おまけep175 みちるんちは鬼門だからと常にみちるは言っている。

 花梨が車を走らせていると、行き違いでみちるの母、麗華が迎えに来ていたことが判明した。スマホのメッセージを見たみちるは、目を見開いた後、返事をして何事もなかったことにした。


『えー、友達が送ってくれるって言うからもう実家に向かってるよぉ~!』

『うそぉ~!わかった、ママ追いかける!』


 まったく、、妙ちゃんに会いたくて仕方なかったのね、とみちるはため息をつくと、後部座席をちらっと見た。妙はすーすーと寝息を立てて寝ている。


「わ、妙ちゃん、もう寝てる。。」

「東京から遠いもんね。疲れてるんじゃない?」

「寝るの好きな子なの。でもありがとね、花梨ちゃん。せっかくの休みなのに。」

「いやぁ、みちるとせっかく会えたし、今どうしているのかとか聞きたかったしね。」


 みちるは花梨に、東京で看護師をしていることや、妙との出会い、そして妙の妹である萌の話などを話した。


「なるほどねぇ~。東京ってすごいね。まさか、あのモデルの萌の姉妹と恋人になるなんてさ。」

「ああ、人から見たらそうなるのかぁ。妙ちゃんの妹がたまたま萌ちゃんだっただけなんだけどね。」

「でも、、上手くいってるみたいで良かったね。仕事も、恋もさ。」

「うん。それは本当に、妙ちゃんと出会えて私の人生は好転したというか。多少面倒くさくてもちゃんと向き合ってくれてる。」

「あはは、面倒くさいのは変わってないんだ?」

「これでも直した方よ。まぁみちるも学んだからね。相手が押しつぶされそうな闇はもうださないよ。」

「ははは。じゃあ、わたしのおかげでもあるってことだね。」

「ご、ごめんなさい。その節は本当にこどもっぽいわがままばかりを、、」

「いや、大人になってから思うとさ、みちるって本当に私のこと独占したいくらい好きだったんだよなぁって。まぁ、上手く付き合える気はしなかったけど、良い思い出なんだよ。」

「花梨ちゃん・・・。」

「随分昔の話だしね。またこっちに帰ってくることがあったら、連絡してよ!」

「うん♡ありがとう!」


 こうして、みちると花梨がいろんな話をしているうちに、車はみちるの実家のすぐ近くに着いた。


「あ、この辺で良いよ。花梨ちゃん。」

「おっけー。じゃあ、夏休み楽しんでね。」

「うん、ありがとう。妙ちゃーん?起きて~。ついたよぉ♡」

「びくっ!は、はい!」*よだれパンダ


 車を降りると、花梨は笑顔で去って行った。さぁ、やっとついた実家。

「さ、妙ちゃん。少し歩くよ♡」

「ふぁぁ、うん。よく寝たぁ。」

「寝られて良かったね。あ、そうだ。実はね、うちのお母さんが旅館まで迎えにいったらしいの。」

「え、どゆこと?お母さんどこにいるの今?」

「後から追いかけてきてるはずー」

「わぁ、それは悪いことしたね。」

「迎えはいらないって言ってあったのに黙って来るからだよ。」

「今日ってお父さんはいるのかな、、なにげに初めましてなんだよね。。」

「どうだろ。わかんない。」

「あ、目が覚める栄養剤買って行って良い?お母さんとDVD観るよね?」

「観ないよって言うよ。さっきね、花梨ちゃんに、面倒なことも向き合ってくれる優しい彼女なんだって、妙ちゃんのこと話したの。」

「面倒、、お母さんのDVDのこと?」

「それもだし、みちるの面倒くさいところとか。改めて妙ちゃんの有り難さを感じました♡」

「そうなの?全然大丈夫だよ?」

「妙ちゃん、、キスして・・・。」

「うん、みちる・・・。」


 田舎道、、誰もいないと思って2人はキスをした。しっかりと抱き合い、お互いの目を見つめながら。この世界には私たちしかいないわ、、とみちるは思っていた。


 が、みちるの母がそうさせはしなかった。


「ひゃわわ、、と、尊い・・・っ!!写真っ!」ピロンピロンピロン‼


「ん、え・・・?あっ!お母さんっ!!」


 後から車で追いかけてきた麗華が追いつくと、2人がキスをしていたという最高のタイミングに歓喜した麗華が、車の中からカメラを連写させていたのだった。


「まかせてっ!お母さん、メモリアルDVD作ってあげるから!!!2人とも!そこの木陰に移ってもう一度キスしなさい!!!」


「ああ、もう。面倒くさい。。」

「みちるも似てるよ!ああいうとこあるよ!」


 この後、しばらく写真撮影は続いた。

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