第2話 阪神甲子園球場に到着!
三月の半ばと言うこの季節。日中は暑いくらいの時もあるけど朝晩は肌寒い。と言う服装に難しい時期なので少し悩みつつ、ヒートテックを下に着用しつつ上はセーターとジャケット言うシンプルな格好にした。強気な太陽にお出かけ日和と感じつつ、しっかり日焼け止めをぬった。
お互い同じ会社に勤めるために一人暮らしをしている、と言う共通点があるためそう住居は遠くなかったため、一番近い乗換駅で無事合流することができた。
「青山さんは関西出身ちゃうやんな? どこのファンなん?」
「どこってことはないかな。親が興味なかったし地元でも盛んじゃなかったし。でもこっちきてからは結構みんな阪神好きみたいだし、六甲おろしは歌えるようになってるから、どこかと言われたら阪神、かな?」
「やんな!」
よかったよかった。これで巨人と言われたら、悪くはないけどちょっと気まずくなるところだった。今日は阪神巨人戦ではないけど。
と胸をなでおろしつつ、大阪環状線で乗り換えてやってきた兵庫県。途中で乗り換えた瞬間、急に人が増えて阪神タイガーズのユニフォームを着たわかりやすいファンの人たちに囲まれた時はびっくりしたけれど、同時にわくわくした。
同じ阪神タイガーズを応援する人がこれだけたくさんいるのだ。それはにわかな私にとっても嬉しくなる事実だ。
「青山さん、はぐれへんよう肩つかんでもいい?」
「……いいけど、手を繋ぐとかのほうがよくない?」
「あ、じゃあそれでお願いします」
なんというか、手を繋ぐのってちょっと子供っぽいと言うか、子供じゃなければ恋人、と言う感覚があるのですこし気恥ずかしくてそう提案したのだけど、青山さんから不思議そうにされたのでそう言うことにした。肩をつかむと片方だけ重さがのるから肩がこるかもしれないしね。
青山さんと手を繋ぐとなれない感触にちょっと緊張したけど、実際にかなりの人込みの中なので繋いでいるとこれではぐれないと言う安心感もあった。
そうこうしていると目的の甲子園駅に到着する。乗ったのと逆側から降りる様にとアナウンスがあったので、手を繋いだまま降りると駅からそのまま流れる様に排出された。同じ電車に乗り合わせていて隣にいたお上品そうな奥さん二人組は阪神に関係ない話をしていたし、きっと普通にこの電車を利用しているお客さんなんだろうな、と思っていたら気づいたら前にいたのでどうやら同じ目的地だったらしい。
やはり関西人は阪神ファンになる流れに逆らえないのか。と特に逆らった記憶はないけどちょっとびっくりした。
「あれが甲子園球場か。すごいな、もう見えてるやん」
「ねえ、わかりやすくてよかった。ショップもあるみたい」
「ほんまやねぇ、後で時間あったら見よか」
「今見ないの?」
「見たいんならええけど、お腹へらへん? 球場の中で色々ご飯売ってるんやけみたいなんやけど、食べへん?」
「あ、そうだね。じゃあそうしよっか」
よし! それじゃあ念願の、球場飯だ! ということでとことこ近づいていく。駅から休場へ道を渡るのだけど、普通にわたって大丈夫なのかな? それにしてもすごい人だ。
マスク越しでもわかるくらい外までいい匂いがしている。手に入れたチケットにどこからはいるかも書かれている。沢山出入り口があるようだ。正面にあった案内で何となく場所を把握してはぐれないように手を繋いだまま歩いていく。
球場の横を歩いていくと、たくさんの入り口とそこに向かう人がいて、まるで迷宮に挑むようでわくわくする。はやる心を抑えながら自分の入場口へ向かう。
荷物検査をして手指の除菌をしてから中にはいると謎のクリアファイルをもらった。新しい球場のPRなのかな? とりあえず鞄に入れておこう。
「うわー、すごくいい匂いがするね。山田さん、もう食べるものは決めてるの?」
「まだやなぁ。とりあえず席の場所確認しぃひん? はぐれても席で合流できるし」
「そうだね」
席はアルプススタンド、40段の61。数字が大きすぎてすぐにピンと来ない。壁の数字を見ながら歩くと、段の数字的にここかな、と思って近づいて立っているスタッフさんにチケットを見せた。
すると三階の別の場所と指摘をうけ、なんとか指定された場所にでることができた。そこではチケットの確認がされなかった。どうやら一部の席だけは管理されていてチケットなしでは出入りできないようだ。不思議な気もするが、表に出て見ると意外とつながっていなかったので、逆に通してもらっても無駄足で疲れるだけなので助かった。
特別な席なのだろうか。中の通路はわりと狭くそこそこ距離があったので表にでてから見てもさっきチケットの確認スタッフが立っていたのがどのあたりかよくわからない。内野っぽい気もするけど。
「ここかぁ、意外と空いてるね」
「確かに。オープン戦はそんなに混んでないんかな?」
土日だし電車の混雑から相当狭いのではと思っていたが、意外と前の席が空いていた。運よく端の席で、その横には人がいたが多分同じ会社関係でとったら連番とかなのだろう。知らない人なので同じ会社か不明だが会釈だけしておいた。
前を向くと、視界の右側に目立つ鮮やかなオレンジのポール? これがファールのラインか。こうやって見ると結構目につくものだ。
この席からだと球場全体を見下ろしている形だ。屋根もなく思った以上に開放感がある。グラウンドでは水を撒いている。あんなにしっかり濡らしていたのか。地面の色は確かに濃い色をしていたけど、そう言う土の色なのかと思っていた。人は遠くて小さいけど、全体の雰囲気が感じられて悪くない。
「よし、さっそく行こか」
初めての景色にちょっとした感動を覚えつつ、空腹を体が訴えるのも無視はできない。席を確認したので一旦また中に入ることにした。
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