おまけep154 あなたが、、すし・・・

 徳永笑子。ついに八重子への推し愛から恋に変わった瞬間。


 ドッドッドッドッドッドッド・・・

 胸が高鳴る。血液が下から上へと滝登り・・・。熱い、、顔も、体中も、そしてあなたへの感情も・・・。あなたのその神々しいお顔を見たい。だけどちらっと見ただけでもぶわっと沸き起こるなにか。。もう、直視できない。。


「わた、し、、私、、八重子さんが、、」

「どうしました?お茶、熱い方がいいです?」

「これ以上、、熱を帯びれば私、、なにをするかわからない・・・。」

「え、物騒。。」



「あなたが、、あなたが、、、、、、、す、、、、すし。」

「え、ああ、お腹空きますよね。出前でも取ろうと思っていたんです。お寿司にします?」


「しょっ!!少々、おまちをっっっ!!!」

「え、あの、」


 八重子が本日、50回目の困惑をしているこの瞬間、、笑子は荒げた息を整えるのに精一杯だった。


(ゼェ、ハァ・・・くっ、、思わず好きと言いそうになったっ!!!6つも年上の、なんにも釣り合わない女がっ!!ヤッコ様に好きとっ!!!言えるわけねぇだろうがぃ!!!)


「ごほんっ。。し、失礼しました。。あのっ、、私、今日はお世話になるのですから、お弁当を作って参りました。もし宜しければ、ふ、ふたりで、、た、たべませんきゃ!?」


「え、作ってきてくれたんですか?」

「もちろんです。衛生面、食材の質、全て完璧にございます。あなた様のお口に入るものですから。」


 笑子は風呂敷をテーブルに置くと、結び目を解き、中の重箱を1つずつ丁寧に並べた。そして、3つある重箱の蓋を外す。さぁ!実食をっ!!という眼光で。


「こ、これは、、す、すごいっ!正月じゃないですか・・・!」

「そうですね、つい。お節に近い感じになってしまいました。さ、お召し上がりください。」

「わぁ、、せっかくですから、頂きます。。」


 少し震えた手で、八重子は重箱から1つ、昆布締めを箸で取ると、ゆっくりと口に含んだ。


「い、如何でしょう・・・。ヤッコ様はきっと、(顔が薄いから)薄味がお好みではないかと思い、、薄めにお作りしました。。」


「・・・ん。美味しい。素朴で、そしてとても優しい味です。」


「!!!う、うれしい!さぁ、沢山召し上がってください!!」


「ああ、これも美味しいです。あ、私これ好きなんです。美味しい。実家から離れて暮らし、料理などまるで出来ないものですから、、つい偏った食生活でして、、ああ。美味しいな。やっぱり、人が作ってくれたものって美味しい・・・。」


 細身の感情の起伏が少ない八重子が、嬉しそうに笑子の手料理を頬張る。もう、笑子は正気ではいられなかった。嬉しさがこみ上げ、思わず眉毛が生えてきそうなほどにっ!うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!


(すんげぇーーーーかわいいーーーーー!!!好きぃぃぃーーー!!!!!)噴火。


「や、ややや、や、ヤッコ様。いえ、八重子さん。。私、、私、、貴方のような輝かしい経歴も誇れるものもありませんっ!だけどもしっ!!八重子さんが私の料理を食べたいと仰ってくださるなら!毎日でもお作りします!!」


「え、そんな。悪いです。」*通常運転の八重子。


「好きなんですぅぅーーーーーーー!!!!!!」


「・・・ゑ?」


「お付き合いしてくださいなんてっ!恋人にして下さいなんてっ!申しません!どうか、お側で、、お役に立たせて下さいっ!!こ、恋なんです!!八重子さんが、、す、す、すき、なんです。。」


「え、」


「困りますよね、、私なんかにこんな、、でも、」


「いえ、嬉しいです。こんな私にそのようなお気持ちを。是非お付き合いを。」


「なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ????!!!!」ヒョエー‼


「こんな恵まれた話、私には生涯ありませんでしたので。是非、お願いします。」


「ほ、ほ、本当ですか!!!?」


「はい。ああ、この流れは良くありませんね。漫画ならどう答えるべきか、、そう、、私も貴方が好きになりそうです。あ、また間違えている気がする・・・。」


「あ、ああああ・・・あ。」

 バターーーンっ!!!笑子、卒倒。


「ええっ・・・なんで今倒れるんだろ、、今日は不思議な日だ・・・。ヒヒヒ。」



 変な人だな。こんな私のことが好きだなんて。でも、世界にはそういうちょっと変わった人がいるモンです。そうだ。もう、寝室に貼ってある妙さんの盗撮写真は、、はがさないといけませんね・・・。ざっと500枚くらいありますが・・・。


「ヒヒヒ・・・。素敵な恋人が出来ました。幸せです、ありがとうございます。」


 不器用な八重子は、倒れた笑子のおでこに冷えピタを貼ると、また美味しそうにご飯を食べ始めるのであった。


 続く。


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