

 セナはジョブ選択画面を開いた。どんなジョブに就けるのか気になったからだ。


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『選択可能ジョブ』

“従魔師”

 従魔を使役して戦うジョブです。MPに補正が掛かり、従魔をサポートするアーツが獲得できます。

“弓士”

 弓を用いて戦うジョブです。遠距離攻撃に補正が掛かり、弓装備時に効果を発揮するアーツが獲得できます。

“狩人”

 弓や罠を用いて戦うジョブです。弓と罠使用時に補正が掛かり、対象に状態異常を与えるアーツが獲得できます。

“慈悲無き獣使い”

 従魔に何度も自爆を強要させる者だけが就けるジョブです。MPとパーティー枠に補正が掛かり、従魔を犠牲にするほど効果が上昇するアーツが獲得できます。

“慈悲無き中庸の狩人”

 カルマ値が中庸の者だけが就けるジョブです。通常の狩人より高い補正が掛かり、カルマ値に応じて威力が増減するアーツが追加で獲得できます。

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「(五つだけ……? 自由に選ぶことは出来ないんだ)」


 ピンとくるジョブが無かったので前の画面に戻り、今度は捧げ物の方を選択する。

 “慈悲無き獣使い”というジョブは少し興味があったが、名称が気に入らなかったので後回しにしたのだ。


「……病毒に冒された生物の死骸?」


 そして捧げ物に出来るアイテムとして提示されたのは、中々に特殊なものであった。

 捧げ物は幾つかあるのだが、セナに提示されたのは三つある。


 一つは『病毒に冒された生物の死骸』、一つは『劇毒のポーション』、一つは『毒属性の従魔』だ。


「(どれを捧げればいいんだろ……あ、捧げるのは好きな物でいいんだ)」


 セナはインベントリからポーションを取り出して、《ポイズン》と《マナエンチャント》のコンボでポーションを毒のポーションに変化させた。

 これだけでは捧げ物に選択できなかったので、【スクラッチベアー】戦でやったように《ポイズン》を重ね掛けすると猛毒のポーション、劇毒のポーションと順に変化する。


「(できれば三つとも捧げたいし、一回街の外に出て探してこようかな)」


 今連れている従魔は捧げたくないので、捧げ物用の従魔を探すのと同時に『病毒に冒された生物の死骸』を探すことにした。

 捧げ物用の従魔はなんでもよかったので適当なモンスターに《テイム》を使い、あと一つの捧げ物を探す。


「うーん、病毒……病毒かぁ」


 病毒に冒された、とあるので何かしらの病気を疾患しているのは前提として、どうすれば死骸をアイテムとして入手できるのかセナは考える。

 これまでのドロップ品は素材ばかりで、ボスモンスターも例外ではない。


「……これ飲ませれば病毒に冒されたことにならないかな?」


 劇毒のポーションを取り出し、太陽にかざしてみる。

 濃い紫色の液体はどう見ても毒であり、普通のプレイヤーが飲めば確実に喉と胃がやられるだろう。


 セナは兎さん一号に、近くのモンスターをボコボコにして生け捕りにするよう命令した。

 選ばれたのはホールラットという雑魚モンスターだ。


「えい」


 無理やり口に劇毒のポーションを流し込まれたホールラットは悲痛な鳴き声をあげてジタバタと暴れるが、HPがかなり削られていたので数秒でアイテムをドロップした。


「……よし!」


 ドロップ品は『病毒に冒された生物の死骸』であり、ホールラット一匹丸々が素材としてインベントリに収まった。


 セナは早足で教会に戻り、再び広間に入るとすぐさま祈ってシステムウィンドウを開く。

 そして三つの捧げ物を選んだ。劇毒のポーションは追加で作成し、ホールラットは《ポイズン》と《マナエンチャント》で毒属性にした。


《――“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”へと捧げますか?》

「うん」

《――捧げ物を確認》

『……敬虔な信徒に我が恩寵を与えよう』


 すると、クリスタルが光り輝いて女性の声が広間に響く。

 クリスタルはいつの間にか女性の像に変化しており、それはキャラクリ時に見た神のシルエットに酷似していた。

 半透明なクリスタルなので色までは分からないが、この像が“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”の姿なのだとセナは理解する。


「病気にならない体をくれてありがとうございます。頑張って捧げ物を用意しました」

『……感謝は不要なり。我は常に汝を見ている。その努力も、行為も、捧げ物も、等しく供物であり信仰だ。その信仰に見合った恩寵を汝に』

《――恩寵によって【疫病の加護】が強化されました》

《――恩寵によって新たなジョブが追加されました》


 像は元の形に戻り、システムウィンドウはジョブ選択画面になっていた。


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“疫病と薬毒司りし女神の慈悲無き狩人”

 “猛威を振るう疫病にして薬毒の神”の恩寵によって解放された専用ジョブです。MPと狩りと判断される全ての行為に補正が掛かり、疫病と薬毒に関連するアーツが追加で獲得できます。

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 六つ目のジョブとして追加されたこのジョブは破格の性能を誇り、セナは“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”に関係するジョブなら就かない理由は無いと選択した。

 病気にならない体をくれた。これだけでセナにとって信仰する理由になり、感謝する理由になるのだ。


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『セナ』レベル23

“猛威を振るう疫病にして薬毒の神”の信徒

└【疫病の加護】

ジョブ:“疫病と薬毒司りし女神の慈悲無き狩人”

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