おまけep189 勝とうと思ってはいけない。クイーンと付き合っているのだから。

 私の名前はパンダ。・・・だったと思う。あれ?寝起きだから思い出せない。

 私は朝起きるのが苦手だ。目が覚めて、特にこの寒い時期は毛布にくるまってしばらく覚醒に時間をかけたい。惰眠最高。

 朝起きると、愛する恋人は大概すでに起きていて、隣にいない。今日もキッチンから心地よい生活音が聞こえてくる。


 カチャ。カタン。パタパタパタ・・・ウフフー‼

 あ、こっちに向かってくるスリッパの音だ。まだ寝ていたいな。


「ぱ、ん、だ、ちゃん♡・・・・・・まだ寝てるわね♡」

「ぐぅぐぅ。まだ寝てます。」

「あ、起きてた♡何かご要望はございますか?特になければちゅーの嵐にしますが♡」

「添い寝でお願いします、、」

「それはちゅーのオプションなので、みちるの盛り合わせですね♡かしこまりました。では失礼します、、」


 布団がちょっとめくられると、一気に冷気が中に入り込んだ。

「う、寒い〜。」

「大変、すぐに暖めて差し上げますね♡」


 ぎゅぅっと抱きしめられて、背中をさすられる。うちの彼女は甘やかすのが好きなんだ。そして顔中にちゅー攻めされた。チュチュチュチュチュチュチュチュチュチュ‼

「寒いですねー、あったかくなりましたかー?」

「はい、あったかいです。このまま寝たら最高です。。」

「可愛いでちゅねー、寝坊助パンダさんでちゅねー。」

「ねぇ、私の本当の名前ってなんだっけ。最近忘れそうになるよ。」

「パンダだよ、妙ちゃん♡」

「思い出した。ありがとう。パンダだったね。」

「そろそろ起きない?今日はクリスマスイブだよ♡」


 そっか。さすがにそういうイベントデーは大事にしないといけないな。まだ寝ていたいし寒いから布団から出たくないけど、仕方ない。


「わかった。起きるね。今日のプランは決まった?」

「それなのよ!ごめんねずっと決められなくって。みちるはね、二人で過ごしたいから邪魔者から逃亡を謀りたい一心だったんだけど、良く考えたらあいつらも今日くらいはカップルで過ごしたいって思ってると思うの。」

「萌たちとカオルたちのことだよね。まぁ、そうなんじゃないかな。」

「だから、今日はお家で過ごそう♡今日はどこに行っても混雑してるでしょ?こんな美女が2人で歩いていたら、一日にナンパされた回数を更新してしまうわ。」

「私はいいけど。みちるはイルミネーションとか見なくていいの?」

「こんなにキラキラと輝いている彼女様がいるのにわざわざ見に行くまでもないわ♡」

「寝てるだけなのに輝いて見えるんだね。有り難いことです。みちるも爆竹みたいに輝いてるよ。」

「あん♡朝から刺激が強いわね、パンダーリン♡ケーキを買いに行きたいから、ご飯を食べたら少しだけお出かけしよう?上野に行けばパンダのケーキがあるかしら?」

「クリスマスなのにパンダじゃなくても良くない??」

「妙ちゃん、動物のかわいいケーキがいいでしょ?」

「や、美味しければなんでも。」

「あ、そうだ。パンダーリンで思い出した!トースト焼いちゃったから早く起きて?スヌーピーのトースターで焼いたからかわいいよ♡」

「わぁ、ありがとう。嬉しいな。」


 こうして私は、やっと起きてみちると朝食を取る。スヌーピーの顔の焼きめがついたトーストに、みちるが苺ジャムとバターを塗ってくれた。最近、みちるの甘やかし度が歯止めなくなっている。まるで3歳に戻った気分だ。

 せっかくのクリスマス。私だってみちるを甘やかしてうっとりさせたい。さぁ、どうやって大人のクリスマスイブを演出しようか・・・。でも実際勝てる気がしない。


「ごちそうさま。じゃあ、着替えて出かけようか。」

「うん♡」

「みちるのあの薄いグリーンのニットを着てるところが見たいな?」

「あれをご所望ですか?そうします♡」

「うん。とっても似合ってるから。」

「んふふー♡」


 よしよし。嬉しそうだ。今日は褒め殺しにしよう。


「妙ちゃんは、本当はダッフィーの着ぐるみを着て欲しいんだけど、嫌だよね?」

「え、。さすがに外では恥ずかしいかな。」

「じゃあ、普通の服でいいよ。本当はあれを着てもらって、手を繋いで買い物したいんだけど。」

「子連れ感がすごい。。今日は恋人らしくしようよ。」

「わかったわ。つい妙ちゃんがかわいくて♡」


 危ない危ない、、パジャマだと言ってみちるが買ってきた、あの着ぐるみを着せられそうだった。クリスマスのコスプレじゃないだろあれは、、ていうか今朝着てたじゃないか。*実はさっきまでダッフイーだった妙。


 普通のおめかしを着て家を出た2人。駅前のデパ地下で買い物をするつもりだ。

 休日のクリスマスイブだ。駅前に近づくといつもより賑わっていた。


「うわぁ、すごい人だね。ケーキ屋さんも並んでるよ。」

「妙ちゃん、みちるの手を離さないでね?もしはぐれたらすぐ電話してね。迎えに行くから。」

「はぐれたら私が迷子になったていなんだね。。」

「だって、みちるは妙ちゃんから離れることないもん。妙ちゃんがフラフラしなければはぐれないよ♡」


 ああ、今日もダメそうだ。この子ども扱いは、収まりそうもない。っていうか、結局みちるはこうしてるほうが嬉しそうだな。


「妙ちゃん、バナナジュースあるよ♡」

「のむー!」

「ぎゃわいい!♡」


 はぁ・・・もう、いいや。これで。


 バナナァ‼



 続く。



 

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