第12話 お休み前に

 晩御飯の片づけをして、順番にお風呂に入った。お風呂、ちゃんとトイレと分かれてるの久しぶり。ちょっとゆっくりしちゃった。


 寝間着として夏奈が貸してくれたのはパジャマだ。新品だとシャツしかなくて、と言い出すのでいきなり押しかけてるんだし全然着てるやつでいいよーってことでパジャマをかしてもらった。と言うか替えの下着としてコンビニで買ったのパンツだけだし、シャツはちょっとね。

 ちなみに夏奈は洗濯乾燥機をお持ちでした。明日朝から同じのを着れるの助かる。朝にでも服を借りてコインランドリーに行かなきゃと思っていたので、とっても助かる。


 比較的新しいのを貸してくれたんだろう。くたびれたかんじはない。でもほどほどに着崩れて柔らかいのでとっても着心地がいい。

 あとなんかちょっと、いい匂い。使ってる柔軟剤が違うから当たり前だけど、どこのつかってるんだろ。後で聞こう。


「お待たせ。お風呂ありがとーな」

「う、うん。気にしないで。じゃ、私も入ってくるね。好きにしてくれていいから」


 夏奈がお風呂に向かったので、そのまま夏奈が座っていた席につく。好きに、と言われたけど、あんまり部屋を見るのも失礼なのでとりあえずテレビをつける。中々大きいテレビだ。あ、そうだ。

 私のサブスク、すぐ見れるようログインしておこう。これネットにつながるやつ、だね。おっけ。最近のはリモコンにもう書いてあるからすごいよね。


 あ、ログインしたら履歴見れるな。いや、別に変なのは見てないけど、直近がちょっと深夜アニメ連続なのがな。適当な洋画を再生しておこう。リストに入れていつか見ようとは思ってたからセーフだよね。


「お待たせ」

「はーい」


 夏奈は私に貸してくれているパジャマと色違いので戻ってきた。よっぽどお気に入りのやつなんだろう。


「うぇーい、おそろじゃん」

「え? あー、ふふ、言われてみれば。照れるね」


 隣に座りながらはにかんだ夏奈は可愛らしく微笑んだ。清純系っぽいなぁ。これで恋人いないとか、周りの人間は見る目ないのばっかだな。と思いつつ、リモコンを手に取る。


「ええやん、仲良しっぽくて。何見る?」

「と言うか私のテレビで見れるんだ」

「ログインしといた。最近はやってて気になってるんはこの辺かなー、見たいのある?」

「あ、じゃあこれは?」

「おっけー」


 さっそく再生。ぬくもりを求めてぎゅっとくっついて見た。夏奈は集中するタイプなのか静かにしていたので、私も静かに視聴した。

 ちょっと前に話題になっていた青春恋愛物で、夢を追う青年視点で物語がすすんでいく。徐々にヒロインと距離をつめたところで物理的に離れてしまい、それまでなよなよしていた主人公が男気をみせてハッピーエンドゴールイン、と言う内容だ。

 よくあるベタな話だけど、だからこそ安心して見ていられるのと、単純に演技や演出がいいのかすっと話が入ってきた。ちょっぴりときめくような気持ちにもさせてくれる、いい話だった。


「んー、よかったなぁ」

「うん……」


 ぐっと腕をあげて背筋を伸ばしながら夏奈に声をかけると、夏奈はどこかうっとりしたように頷いた。その色っぽい感じに思わずドキッとしてしまうほどだ。そんなに恋愛映画が好みだったとは。適当に候補に入れただけだけど、喜んでくれたみたいでよかった。


「あ、と。そろそろ寝よっか」

「そうやな」


 ぱっと気づいたように夏奈は気恥ずかしそうにしながら立ち上がった。トイレをすませてからベッドに入る。当然だけど急に寝具の用意があるはずもなく、普通に一緒のベッドだ。

 ちょっと狭いけどその分肌寒い夜にちょうどいいように感じられた。


 時間は日付が変わったくらい。寝るのに全然異論はない。だけど今日は一日楽しかっただけに、まだ眠気はない。つまり、ここからガールズトークだ!


 トイレに行く時危ないからと言って電気を最小のオレンジにした気遣いの夏奈に、私はますます夏奈と仲良くなりたいと元気になってしまったので、目がなれてから声をかける。


「ねぇねぇ、夏奈」

「何?」

「恋人いぃひんって言うてたけど、どんな人がタイプとかあるん?」

「え? どうしたの急に」

「寝る前と言えば、ガールズトークが定番やろ?」

「修学旅行じゃないんだから」

「眠いんやったら我慢するけど」

「んー、……いいけど。秋葉は、どうなの?」


 逆に聞き返されてしまった。でもこういうとほんとずるいと思われるのだけど、あんまり好みと言うのを意識したことがない。

 なんとなくいいなと思ったタイプと直感的に付き合ってきた。と言っても別に経験豊富ってほどもなく、二回付き合ったことがあるだけなのだけど。多分、あんまり大恋愛に向いている性格じゃないのだ。恋愛映画は嫌いじゃないけど、あくまで娯楽だし。

 だからこそ、人の好みを聞くのが好きだったりするのだけど。うーん。好み。あえて言うなら、今までいいなと思ったポイントだろうけど、言葉にしてどういう感じなのか考えたことが無い。


「私の場合、好きになった人がタイプって感じやしなぁ」

「えー。それってちょっとずるくない?」

「わかるけど。逆に言うたら、こう、あんまりにも暴君なタイプとか苦手やけど」


 でもそう言うのが好き、と言う人の方が少数派だ。明るいとか大人しい人とか、そう言う性格面のプラスの中での違いとか、背が高い低いとかって言う見た目の違い。そう言う好みがぴんと来ない。実際、付き合った二人は全然タイプが違う。もちろん二人とも優しいとか、そう言う人として基本的な共通点はあるけど。


「……じゃあ、具体的なタイプを聞いていくからそれぞれありかなしか答えてみてよ」

「お、ええな。面白そう」


 悩む私に、夏奈はクイズ形式で私の好みのタイプを解き明かそうとしてくれるようだ。それはいい。私も自分のタイプについて深く考えたことはなく直感で生きてきた。ここらで明文化するのもいいだろう。

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