おまけep167 みちるの生い立ち①

 みちる。みちるという女がいる。彼女の名前はみちる。

 彼女は生まれた時からかわいかった。べらぼうにかわいかった。


「うふ。みちゆってかわいい♡新ちいスカート似合う♡」


 物心ついたときから自分のことが大好きであった。だってかわいい。そんな彼女は、保育園からずっと、29年間、どこへ行ってもかわいかった。*もうわかったから。


 みちるの母は、保育園の年長さんになったみちるにこう聞いた。

「みーちゃん?好きな男の子できた?」

 対する、みちるの返事はこうだった。

「まどかちゃん!保育園で一番かわいくて髪型がおしゃれなの!」


 そう、みちるは生粋の、かわいこちゃん好きであった。


 そんなにかわいいのだから、さぞかし男の子にモテただろうと、周りの人は言う。しかし、小学校に入ったみちるは非常に塩だった。塩対応の権化だった。


「おい、みちる。放課後一緒に遊ぼうぜ?」

 家が近所だったり、同じクラスが続いた男子が勇気を出してみちるに声をかけると、


「あ?遊ばない。」

「え、あ。すみません。」


 とこんな感じで、やましい気持ちで近づいてくる男子を寄せ付けなかった。一方自分はというと、、


「まどかちゃん♡昨日みちるが焼いたクッキーどうぞ♡」


 まだまどかちゃんが好きだった。そして、しつこかった。


「今日、学校終わったら一緒に帰ろうね!今度のお休み、みちるんちにお泊まり来ない?ずっと一緒に居ようね!」


 小学校低学年までは、恋愛というものを良く知らないまま、まどかちゃんと暗黙のピュアカップルだった。

 しかし、高学年にもなるとまどかちゃんは他の友達とも遊びたがり、徐々に普通の友達へと気持ちが薄らいでいったのであった。


 そして、みちるが女たらしの頭角を現すのは中学入学早々のことであった。


 続く。

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