おまけep159 ドラムどうする?

 エリカと別れて、妙とみちるは帰宅した。


「妙ちゃん♡あの子、なかなかかわいい子だったね♡」

「ダメだよぉ~。末にはまだ恋人は早い!」

「なに言ってるのよ、、もう~。シスコンなんだからぁ!中学3年生なんだよ?お姉ちゃん以外に恋をしたことがないなんて、、悪いことじゃないけどさ?そろそろ次のステップに行くためにも、私たちが邪魔しちゃダメよ?萌ちゃんみたいにヤンデレ化したらどうするの?」

「だって、、末は世間知らずだし、、まだ恋を知らないし、、お姉ちゃん大好きっ子だし、、。っていうかみちるもヤンデレだし。。」

「だから経験するんでしょ!妙ちゃんだって、みちると恋をして幸せでしょ?ほら、膝枕してあげるからおいで?♡」

「そうだけどぉ・・・。」*膝枕は素直にされる妙氏。


「さ。もうこの話は終わり!妙ちゃんのすることはなんですかー?♡」

「みちるに溺愛されることでーす、、。」

「そうでーす♡」モフモフー♡



 数日後。末とエリカの通う塾にて。


(あ、いた・・・。末ちゃんっ♡)


 高校受験の夏期講習。同じコマを受けていた末とエリカ。中学校が違う2人は、それぞれの友達と授業が始まる前を過ごした。


(授業が終わったら・・・行くぞ。絶対今日こそ、声をかける!)


 エリカは心臓をバクバクいわせながら授業を受けた。ちなみに末は外では猫を被っていたので、おしとやかに笑い静かに話すお姫様のようだった。


 授業後。エリカはしばらく席から立てなかった。

(あ、足が、、動かない。。い、行くぞ。。が、がんばれっ!この夏期講習が終わってしまったら、接点すらなくなってしまうんだ。。どうせ会えなくなるなら、、何を言われたっていいじゃないか、、。立て!立つんだエリカー!!)


 ガクガクガク・・・

 やっと立ち上がったエリカ。1歩ずつ、、荷物をまとめて帰ろうとしている末に近づく。末が教室を出ようとしたとき、勇気を振り絞ってエリカは声を発した。


「あ、あの・・・」

「え?」


 ふわりと長くて細い髪を揺らして振り返る美少女、末。振り返った瞬間、エリカの目の前に現れた末の顔は、長いまつげ、大きな瞳、あどけない唇に、、ワックスかけたてのようなすべすべのお肌・・・。


「う、うわ、、(むりむりむりっ!ひゃぁ、、かわいい、、)」

「なぁに?」


 不思議そうに末が発したその声は、迦陵頻伽かりょうびんがのように優しく、全国の声フェチ組合が腰を抜かすほどの美声だった。


「はわわ、、、天使・・・。」

「なに?具合悪いの?」


 だ、だめだ、、圧倒されてしまった、、。もう無理っ!に、逃げっ、逃げたいっ!!


 エリカの目にうっすらと涙がうかびそうなその瞬間。頭の中に浮かんだのは、、


「え、越前様・・・。」


 そう。みちるの顔だった。そうだ。越前様がついているんだ。私ならやれる。エリカは強い心を取り戻した。そして、キッと強い眼光で末の顔を見る。初めて1秒以上末の顔を見ることができた。それ以上は危険だと思って見ないようにしていたから。。


「す、末ちゃん。あのね!」

「ん?なぁに?」*なんなんだお前はと思っている。

「バンド!そう、、バンド!やらない!!!???」

「え?んっと、あなたとってこと?・・・受験生だからそういうのはちょっと。。」


 ガビーン。え、越前様、、ダメだったんですけど。。

 一気に信頼を失った越前みちる。


「ごめんね?じゃ、帰るね??」


 よそ行きの神対応に限界を感じた末は、きびすを返してエリカを置いて帰ろうとした。


「ま、待って!あの、高校どこ受験するの!?同じ高校に行って、バンドやらない!!??」*しつこい。


「え・・・?な、なんでバンド??」


「え、えーと、えーと、、私っ!!末ちゃんに可能性を感じているの!!あなたとバンドを組んで、メジャーを目指したいのっ!!私は末ちゃんとしかバンドを組みたくないのぉぉぉーーーーー!!!!!」*でまかせが過ぎるエリカ。


「な、突然なにを、、」

「お願い。一緒にメジャー目指そう?」*やけくそ。


 教室がざわつく。こいつ、美少女になに言ってんだ?という顔で周囲がエリカを見ていた。


「えっと、あなた、とりあえずここを出よう?」

「あ、はい。」


 周囲のざわつきに気づいた末。エリカを連れて外に出る。


「えっと、あなた。お名前は?」

「あ、隣の中学の、、エリカ。。」*通報されるのかと怯えるエリカ。

「・・・ふぅん。」

「ご、ごめ、、あの、」


「あなた、良い目をしているわね!」

「え?」

「いいわよ!私はボーカルギター志望よ!!ジャンルは!?」

「え、ええと、じゃあ、私は、、ベースやる?ジャ、ジャンルは、、(やべえ、わからない!)えっと、うちらにしかできない新ジャンルを・・・」


「いいわね!気に入ったわ!これから会議するわよ!駅前のファミレスで!いいわね!!」

「え、は、はいっ!!」

「このことは当面2人だけの秘密よ!わかった?エリカ!!」

「う、うんっ!うわーーーん!!」

「なに泣いているの!泣くのは武道館まで取っておきなさい!!」

「か、かっこよ・・・!!」



 とぅんく・・・末ちゃん、、好き・・・。


 またしても、推しから恋に急展開する被害者(?)が現れたのだった。


 親友か、それとも恋に進展するのか、、ここから物語は始まる。



 続く。

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