おまけep92 営むのは仕事だけじゃないんだからね

 どこまでも二人きりでいちゃいちゃしていたい妙とみちる。なんとか両家に結婚の報告は済ませた。(*なぜかどちらも父親には対面していないのは気にしないで欲しい。きっと登場しても誰も嬉しくないし興味なさそうなのに、設定考えるのが面倒だからだけど。)


 実のところ、妙はまだピチピチの22歳だ。もうすぐ誕生日こそ迎えるが、これほど若いうちに自分が結婚するとは自分でも思っていなかった。そんな妙ちゃんベイベーにはちょっとした悩みがあった。


 会社のお昼休憩。妙は一人でお弁当を買って、誰も使っていない会議室で食べていた。妙は社内一の美人さんなので、ふらふらしていれば誰かしらご飯を奢ってくれるのだけど、今日は一人で考え事をしたかった。


 (さぁて。やっとみちるのご実家にも挨拶できたことだし、いよいよ新婚生活のスタートだな!うれしいな!うれしいな!これからみちるとずーっと二人でいるんだ。ずっといちゃいちゃしてくんだ!)


 だけどちょっと、だけどちょっと、、私だってこわいな。


 何が怖いって?それは、妙の収入の方がみちるより少ないことだった。


 「そりゃ、みちるのほうが長く働いてるし、収入が高いのは当たり前だよ?そんでもって、、ご実家が田舎の土地持ち大富豪っぽいのもびっくりしたけど、それも仕方ない。うちは普通の会社員だし、、三人姉妹を育ててくれたし・・・。」


 「うーん。どっちが旦那さんってわけでもないし、二人とも奥さんだよ??でもな。負担にならないように、早く収入を増やしたいな。」


 まるでおもちゃの車を動かしながらいじけているこどものように、声を出して一人そんなことをつぶやいている妙。それを盗み聞いていたのは、会社の先輩である光枝だった。一緒にお弁当を食べようと、会議室のドアを開けようとしたままその声を聞いて、「け、けなげ・・・。」と泣いた光枝。


 トントン。ドアを叩く光枝。涙は拭いた。


「はい、どうぞー?」

「妙ちゃん。一緒に食べても良い?」

「あ、光枝さん。もちろんです。」


 光枝は妙を可愛がっていた。是非とも自分を頼って相談して欲しかったが、自分から切り出すのはためらった。


 光枝の独壇


 ああ、なんて健気なの。。私、今日ほどこの子が顔だけじゃなく、心も天使なのだと感じたことはない。。

 アレはそう、、この子が短大を卒業してうちに入社してきたときだった。この子は、、本当はもっとレベルの高い大学に行けるくらいの学力を持っていた。だけど、下に妹が二人もいるからと、学費のことを気にして早く働きたかったのだと、、私にだけ、、私にだけ、、ううっ・・・、お、おしえてくれたのぉっっ!!!

 この子は本当に毎日笑顔で、私たちの癒やしのような子。まだ若いのに、そんなに色んなものを背負ってどうするの・・・?もっと、もっと、あの人(みちる)を頼れば良いじゃない。私は一目見ただけで、貴方を守ってくる人だと思ったわ。

 だって、長い人生をこれから二人で歩んでいくのでしょう?今は頼ったとしても、いずれ貴方がお返しすることなんて、きっと沢山あると思う。私にはわかる。だって私、夫婦歴20年目よ?

 ああ、妙ちゃん。どうか、私に相談して!!きっと貴方の悩みを吹き飛ばしてあげられるから!!!そしてどうか!抱きしめさせてちょうだいっ!!!


「どうかしました?光枝さん。なんかしんみりした顔してますけど。。あ、唐揚げ1個あげましょうか?」にっこり。


 はぁううううっっ!!!この子っ!自分のことじゃなくて私のことまでっ!!!

 もういっそのことっ、、私が会社にこの子の評価を爆上げして・・・!!!!


「た、妙ちゃん。唐揚げありがとう。その純真無垢な貴方の気持ちへのお返しに私、、貴方に財宝をあげたい。。」


「??? ざ、財宝はちょっと、引きます。。あ、光枝さん。ちょっと聞きにくいんですけど質問があるんですけどいいですか?」


「なに!なんでも聞いて!私が導いてあげるっ!!」前のめり光枝


「え、こわい。ええと、聞きづらいんですけどー、、」


 さぁ、早く。私が貴方を浄化してあげるわ!きなさいっっ!!女は海よ!


「あの、、夫婦の営みって、、だんだん減りますか?」


「・・・ん?」


「あの、今一番不安なのが、夫婦の営みって、だんだん減っていっちゃうのかなって。それって嫌だなぁって。」


「え、は?・・・なんだ。。え?てっきり、結婚してお金とかそういうことを心配しているんじゃないかって思ってたんだけど・・・。」


「あ、まぁそれもありますけど、うちの奥さんって私の若さにぞっこんだから、まだ若くて収入低いのって別に気にしなくて良いのかなって。その代わり、いつもそっちは満足させてあげたいなって。」


「あ、ああ。そ、そうね。ええと。」


 光枝は思った。やっぱりこの子はただで転ばない子、と。

 でも、言えなかった。本当のことは。。


「へ、減らないわよ。。うちは、、ほとんど、、毎日ね・・・。」


「あ!そうなんですね!良かったぁ!!」


 無邪気ベイベー妙によって、光枝の方がえぐられた気持ちになった、そんな昼だった。

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