おまけep87 SFバージョンいちゃいちゃ

 ある朝、いつも通りに仕事に出かける準備をしている妙とみちる。


「あ、見て?みちる。空がどんよりしている。。雨が降ってくるよ?」

「あ~、ホントだぁ!昨日洗濯しておいて良かったぁ♡」

「さすがだね、奥さん♡」

「えへへへ、その呼び方溶けちゃう・・・♡」


 ゴロゴロゴロ・・・

 雲行きが怪しくなってきた。

 遠くで雷の鳴る音がしている。そして少し間をおいてピカッと光る外を、窓から二人見つめる。


「ちょっと早めに出ようかな。みちる、一緒に行こう?」

「そうね、一緒に行けば雷なんて怖くないよ~♡」


 みちると妙の職場はそう遠くない。始業時間は同じではないが、今日は大雨になる前に二人で出かけることにした。


「二人で通勤って初めてじゃない?」

「そういえばそうだね♡これからもたまにそうしよっか♡」


 そんな風に呑気に話していると、だんだんと雨が強まってきた。雷の光と音もだんだんと間が合ってきている。


「うわ、、結構降って来ちゃったね・・・。ちょっと急ごうか!」

「ああんっ、もう足が濡れて来ちゃったよっ!」


 傘を斜めになんとか前に進む二人、とそこへ・・・

 ピカッ!!!!!ゴロゴロゴロ・・・ドーンっ!!!


「うわぁぁ!!!」

「きゃぁっ!」

「・・・す、すごい近くに落ちたよね??」

「うわぁ、怖かった。。」


 思わず繋いだ手を強く握りしめて寄り添い怯える二人。


「ああ、びっくりしたぁ。よし、みちる着いたね。行ってらっしゃい!」


 先にみちるの働くクリニックの前に着いた二人、また夜にねと目配せをして離れようとしたときだ。


「ん?・・・離してね?」

「え、うん。え?離していいよ?」


 二人の手が離れない。


「え、離そうとしてるってば。」

「冗談やめてよ。ほら、びしょびしょになっちゃうから早く行きなって!」


 どうしても繋いだ手が離れない。


「こ、これは、、一体??」

「っていうか、どうしよう。。これじゃ会社に行けないよ・・・。」

「でも、、どうしても離れないよ・・・?」

「ええ、ど、どうする?」

「と、とりあえず、このままじゃずぶ濡れだよ。ちょっとあそこのカフェに行こう!」

「うん!」


 そうして、手を繋いだまま近くにあったカフェに行くことに。どうやら早朝からオープンしている健康志向のカフェだった。おすすめはスムージーだ。


「へぇ。。こんなカフェがあったんだね。。とりあえず早めに出たから時間はあるよ。スムージーを飲みながら考えよう。。」


 そうして、やたら可愛い店員さんに勧められるまま、おすすめのスムージーを2つ頼んで席に着いた。


「ね、ねぇ、、店員さん可愛かったよね?どっちがタイプ?」

「私は、そうだな、、ちょっと若い方の子がタイプかな。」

「うそ、私はもう一人の子。。」

「って言うかそんな場合ではないよ!見て?何もしてないのにどうしても離れないよ!?」

「ねぇ、揶揄ってるわけじゃないんだよね?」

「うん。。あれかな、、雷の衝撃で、、びっくりしすぎてくっついちゃったのかな。。」

「もしかしたらそうかも。私たちの日頃の離れたくない気持ちがおかしな力になって・・・。」


 とそこへ、店員さんがスムージーを運んできてくれた。


「お待たせしました!ごゆっくりどうぞ!」

(この人達、手を繋いだままだ。絶対カップルだよね!ちょー美人カップル!萌える~♡)


「な、なんか、、妙にニコニコしていたね、、。」

「ウチらが手を繋ぎっぱなしだからじゃない?」

「あ、そうか。いちゃいちゃしてると思われたんだね。。」

「っていうか、どうするこれ。。」

「てか、スムージーおいしいな?」

「うん。おいしいな?」

「てか、外、すごい雨だな?」

「うん。すごい雨だな?」

「よし。休んでみるか?」

「そうするか。」

「なら。帰っていちゃいちゃするか?」

「するな。するだろうな。」



 こうして、二人は会社に電話をして仕事を休んだ。

 きっと、普段の離れたくありませんパワーが雷のショックと共に出てしまったんだろうと言うことで、気の済むまでくっついてみた。


 すると、なぜか不思議と、繋いだ手はするっと離れたのであった。


 後日、この話を萌にしたところ、「お前たちの家でいちゃいちゃしたい気持ちがでただけだろう!」と叱られた。


 世の中には説明のつかない不思議が沢山あるのだった。


 

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