阪神甲子園球場で野球を見るのって最高に楽しい!
川木
昼は野球観戦
第1話 にわかやけど球場に行きます!
職場の掲示板の前に立って私は考えていた。野球を観戦するべきかどうか。どうやら会社が球場のお仕事に関係したとかで、その縁で希望者は今週末の野球観戦のチケットをタダでくれるそうだ。私の部署は一切関係していないので全然詳しくないけど、新しい球場ができるとか?
まあそれはともかく、大事なのは無関係な私でも希望すれば観戦できると言うことだ。もちろん交通費は自腹だけど、そこまで贅沢は言えない。
野球観戦。興味がないではない。こちとら生まれも育ちも職場も関西の、まごうことなき関西人。
幼少期は朝ごはんの時間に『おはようパーソナリティ道場洋蔵です』と言うラジオが流され、興味がなくても阪神が勝った時はそれを知り、ふとした時に鼻歌としてでるほど阪神タイガーズの六甲おろしは脳に刻みこまれた。
そして地元のよく行く家電量販店『Goshin』は阪神が勝つと来店ポイントがもらえることもあり、無意識下にも阪神の勝利を喜ばしいものと刷り込まれてきた。
野球の漫画はいくつも呼んでいるし、夏休みの甲子園などの家族が視聴する野球中継に付き合わされてきたので、基本ルールはなんとなくわかる。
そんな風に平均的関西人として育った私は無事、なんとなく巨人は気に食わないし、阪神が勝ったと聞くとなんとなく嬉しくて、ファンと言うほどではないけどたまに野球中継もちょっとは見る、くらいの阪神タイガーズ贔屓として生きてきた。
と言う訳で昔から多少は野球観戦にも興味があったけど、お金を払って近所でもない離れた球場にわざわざ行って一日拘束されるほどでもない。と言うくらいだった。だけど最近、漫画で球場飯と言う存在を知り、もう少し興味があるなぁ。でもご飯の為に球場に行くのってどうなんだろ。
と思っていたところにこれだ。チケットが無料となれば、ハードルはぐぐんとさがる。
実際に野球場で見るとなると途中で飽きたりしたら勿体ないな、と思っていたけれど、無料なら球場飯だけで満足しても後悔はないだろう。
興味がある。結構行きたい。
でもなぁ、とちょっと私の心が二の足を踏む。球場は阪神甲子園球場。何度もテレビで見ているあの甲子園、とくればさらに興味はある。大きいところだ、なんなら観光地レベル。きっと球場グルメの規模も間違いないだろう。
だけど兵庫県はあまりなじみがない。大阪ならまあまあ馴染みはあるが、そこからさらに行く兵庫は少し遠い。往復時間を考えると丸一日かけることになるのは事実。土地勘が無いところに一人で行くのはちょっと気が重い。
たまに野球中継を見ている時も家だと飽きてチャンネルを変えてしまうこともしばしばある。そんなにわかななんちゃって野球ファンの私が果たして無料だからとほいほい行ってもいいのだろうか。
周りから浮きすぎていたたまれなくなったりしないだろうか。これが本当に好きならにわかでも何でも一人で行く程度には行動力はあるつもりだ。普通の一人での外食くらい余裕だ。でも実家をでてからラジオをきいていないので、選手の名前も最近はよくわからない。楽しめるのだろうか。
「山田さん、野球、興味あるの?」
「あ、青山さん」
どうしようか、と悩んでいると不意に隣から声をかけられた。
青山さんは同期だ。と言っても入社時期が一緒で最初の研修は一緒だったけど、その後の部署分けで別れてから一緒だったことはない。最初に連絡先の交換はしているし、顔をあわせたら挨拶はするし、たまーにランチを一緒にしたりはしているくらいの仲だ。
「まあ、ちょっとな。そんなにファンってことはないんやけど。青山さんは?」
「私もちょっとある、けど、一人やとちょっとなーって思ってたんだ……よかったら、一緒に行かない?」
「んー、行こっか」
会社で会うだけで、プライベートな関係は一切ない、友人とも言い切れない仲。人柄はある程度わかっていて、仲良くなるのにやぶさかではない青山さんと、これをきっかけに仲良くなるかもしれない。そんなプラス要素で背中を押された私は、こうしてついに野球場デビューすることになった。
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