第150話 エピローグ

 指定された日時に道弥は夕日テレビ局に辿り着いた。

 スタッフに案内されて、部屋に向かう。

 部屋には可愛いアイドル意匠に着替えたゆまの姿があった。


「あっ、道弥。来てくれたんだ!」


「呼ばれたからな。出演は何時からだ?」


「あれは嘘! 後でご飯でも食べよ?」


 堂々と言い放つゆま。


「嘘ってどういうことだ!?」


「いやー、別に道弥はテレビに出なくても良いってこと! せっかくだから見に来てほしくてね」


(こいつ……なんて嘘を吐くんだ)


 道弥は怒ろうかと思ったが笑顔のゆまに毒気が抜かれてしまった。


「お前……まあいい。せっかくだから見てるよ」


 結局道弥は閲覧席で生放送での特番を見ることとなった。

 ゆまは特番のメインが嬉しかったのかおおはしゃぎしながらもしっかりと活躍していた。

 特に旧鼠の長との戦いでは、あそこまで真剣な戦いが流れると思っていなかったのかスタジオの人達も皆驚いていたのが印象的であった。


 生放送が終わった後、先に道弥がスタジオから出て控室に向かう。

 すると前からゆまのグループの先輩である奈良坂りんねが歩いて来た。

 りんねは道弥の姿を見ると笑顔で駆けよって来た。


「あ! 君、ゆまと同じ特番に出てた陰陽師の道弥君だよね! ゆまと同じグループの先輩、りんねです。よろしくね!」


「こんにちは」


「今日はゆまの応援?」


「そんなところです」


 まさかゆまに騙されたとは言えなかった。


「ゆまちゃんのファンなの?」


「冗談でしょう? ただの仕事仲間ですよ」


 その言葉を聞いたりんねがにこりと笑って道弥の手を両手で握る。


「なら、私にもチャンスあるのかな? この後ご飯でも行かない? 陰陽師に興味があって。道弥君凄いんでしょう? 色々教えてよ!」


 りんねが上目遣いで道弥を見る。


「ゆまが一人、尊敬する先輩が居るって言ってたけどりんねさんのこと?」


 道弥の質問に、ゆまが考えるそぶりを見せる。


「恥ずかしー。でもそうかも! ゆまちゃん、私以外のメンバーと殆ど関わりないから」


 道弥はその言葉を聞いて、りんねの手を払う。


「悪いが、既に先客があってね」


「えー。女の子? 妬いちゃうな?」


「ああ。あんたより百倍いい女が待ってるんだ」


 その言葉に、りんねの張り付いた笑顔が消える。


「ちっ。少し話題になったからって調子にのりやがって。ガキが」


 りんねはそう言って舌打ちをした。


「お前こそ張り付いた笑顔が剝がれているぞ、ブス」


 道弥はあった瞬間から、りんねが人を誘導しようとしているのを感じていた。


「道弥ー、待っててくれたんだ。って、あれ?」


 ゆまはりんねの姿を見て一瞬固まる。


「行こうか、ゆま」


 道弥はゆまの手を引くと、そのままその場を去って行った。

 特番は事前の宣伝効果もあり視聴率も高く、おおいに話題となった。

 アイドルが命がけで妖怪と戦う姿は視聴者の心を打ち、SNSではゆまの名前がトレンド一位となる。


『熱かった!』


『戦うアイドルって感じだったね』


『普段のおちゃらけてる時とのギャップがやばい』


『かっこよかった!』


 と多くのコメントが寄せられた。

 その結果、ゆまはハニーレディガールの人気で遂に一位を獲得する。

 その後、あれほど戦えるアイドルは居ないこともあり、テレビで引っ張りだことなっている。

 道弥は素直にそのことを喜んだ。


(手伝った甲斐がある。俺も八雲との戦いで霊力がまた少し戻って来たしな。岳賢さんも約束を守って八雲を祓ったとメディアに話してくれたし八雲の情報が洩れることはないだろう)


 道弥はそう思いながらいつものように自分の事務所の扉を開ける。


「あれ、鍵かけたと思ったんだけど?」


 道弥は自分を狙った誰かか、と警戒心をあげる。

 事務所の中を覗くと、どこかで見た女の子が立っている。


「ここで働かせてください!」


 そう言って頭を下げたのは、道弥がこの間助けた二条都だった。

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