おまけep174 麗華、待ち遠しくて…

 みちるの母、珠子。自分でつけたニックネームは麗華。

 麗華は娘が帰郷してくるのを待ちわびていた。宝塚をこよなく愛する麗華。かわいい自慢の娘に会うことももちろん楽しみではあるが、目当てはその嫁であった。何と言ってもとにかく嫁がかわいい。自分が付き合いたかったと思っている。


 早朝。目が覚めた麗華は白湯を飲み、美顔ローラーをほうれい線に当てながら時計を見つめる。


「6時。あの子達は今頃、温泉旅館で寝ている頃。夕べはお楽しみでしたね、、なはず。早起きはしないでしょうね。」


 邪推が激しいお年頃の麗華は、待ちきれずに二人を車で迎えに行こうか悩む。しかし、若い2人を邪魔する姑にはなりたくない。宝塚のDVDを流しながら、時間が経つのを待つ。


「ああ、このセリフを妙ちゃんに言わせて、みちるの反応を見たいわ。腰が砕けるに違いない♡」


 この母にしてあの娘である。肝心の娘はどうしているかというと、、


「妙ちゃん、起きて♡」

「うう、ん・・・今何時?」

「6時だよ♡温泉はいろうよ♡」

「ええ・・・。眠たい。。」

「寝てて良いから入ろう♡」

「・・・わかった。ぐぅ。。」

「脱がすねー♡」ポイッ!!


 朝もお楽しみであった。


「ああ…。ねっむい。。結局入らされた。。」

「でも朝の露天風呂、気持ち良いでしょ?♡」

「うん、まぁ。ホントに寝ちゃいそうだけど。」

「寝てていーよ♡みちるになにされても知らないけどね♡」

「一体なにを…!?いやっ!近寄らないで!」

「うひひひひ♡」


 という遊びをしていた。楽しそうなカップルである。


 お風呂から上がると、二人は旅館の朝食をいただいた。精進料理である。実家に行くまでにも少しばかり距離があるので、早めに荷物をまとめて出発することにした。


 チェックアウトを済ませ、バス停に向かおうとすると、一台の車から声をかけられた。花梨だ。


「あ、みちる!おはよう!」

「あ、花梨ちゃん。おはよー!良い旅館でした。ありがとう!」


 赤ちゃんパンダの妙は人見知りなので、ぺこっと頭だけ下げた。


「これから実家に帰るの?」

「うん、そう。バス停ってここであってるよね?」

「あーっと、、、良かったら送ってくけど?私今日休みなんだ。」

「ええ。悪いよ。車で1時間近くかかるでしょう?」

「田舎の車で1時間は遠くないから。あとせっかく会ったんだし。」


 みちるは妙の顔をちょっと見て、送ってもらうの大丈夫?と小声で言った。妙はうんうんと頷いた。


「じゃあ、お願いします!♡」

「すみません、お願いします。」パンダデスガ。

「はーい。乗って乗って~♪」


 実は、花梨は休みなのにみちるに会うために車で来ていた。なんとなく、昔のことを思い出して。2人は上手く行かなかったけれど、みちるの愛情が底なしだっただけだ。別の形でなら、この人とまた付き合っていきたいと思っていた。


 妙は、後部座席で有り難く寝させていただいた。助手席に座ったみちるは、またこうして花梨と普通に話せることに嬉しさを感じていた。


 とても良い休暇となった。ただ1つ。花梨の車が発進した後、待ちきれなかった麗華が車で旅館まで来てしまったこと以外は・・・。


 エーーーー‼



 続く。

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