おまけep176 かわいいは偉大

 久しぶりに来た、みちるの実家。以前と変わらず、玄関には巨大なアメジストのドームがあった。*みちるの実家は地主でお金持ち。


「ただいま〜!はぁ、久しぶり~。」

「はい、どうぞ!さぁ、妙ちゃんも上がってね♡」

「はい、お邪魔します!!」


 実は妙、、隠していたけれどかなり緊張していた。なぜなら、まだみちるの父親には会ったことがないからだ。


(お母様はみちるとそっくりだから、扱い方は簡単なんだけど…。お父様はどんな人だろう…。)


 カチコチに緊張しつつ、前回会えなかった理由は確か、お父さんが地方アイドルのおっかけをするためにでかけてしまったんだよな。どんなやねん、、と思い出す。


(まぁ、まじめでこわい感じではないだろうな。ただ、アイドルの衣装とか着せられたらやだな。)


「お、お母様?その、、お父様はご在宅ですか?」


「あ、そういえばお父さんは?」


 妙とみちるがそう尋ねると、麗華はフッと下を向き、思わせぶりなため息をついた。


「みちる…。とうとう話さなくてはならない時が来たのね。。あのね、お母さんとお父さんは実は…」 


「ま、まさか、、、」


 妙とみちるが息をのんで次の言葉を待ち構える。もしかして、知らない間に不仲に?すでに別居を?それとも離婚・・・と震えた。そして、麗華は娘達に真実を打ち明けた。


「実は、、お父さんとお母さんね、、また推しが増えたの。」


「ん、え?」*目を丸くしてかわいい妙

「あ?」*眉間にシワを寄せたみちる


「実は、、韓流アイドルに夢中になってしまって。。お父さんは今、韓国にいるわ。そしてお父さんが戻ったら私も遠征に♡」


「ん?つまり、いないってことね?楽しそうに若い子を追いかけ回している、いつも通りってことで良いのね?なぜそれを事前に言わないのか不思議でならないけども。」


「うん。ごめんね、みちる。みちるの年齢的にお父さんにヒットしないのよね。。みちるはいつでも会えるけど、コンサートはその日しかないから。。」


「え、地味に言わなくても良いこと言ってない?みちるってこれでも童顔で人気絶大なんだけど!」


「・・・というわけで、今日はね、二人に私の推しのDVDを見せようかと♡まだ10代の7人組なんだけどね?綺麗な男の子達なのぉ♡」


 ・・・妙とみちるは思った。え、マジで興味ないんだけど、と。そして、嘘でしょ。またお父さんに結婚の挨拶できないってなに?しかも理由が推し活・・・。と軽く呆れていた。しかし、妙はDVD鑑賞を断る口実をすでに考えていたんだ。


「お母様。また楽しみが増えたようで良かったです。DVD、是非拝見したいのですが、その前にお墓参りをするべきかと思うんです!」


「ああ、そうね妙ちゃん!みちる達、お墓参りしに来たようなものだもん。ってことでお母さん。お墓参りに行きましょ!」


「ええ~。まぁいいけど。じゃあ、お墓参りが終わったらDVD鑑賞ね?」


 みちるは思った。やっぱり実家は鬼門であると。これ以上、妙にDVD鑑賞を無理強いさせたら、二度と一緒に実家に来てくれなくなる。なんなら夫婦の危機かもしれない。


「お母さん、思い切って言うけど…、せっかく帰ってきたんだからDVDを見て帰るのはもうやめたいの。会話をしましょう!そうだ!私達がお母さんに美味しいものをご馳走するから、どこかに食べに行きましょう?」


 母よ。娘の愛をどうか受け取って!!みちるは祈った。そして通じたかのように、母は笑顔を見せ言った!


「みちる!妙ちゃん!お母さんは嬉しいわっ!!あのね!韓流ファンが集う韓国料理屋さんがあるの!そこへ行きましょう!大丈夫、お母さんがアイドルのことは説明するから!そうだ!カラオケも行きましょう!お母さん、持ち歌があるの!」


 ダメだった。みちるは落胆した。そして、また妙に耐えて貰わなければならないと思った。申し訳無さそうに妙を見るみちる…。しかし妙はみちるの耳元にそっとつぶやいた。


「ねぇ、みちる。サムギョプサル食べたいかも。」


「か、かわいこちゃん…。私の、、みちるのパンダちゃんっ!」


「韓国料理、行きたいな。」キュルン。


「わかったわ!妙ちゃんの好きなあれも食べようね!!さぁ、言って。なにが好きなんだっけ?!!!」


「んー、あっ!ちゃぷちぇ!」キュルン。


「ギャワいいぃィィ!!!行くわよ!お母さんっ!」


「任せて!」


「妙ちゃんっ!あれやって!韓国語で美味しいは?」


「ましそよー!」キュルン。


「かわっいいーーーー!!!」



 どんなことも、かわいいがあれば解決する。ラブ&ピース。


 と、みちるは悟った。



 続く。


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