第4話 球場グルメのお味は?
かぶりついたジャンボ焼き鳥、そのお味はちょっと塩っ気が強いけど、美味しい! グッドです! 冷めたりしても美味しくて、お酒に合うようにしているのだろう。豚串も柔らかくて美味しい。白いご飯が食べたい。それかよく冷えたアルコール。
ちらっと青山さんを見る。マスクを外した青山さんがカレーを食べている。食事の時しか見ないので、こうして横から顔を見るのは新鮮だ。
「ん? どうしたの?」
「んー、青山さんって、お酒好き? 確か歓送迎会では飲んでた気もするけど」
「ほどほどに、かな。あとで一つくらい頼もうかと思ってるけど。山田さん好きなら全然先に飲んでよ?」
「そ? じゃあビール頼むわ」
よし。ということでビールを背負っているお姉さんを探す。試合前でも段々時間が近づいてきてさっきより人が増えているけど、私の前の席は空いたままなので探しやすい。
コロナ対策なのか、販売員さんはそれぞれ手に商品名が書かれた大き目のPOPを持っていてとてもわかりやすい。 それぞれ席に向かってマスク越しでもわかる笑顔で手をあげている。どうやら手をあげれば呼べるシステムらしい。
ビールはもっとわかりやすい金属樽のようなイメージだったけど、布でおおわれていて普通にリュックにも見える。観察しているとビールは背負っている大きな鞄に銘柄が書かれているようだ。どこにするか。球場と言えばこの背負っているビールと言う印象があるので買いたいけど、そんなにビールが好きでもない。
どうしようか、ユウヒはちょっと苦手、と思ってるとタイミングよくプレミアムの人が来てくれた。プレミアムは比較的飲みやすいので頼むことにした。
ポニーテールで頭に花がついている。漫画で見た雰囲気ままだ。にっこにこの笑顔でしゃがんで接客してくれる。ビール一つ、と頼むと膝を立てる形で安定してビールを注いでくれた。ほぉぉ。ちょっと感心してしまった。
「ありがとうございます」
お礼を言うとにこっと笑ってくれた。普段はレジ越しだしあまりじろじろ顔を見ることもしていなかったからかもだけど、そんなに接客の人の愛想とか気にしない。だけど何と言うか、このお姉さんはものすごく印象がいい。ちょっと感動する。
早速一口。濃い味付けでちょっと麻痺した舌先が洗い流される。まだ温かさの残る豚串を一口。むっ。美味しい。あー、これは合う。きんきんに冷えている訳ではないけど、それもまた屋外で飲み食いするピクニック的な楽しさと言うか、美味しい。700円のビールと思うとなお美味しい。と言うのはちょっと貧乏性だろうか。
「美味しい?」
「美味しいっ。飲む?」
「ん、うーん……一口だけ」
「ええよ」
プラコップを渡すと青山さんは遠慮がちに一口飲んで返してきた。ほんとに一口だったな。
「ん。美味しい。ありがとう」
「ええよええよ」
お酒、あんまり得意じゃないのかな? でも一口飲んでくれたので、雰囲気的には盛り上がってきたからいいか。
残りのビールを飲みながら串を食べきる。食べた串はカレーの蓋にのせておく。串を舐めてるわけじゃないけど、何となく食べ終わったのを入れられたらいやだろうし。食べきったのでカップごと青山さんの方に押しやり、私もカレーの蓋を開ける。
コップ一杯飲みほしたことでちょっといい気分だ。酔いすぎないよう、チェイサー感覚でペットボトルのお茶にも口をつけ、気持ち酔いをさましてからカレーを一口。
具があまりなく、甘めの味付けでよくあるカレーだ。名物、と言われるとそんな名物? と言う気はする。万人受けするようにだろう。癖はなく、ほどほどにカレーらしいスパイシーさがあり普通に美味しい。
などと辛口評価したが、これも球場効果だろう。天気が良くて空も綺麗で空気もよくて美味しい。これを選んでおけばまあ外れないと言うレベルだ。
「ん」
とカレーを堪能していると、ようやく試合が始まるようだ。始球式がはじまり、あっさり終わった。
もうちょっと大げさに、これから試合開始ぃ! と言うようにファンファーレがなるとかわかりやすい何かがあると思っていたけど、あんがいぬるりと試合が始まった。
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