おまけep185 萌と香織はかなり出来る子

「さ、香織。私たちも早く帰るわよ。行くわよ、レンジャーピンク!」オシオキヨ‼

「うん、萌。本気出さないとね。レンジャーレッド!!」ヘーンシン‼


 妙とみちるがいちゃいちゃしながら帰宅している頃、さっきまでのおちゃらけムードが嘘のように、萌と香織は真剣な顔をして家路を急いでいた。レンジャーごっこはしていたけれど。実はこの2人は今、人生の大きな勝負が控えていたのだ。


「萌がフランスのブランドコレクションに出演するのは、来月だったよね。」

「うん、そう。香織がバラエティ番組に出るのは2週間後だね。。」

「うん。とりあえず、身体だけは仕上げておかないと、。」

「今日は食べすぎてるからね。まぁ計算してるから大丈夫だけど。」


 雑誌モデルとして人気がでた2人は、徐々に頭角を現していた。SNSのインフルエンサーとして若者に絶大な支持を受けている。

 そしてついに、萌はモデルとして大きな舞台に立つことが決まった。香織はタレントとして芸能界デビューが決まっていた。出来る子達なのである。


「それにしても、萌。なんで妙ちゃんたちに報告しなかったの?」

「うん、、まだ胃が痛いっていうか。すごく緊張してるからさ。家族に言うと弱気になっちゃいそうで。香織なら笑って元気にしてくれるでしょ?」

「そっか。妙ちゃんに言ったら心配するもんね。今の萌は気を張ってないとってことか。」

「うん、、1人でフランスに行くのだって怖いもん。香織について来て欲しい、、。でもそれじゃダメなんだよなぁって。」

「一緒に行きたいけど、私も仕事休めなかったしね。でも、あの舞台に立てるなんて、一流として認められた証拠だからね。もう萌は今までの萌ではいられない。モデルが憧れる一流モデルとして強くならないとね。」


 夜道を歩きながら、ぎゅっと手を繋ぐ2人。しかし、このところの2人の活躍はすごかった。もう外でイチャイチャするのは難しいと考えていた。


「帽子にマスク。昼はサングラス。夜はだて眼鏡。結構めんどくさいね、有名になるって。」

「萌は目立つからね。細いし背も高いし、長くて綺麗な黒髪。あ、ってことは。妙ちゃんって大丈夫なのかな、、」

「私と似てるからってことでしょ?前から間違えられてたから、、おねえちゃんも大変だと思うよ。」

「だよねぇ。。なにしろ、、似てるから。。」

「じゃ、香織はおねえちゃんが彼女でも良いってことだよね?」

「何言ってんの?私にとっては萌は萌だよ。誰も萌の代わりなんてできないよ。っていうか、言わせたかっただけでしょ?」

「うん。言わせたかっただけ♡」


 甘過ぎるので誰か塩を下さい。そんな感じの2人だが、妙が有名モデル萌と間違えられまくっているという予想は、当たっていた。


「みちりゅー!杏仁豆腐も買っていいー?」*妹とは違って自己管理できない姉

「ブラックコーヒー飲みたいって言ってたのに、、甘いの食べたいの?♡」

「食べたい~!」*赤ちゃんのまなざし

「かわいいからいいよ♡」


 とそこへ。

「すみませんっ!萌ちゃんですよね!ファンです♡」

「え、嘘っ!萌ちゃんがいるの!?きゃー!握手してください!」

「ホントだ!!写真一緒に撮って貰えませんか!!?」

「杏仁豆腐買ってる!SNSでバズらせるのかも!!うちらも買おうよ!」


 1人騒げば皆も騒ぐ。妙はあっという間に数人に囲まれてしまった。


「いえ、違います。よく間違えられるんです。別人です。」*怯える妙


「でも、隣に居る人も芸能人ですよね?ほら、グラビアの、、」


「誰がグラビアだ。ちがうっつの。胸を見て言うな。」*いつもどおりのみちる。


 今までは、道ばたで「萌ちゃんじゃない?」とヒソヒソ言われるくらいだった。人に囲まれた妙はさすがにビビりまくって、なんとか杏仁豆腐を買うとコンビニを逃げるように走り去るのだった。イヤァ‼ツイテコナイデー‼


「はぁはぁ、、あー怖かった。あんなに囲まれたの初めてだよ、、」

「薄々感じてたけど、最近多いよね。萌ちゃんに間違えられること。相当人気が出てきたってことじゃない?あとみちるが誰に似てるとかじゃなくてグラビアって言われるのなに!?」

「そうなのかもね。見間違えるほどにてると思わないけどなぁ、、。みちるはほら、ぼんきゅっぼんだからさ。胸で認識されるというか。。」

「知らない人が見たらそっくりなのかもね。妙ちゃんのほうがマシュマロ感強いのにね。みちるの胸もマシュマロだけど。」

「うーん、こうなったらイメチェンするしかないかな。。社会生活に支障がある、、」

「イメチェンって例えば??」

「んー、ごりごりにマッチョ化してみるとか、、」

「ダメ。みちると萌と末が泣くよ。」

「えー、じゃあプチ整形、、」

「今の妙ちゃんが完璧な彫刻なんだからいじるのはダメ。」

「えー、じゃあ、またアレか。。いつものにするよ。。」

「なに?いつものって、、」

「明日見せるよ。。」

「変なことしないでよ?みちるの宝物を奪うようなことは、、」

「大丈夫。前も喜んでたよ。」


 いつものアレとは、一体・・・!?こうなったら、ただ自分が変わらないといけないのは癪だ。嫁サービスとしてイメチェンしてやる!と妙は楽しむことにしたのだった。そして翌日、、


「ただいまー!行ってきたよー!」

「妙ちゃん、おかえ・・・ぎゃーーーーぁぁぁ!!!」

「どう?変じゃない??」

「た、妙ちゃん、、そうだったのね、、気がつかなかったわ・・・。妙ちゃんの、、妙ちゃんの、、ショートカット!!!リボンの騎士様っ!♡」


 妙はみちると付き合っている間に、一度だけ髪を短くしたことがある。それも萌と髪型が似すぎていたためだった。それから伸ばしていた髪を、今回はそれよりも短く、そして薄いクリーム色にカラーしていたのだった。


「大変・・・。これ以上、妙ちゃんがかわいいの更新があるなんて・・・!!か、かっこよ、、しんどい。。しんどすぎる。。外国の王子様みたいっ!目が離せないわっ!!」


「そ?変じゃなくて良かったよ。コレでしばらくは萌に間違えられなくて済むでしょ。」フゥ


「その代わり、、みちるに執拗に追いかけ回されることになりますが、、宜しいでしょうか、、」ハァハァ・・・


「え、息荒いっ、、ま、まって、じりじり寄ってこないでっ!ぎゃぁ!!」


「よいではないかー!」スキィー‼‼‼‼‼‼‼♡♡♡



 ん。なんの問題もないな、こいつらは。

 あと、カオルと2人でまた会社で騒がれる流れ。



 続く。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る