おまけep194 忙しいのよ私は!ツンデレは燃費が悪いのよ!

「ふふんふーん♪ローズマリーが育ってきたなぁ。鶏肉買ってきてマリネしよう。ミントは摘んでミント水を作っておこう♡うー、寒い寒い。」


 凍てつく寒さの朝。ベランダでしゃがんでハーブの世話をしながらご機嫌なのは、金髪美人の香織だ。読者モデルから有名になり、最近ではテレビでも見かけるタレント業にも精を出している。明るくて元気、そして温厚な性格が人気なんだ。


 ガラガラとサッシの音がする。振り向くと恋人の萌が起きて自分を探していたようだ。ここにいたのかという顔で仁王立ちしている。


「おはよ。どこに行ったかと探しちゃったよ。」

「あ、ごめんね!萌が起きる前にミント水を作っておこうかと思って摘んでた♪」

「うう~、寒い。早くおいで?風邪引いちゃうよ。」

「うん。もう終わったからすぐ行くよ。萌こそ風邪引くから部屋に戻ってて?」

「はぁい。寂しいから早くね?」


 私の彼女、萌はめちゃくちゃ甘えん坊だ。さっきまで寝ていたくせに、私がガーデニングをしているちょっとの時間でも寂しいと言う。だって寝てたじゃん、なんて言えば倍にして言い返されるのがオチだから謝って済ませるのが得策だ。まぁ、そこがかわいいところなんだけどさ!


「終わったよ~。待っててね、今温かい紅茶を、」

「先にぎゅってして~!」

「あ、はいはい。今すぐ行きますよ、萌様!」

「私が香織をあっためてあげるんだよ。わかってないでしょ?」

「あ、そっか。ありがとう♡」

「いいよ♡萌の体温をあげる♡」


 萌って不思議なんだ。普段は甘えん坊で、お世話して~ってわがまま放題なのに、尽くしたがりな所もある。気分で変わるみたいだからよく振り回されるけど、こんなに美人なのにギャップがあってそういう所もかわいい。


「ぎゅー!あー萌があたたかーい!!」

「そうだろうそうだろう。私がいないと困るだろう。」ムフフ

「そりゃ困るよ。大好きな恋人なんだからさ。」

「1万点の答えですね♡ねー、お腹空いた!」

「うん、準備してあるよ。今日は2人ともオフだから、朝昼兼用で色々作ったよ♪」

「香織は私のお世話が好きだね♡寝ている間にそんなに頑張っちゃってさ?」

「最近お互い忙しかったからね。時間があるときくらいは喜んでもらいたいじゃん。」

「あら。じゃあ、今日はご飯を食べたらまたベッドに戻っちゃう?♡」


 今日はべったりだな。2人とも完全オフな日が最近なかったからね。今日はとことん甘やかして、エネルギーを充電してもらおうかな。萌のストレスがないのが私たちの円満の秘訣だし。


「とりあえず、ご飯の支度をするから、顔を洗っておいで!」

「はぁい、ママ。」ルンルーン♩


 機嫌が良さそうでなによりだよ。笑ってる萌が一番かわいいからね。機嫌を損ねたら長いし。さ、まずはサラダとスープから用意してっと、、


 萌が軽く身支度を終えると、2人でのんびりと朝食を食べる。音楽をかけて、最近の仕事の話をして、とてもご機嫌だ。食事を終えると、ソファの上でくっついてゴロゴロ。テレビを観て、たわいもない話をしながらイチャイチャとしていると…


「なんだかあっという間に正月も終わって、もうすぐ春だね。」

「そうだね、カレンダー通りの生活じゃないから曜日感覚がないしね。」

「あ、バレンタインデーがもうすぐだ。萌はチョコレートが欲しい?それともケーキ?」

「しまった!考えてなかった。そうか!バレンタインだ!!」

「まだデパ地下も盛り上がってるだろうから見に行く?」

「どうしよう、手作りしよっかな、、香織がいないときに1人で・・・あ!みちるさんにどうするのか聞かないと!被ったら大変!!」


 おっとぉ??雲行きが怪しくなってきたぞ??この話の流れは・・・


「っていうか、おねーちゃんはどうしてるのよ!まったく連絡がこないじゃない!」

「新年の仕事が始まったばかりで忙しいんじゃない?」

「妹より仕事を優先??ありえない!!」

「いや、そういうわけじゃないと思うけど、、」

「決めた。直接行こう。ね、香織。今日行こう。みちるさんと打ち合わせしないといけないし。」

「妙ちゃんにあげるお菓子が被らないように、でしょ?」

「そう!」


 ほら。また妙ちゃんだ。別にいいけど、私に何をあげるかより妙ちゃんにあげるものを考える方が先なんだよね。別にいいけどさ。


「また突然行くと迷惑がられるよ?約束してから行くなり、せめて電話して、」

「断られたら行けなくなるじゃん。凸するしかないのよ、あの家は。」

「迷惑がられてるのがわかってるんなら、」

「迷惑がってるのはみちるさんでしょ?おねーちゃんを独り占めしたいからって!」


 だめだ、、止められそうにない。さっきまではベッドでいちゃいちゃするって言ってたんだけどなぁ。もう行かない選択肢はなさそうだ。別にいいけどさ、、妙ちゃんより先に私のことを考えてくれてもいいのにとは思う。小さいことを気にするようで嫌だけど。


「聞いてる?香織?」

「あ、うん。聞いてるよ。」

「夕方行くわよ?OK?」

「うん。わかった。」

「ほら、時間ないわよ?」

「ん?」

「私たちがイチャイチャする時間!あと5時間くらいしかないよ?」ハヤクハヤク

「5時間??」十分では…

「お互いがっつり充電しておきましょう。ほら、早く!」

「そんな、一緒に居るだけで充電できてるけど、」

「何言ってるのよ?思いっきりどろどろにくっつかないと私は満足できないわ!」

「え、うん。わかった。」

「なによ?気分じゃない??」

「いや、、妙ちゃんの話しかしないから、」

「何言ってるのよ?香織にあげるものを香織に話す訳ないでしょ。」

「そっか。うん。」

「香織がいない隙に準備するに決まってるじゃない。」

「だね。」

「ほら、早く。200%充電するわよ。」

「え、はい。」

「前から言ってるけど愛してるって言われない日があったら隠れて泣くからね?わかった?」

「うん。」



 十分愛されてるからいっか。シスコンだけど。


 続く。



 


 

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