夜は百合
第10話 夕食は?
大阪の乗換駅まで戻ってみたけど、まだお腹もそれほどではない。でも帰るのもおしい。
と言うことで駅から近い飲み屋街に行きよさそうな居酒屋に適当に入ることにした。私もすっかり酔いが醒めているし、夏奈も全然飲んでないしね。
「秋葉、まだ飲めるの? 本当に大丈夫?」
「大丈夫じゃなく見える? もう球場の分はさめたって」
「大丈夫に見えるけど、あの、最悪私の家に泊まるとか全然いいけど、歩けなくなるレベルだと連れて帰れないから、本当に気を付けてね」
「大丈夫やってー。まあ気ぃつけるわ」
夏奈は本人があんまり飲まないだけあって、私の飲酒量に結構心配しているらしい。さっきも言ったけど、べろべろに酔った時でも普通に歩いて帰ったし記憶もあるし転んだりもないから全然大丈夫なんだけどなぁ。
それにそもそも10杯くらいなら全然吐いたり二日酔いにならないくらいだから、まだ結構余裕なんだけど。まあ心配かけるのも悪いし自重しよう。
「ここなんてどう? 利用したことあるんやけど、すぐ出てくるし大衆居酒屋らしいメニューの多さで楽しいで」
「わー、ほんとだ。すごい数のメニューがはってあるね」
「おすすめは天ぷらやな」
天ぷらが今も最安ひとつ60円は安すぎる。このご時世に頑張りすぎ。飲み物も安くて、本当にいい千ベロ店。
椅子はあるけど立ち飲みって感じの、じっくりお話する店ではないけど、球場観戦でまだ興奮が残っている今だとこのくらい活気があってもいいと思う。
「天ぷらかぁ」
「あら、気にくわへん? 食べたいもんとかでてきた?」
「そうじゃないけど」
なにやら大真面目に悩んでいるようだ。専門料理店じゃない限り、全メニューないわ、なんてことはないのだからもっと気楽に考えていいと思うのだけど。じゃあとりあえずと言うことでぶらりと一周する。
その間、お、この店もよさそう。アナゴ一本ずし、ラーメン、焼き肉、魚専門店で今日のお勧めはぶり大根! とあれこれ目にとまった店をすすめてみるが、いまいち夏奈の反応はよくなくて本当に一周して戻ってきてしまった。
「ご、ごめんね。あれもこれもよく見えてつい、優柔不断になっちゃって」
「うーん」
なんという優柔不断。夏奈とランチに行くときは選択肢が限られているのもあるし、私が食べたい物を言ってあわせてもらっていた。今日はお腹が空いてないからこそ、たまには夏奈の好きな物で、と思ったけど、別に譲ってもらってたとかじゃなかったらしい。
まあ私と一緒で今はそんなにお腹が減ってないから余計になのかもしれないけど。でもそれならそれで、最初のお店結構推したのに断られたし。
でもなんていうか、人によってはイラつくくらいの優柔不断だけど、夏奈がしてるとこれはこれで、ものすごい気遣い屋で心が優しいからこそ、そう言う性格なんだろうなって感じるし、可愛く感じる。
うーん、でもこのままじゃ、解散と言うことになってしまう。せっかく夏奈と仲良くなれたのだ。このままの勢いでがっつり仲良くなって、週明け会社で会った時に名字呼びに戻ってる、なんてことが無いようにしたい。
「あ、じゃあさ、さっき夏奈の家泊まってもいいって言ったやんか? 宅飲みしぃひん? そこまで帰ったらお腹ももうちょい空いてるはずやし」
「えっ」
「あ、都合悪いんやったら」
「あ、ううん。いいよ。ただお酒とか買わないとだけど」
よかった。私の部屋なんかは今日来る? 何て勢いで言っちゃうと後悔するくらい散らかっているけど、夏奈ならそんなことないよね。
と言う訳で急遽夏奈の家に行くことになった。
折角なのでちょっといいものをと言うことで、駅前のデパ地下であれこれと買う。お酒は、私結構居酒屋でもビールとチューハイしか飲まないからちょっと迷ったけど、夏奈が折角だしとあれこれお酒を選んだのでいっぱい買ってしまった。
「お、おっも。ていうかこの量絶対飲み切れへんと思うけど」
「まあ、また飲みにきてくれたらいいんじゃない?」
あ。夏奈も、今日だけで終わらせたくないと思ってくれてる。それがわかって、なんだか嬉しいけどくすぐったい気にもなって、私は照れたのを誤魔化すようにおつまみの棚に手を伸ばした。
「これこれ、エイヒレ。これほんま美味しいよな」
「そうなんだ。私食べたことないんだよね」
「ほんまに? 魚介系は好き?」
「魚は好きだよ」
「じゃー、大丈夫やと思う。乾物言うてもやっぱちょっとは生臭さあるからなぁ。他にも色々買っておいたほうがええやろな。サラミはどう? 実は私サラミ食べたことなくて」
「あー、いいね。頻繁には食べないけど、サラミ好き」
おつまみも色々買いこんだ。カルパスがそんなに好きじゃないからサラミも食べたことなかったんだけど、夏奈がお勧めするなら美味しいのかな? なんにせよ楽しみ!
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