おまけep156 もうしばらくお待ちください。八重子なりに頑張りますので…

 ピンポーン。ピンポンピンポンヒヒヒヒヒ~


「え、こわい。だ、だれだ・・・。チャイムの音が変だけど、、」


 火曜日の夜。妙とみちるにとって、ちょっとだけ特別な夜だ。水曜日はみちるの仕事が休みだから、ちょっとだけいつもより甘い夜なんだ。妙は警戒しながらチェーンを外さずに玄関を開けた。なんとなく、察しがついていたから・・・。


「はぁい、、どなた、、」ガチャ。

「大変です。入れて下さい。」

「や、八重子・・・お、お前、、来すぎだろ。。」

「違うんです。入れて下さい。」


 笑子と付き合うことになった八重子。夕方になって眠くなって笑子を追い返した愚公のあと、本当に眠かったので寝ていた。そして起きて、いろいろと考えてみたんだけど、あれ?恋人出来ちゃったんですけど、、と若干パニックになったので来てみた。


「恋愛破壊神様・・・、ご相談があります。。緊急です・・・」

「はぁー?ちょっと待ってよ、今日はみちるがご機嫌さんだから、、」


 その時、現れた。ご機嫌さんが、、

「あなたぁ~?どなただったのぉー?♡まさか、また八重子さんだったりし、て、、ってうわぉ!来すぎじゃない??」ミチルビックリー‼


「夜の情事を邪魔して申し訳ありません。でも緊急事態なんです、、あのみちるさん。前に持ってきたのとはちがう妙さんの高校時代の写真を持ってきました。お納めください。」


「やーん、上がってぇ♡」


「お邪魔します・・・。ヒヒヒ・・・」


「もーう、、1時間で帰ってよ。タイマーかけるからね?」


「え。では時間がもったいないので。」


 靴を脱ぎ、玄関からリビングへと歩く間に、八重子は今までにない早さでしゃべり出した。


「例の女性とお付き合いすることになりました。今日2回目にお会いしてそういう流れになりまして。あ、実は今日、メイクの動画を撮るつもりで、その女性が見学に来て、ご飯を作ってくれて、バターンと倒れまして、カノジョです。初カノジョです。人生観が変わってしまって作風が変わってしまわないか不安です。」


「ちょっとまって、展開も話すのも早すぎてよくわからない!ほら、座って。イチから話して。。」


 リビングで、妙とみちるは八重子の話をイチから詳しく聞いた。


みちる「えー、おめでとう♡でも、そこで帰らせたのはあまり・・・。みちるなら泣いちゃう。。」


妙「ふぅーん。まぁ、良かったじゃない。で?なにが困ることがあるって言うのさ?」


八重子「だって、23年間、恋人はおろか、人付き合いですらまともにしてこなかったのです。いざ、恋人が出来てしまって、どうすればいいのかまるでわかりません。」


みちる「そんなの。スキーってなってスキーって言われて、目線とか手を絡めていればなんとでもなるわよー♡」


妙「メイクとか、好きなものの共通点があるんでしょ?そういう話とかすれば良いじゃん。」


八重子「は、はぁ。それは友人とでもできますよね、、恋人はなにをしますか?」


みちる「あーなるほど!そうね、デートをしたり、家ではどうしたらいいかってことね?」


八重子「はい。私、キスすらしたことがないんです。どうやってするんです?あ、今見せてもらっても良いですか?」 


妙「は?いいわけないだろ。」


みちる「みちるは別にいいよ?♡」


妙「みちるちゃん?ダメでしょ?2人の大事なことは2人のときにね?わかった?」


みちる「うん、わかったぁ♡」テヘペロッスネ‼


八重子「うーん。仕方ない。キスはネットで調べるとして、、次回会うときに間が保たなかったらここに連れてきて良いですか?」


妙「え、なんでよ。。あ、でもそうか。うーん、、」


みちる「どうしたの?妙ちゃん。」


妙「あ、いや。仕事で八重子の家に行くことあるし、先に会っておいた方がいいのかもって、、。」


みちる「あ、じゃあ。みちるも八重子さんち行ってみたい♡お家デートするときに私たちを呼んでよ。空気読んですぐ帰るからさ♡」


八重子「わかりました・・・。っていうか、次の約束をしてないや・・・。」


妙「八重子~?付き合い始めは誰だって浮かれてるんだよ?素っ気なくしないで。好きって気持ちをちゃんと伝わるようにするんだよ?」


八重子「・・・はい。努力してみます。ああ、いつ見てもお二人は美しい・・・。」


たいして有用なアドバイスはもらえぬまま、八重子は追い返された。今日はみちるの満足を満たすサービスデーだから。帰り道、八重子は考えていた。


「うーん。どうしたものか、まるで参考にならなかった。。あの二人は恋愛で悩んだことなどないのかもしれない。。」


 そうか。好きという気持ちを伝える。いや、言葉でなくても、行動で伝わるように、か。今日、帰ってくださいって言っちゃったのはまずかったのか。でも、一緒にお昼寝しませんか?っていうのも変だと思うんだけどな。。


 よし。連絡してみよう。


「こんばんは。次は、、いつ、お会いしますか?・・・と。送信、、。」


 笑子の、既読はほぼ0秒でついた。そして、10秒かからずに返事が来た。


『いつでも馳せ参じます!なんでしたら今からでも!!』


 わぁ、凄い勢い。嬉しいような、ちょっと恐いような。。どうしようかなぁ、、今からって、なにすればいいのかわからないし・・・。でもこれ、来週で。とか返事したらいけない空気だよなぁ~。


 そもそも、私は笑子さんに会いたいのだろうか。というか、好きなんだろうか・・・。会いたくない。いや、ちがうな。恐いんだ。。うまくできないとか、失礼だったら悪いなとか、、自分に自信がないだけだ。


 だとして、もし私が、笑子さんに愛されても良い権利があるとして、、自信があるとしたら?


「うん。会いたい、かな。今日のメイク、よく似合ってた。」


 よし。明日にしよう。今日はもう、キャパオーバー。


 明日は、香織ちゃん風のメイクにしてあげよう。喜ぶだろうな。ヒヒヒヒヒヒヒヒ。

  

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