おまけep197 私は新婚で在り続ける。そのためなら努力は惜しまない・・・

「ひっくしっ!」ズビ…

「あん、大丈夫?妙ちゃん…」

「だいじょばない。。」アウー

「はい、お水。おくすり飲んで?飲んだら温かいハーブティーを入れてあげる…」


 かわいちょうに、かわいちょうにと、花粉症の妙の頭や背中を撫でくりまわして、お湯を沸かしにキッチンへと忙しそうに走るみちる。妙のくしゃみで始まった朝。


 みちるさんは弱っている妙を見るのが好きです。いえ、決して辛い思いをしてほしいわけではないの。ただ、純粋に…


(か、かわいい…。このまま2人で家にいて甘えて欲しい…。弱ってる…、弱ってるのね…貴女…。みちるの包容力が今、パンドラの箱から飛び出したがっているわ…頼って、、頼って欲しい、、無限に、、)


 胸を押さえ、息を荒くするみちる。冷静を装おねばならない。なった本人にしかわからない苦しみを、かわいすぎますおかわり!モードになっていると気づかれてはならない。呼吸を整えながら、喉に効くハーブティーを選びポットにお湯を注ぐが手は小刻みに震えていた。その姿は献身的な新妻風味。しかし中身はかわいこちゃんに興奮したただの変態であった。


「はい、妙ちゃん。熱いからフーフーして飲んでね♡少し上目遣いがいーかも。」


「ありがと…ございばす…上目??」クルチイヨ…


「はぁんっ!おかわり!!」マイベイビー!!


「…え?ま、まだ飲んでないけど…?」


 みちるは、熱くて飲めないハーブティーをちびちびと飲もうとしている妙を、じっと熱く見つめていた。段々と身を乗り出して近づいていることに気が付きもせず。ジリジリ…


(あ〜……………尊〜い……………両手でカップ持ってる〜……………スプーンで飲ませてあげたい………………)


 だけど、今日は水曜日なの。妙ちゃんはお仕事。みちるはお休みの日なの。休んで欲しい。ゆっくり寝ていて欲しい。言ってはみたが、「花粉症でやすめるわけないでしょ。」と一蹴りされてしまった。うん、わかる〜。うちの患者さんが仕事休んだら、みちるもそうやってツッコむもん。


「休みなよ。妙ちゃん。」*我慢など知らない私はこの子といたい


「は?休めないってば。病気じゃないし。」


「だって…朝ご飯だっていらないっていうし…」*痩せないで。ぽよぽよしていて。


「味がわかんないんだよ…。食欲ないし。でも体は元気だよ。」


「そ、ソフトせんべい…食べる…?」オイデ…


「え?って、それ赤ちゃんのじゃない?」


「なにかおかしい??」アンパ◯マンダヨ…


「なにもかもおかしいけど…なんで買ってあるのか不思議。」


「いつか食べさせたくて…。」*そして激写しておきたくて。


「まぁ、いーけど。。どこに隠してたんだ…。そろそろ仕事いくね。」ズビ。


 歯がなくても食べられるせんべいを、無理やり口に入れられた妙。写真撮影会を始めそうなみちるを制して、やれやれと立ち上がった。


「ちぇ。今日みたいな日が一番かあいいんだけどなぁー!でも、本当に辛そうだから、早退できそうならして帰っておいで??」


「大丈夫だよ、みちるのクリニックで出してもらった薬は去年も効いたもん。」


「懐かしいわね。出会った時を思い出しちゃう♡」


「あはは。そうだね。じゃあ、仕事行ってきます。みちるはお休みなんだから、私のことは気にせず有意義に過ごしなよ??」


「行ってらっしゃいませ。弱っている時に申し訳ないのだけど、いつもの儀式はお願いします。」


 いつもの儀式とは、みちるがそれなりに満足するまで行われる、キスとハグ、愛の囁きのフルコンボである。妙が本気で挑めば5分で済む。適当感を少しでも出すと10分以上かかる。今日は鼻が詰まって愛の言葉が弱々しかったから7分半かかった。


「と言うわけで、愛してます。行ってきます。。」

「言ってらっしゃーい♡」


 玄関を出て、妙の姿が見えなくなるまで手を振るみちる。大丈夫よ。ズル休みしてくれたら嬉しかったけど、妙ちゃんがいなくても良妻はやることが多いの。

 まずは一人で軽い朝食を。食べ終わったらお皿を洗って、掃除機をかけるわ。


「妙ちゃんが少しでも過ごしやすいように、家中の埃と花粉を駆逐するわ!」


 掃除機をかけながら、みちるは思い出していた。二人が出会ったあの瞬間を。お互いに意識しながら遠目で感じていた運命について。


「そうよ。これは運命だってわかったのよね。」


 さぁ。私が今日やることは決まったわ!


「若返るわよっっっっっ!!!!!」


 今日、仕事から帰った妙ちゃんが、、再び、運命のビビビを感じてくれるために・・・。あと8時間しかないわ。急ぐわよっ!!ソォレイ‼


 続く。


 




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