おまけep172 糖分補給させてよぉぉぉぉ

「暑い日の夕方。お昼寝から起きた時に喉がカラカラだとするじゃない?」


「え?う、うん。」ドチタ?


「外では子どもの笑う声。なぜか独り取り残されたような気持ち。イメージしてくださいませ。」


「う、うん。あの…みちる?」ドチタ?


「そんなとき、カラッカラの心と体で…サイダーを飲むの。五臓六腑に染み渡る…。」


「う、うん。なんとも言えない爽快さが伝わるよ…。」


「みちるにとって…妙ちゃんはそのサイダーなの。。」


「……………良い話、だね。」


 露天風呂から出て、浴衣を着たセクシーみちるは、旅館の部屋から夕焼けを眺めながら、妙を困らせていた。


「これからも…みちるをサイダーのように爽快に発泡して癒やしてくれる?」


「もちろんだよ…。愛してるから。」


 妙の独壇。


 よ、良くわからないけど…アンニュイな感じなんだな。フラレた女性に突然出くわして、トラウマが出てるのかな…。


 正直…ヤキモチ妬くタイミングもないっていうか…。どうしたものか…。いや、これからずっと一緒に生きるんだ。こんなことでくじけてはいけない。


 もう…このまま良い雰囲気に持ち込んで、、あ。あと1時間で晩御飯だ…。忙しいせわしいな。よし、かくなる上は…


「みちる、、話しておいでよ。さっきの、花梨さんって人と。きっと、昔のわだかまりなんて解けるはずだよ。」


「ええ~!やだぁ!妙ちゃんだって元カノと会うの嫌でしょー?」


「ま、まぁ、そうだけど。」

(まずい、、あまり話すと、こっちがいろいろ追求されかねないっ!)


「じゃあ、ちょっとだけ行ってくるね。。」


「行くんかーいっ!」


「だって、どうせ妙ちゃん、末ちゃんに電話したいんでしょ。お土産何がいーいー?♡とか言っちゃってさ。晩ご飯までに戻ってくるね。」


「なんか悪者になってる、、まぁいいけど。。行ってらっしゃい。」


 みちるが部屋を出て行くと、妙はため息をついた。

「ふぅ。ま、みちるは浮気するわけないしね。さてと、末に電話しよーっと♪」

 シスコンは健在であった。


 そして、みちるはというと、、

「どこかしらー、花梨ちゃん。。っていうか何を話そう??」

 しばらく探していると、やっと見つけた花梨ちゃん。廊下を歩いていた。


「あ、みちる?」

「花梨ちゃん!」

「彼女は?」

「家族と電話してる~。ちょっと話せたりする??」

「うん、15分くらいなら。じゃあ、座れるところに行こっか。」


 花梨は旅館の人気がない応接室のような場所へとみちるを案内した。

「さ、どうぞ。ここなら誰も来ないから。」

「おじゃましまーす。それにしても久しぶりだね。」

「そうね。高校が別だったし、みちるは東京行っちゃったし。」

「あの、花梨ちゃんは、今結婚とか・・・」

「さぁ、どうでしょうー?」

「うっ、、教えてくれないんだね、、。」

「うそうそ。結婚したよ。男の人と。」

「そっか。えっと、幸せなんだよね?」

「うん。まぁ、子どももいて幸せかなー。」

「そっかぁ。よかった。」

「みちるも幸せそうだね?」

「うん。すっごく幸せ。」

「いいね。ためらいなく幸せだって言えて。あの人、良い人なんだね。」

「うん!私にはもったいないくらいの人よ♡」


 花梨はくすっと笑うと、意地悪な顔をしてみちるに言った。

「じゃあ、あんまりしつこく束縛しないことね?」

「うううっ、、、ごめんなさい。。」

「あはは。怒ってないよ。みちるのことは良い思い出だから。」

「そうなの?」

「うん。私って、女の子と付き合ったのみちるだけだから。」

「そうなの!?」

「うん。ってことで、綺麗な思い出よ♪」

「ありがとう、花梨ちゃん。」

「あ、そろそろ晩ご飯だよ。もどりなよ!」

「わかった。話せて良かった、、花梨ちゃん。」

「私も会えて良かったよ。」


 こうして、みちるは黒歴史を1つ、昇華した。


 妙ちゃんっ!私、、私、、やっぱり貴方と出会えて良かった!!サイダーみたいな貴方にっ!!カロリーオフでこれからもお願いします!!


 みちるは妙を思いきり抱きしめたい気持ちで早歩きした。お願い、今こそきつくみちるを抱きしめて。離さないで・・・っ!!


 ・・・と、部屋についてドアを開けると、、


『うん、うん。お菓子いーっぱい買って帰るからね。お姉ちゃんも末に会いたいよ?うん、お姉ちゃんも大好きだよ♡』


 ・・・シスコンが炸裂していた。


 すん。みちるは妙に一言も声をかけずに、となりでうずくまってふて寝した。


 さっきまでの高鳴っていた恋心を返して・・・。



 続く。

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