第149話 ニュース

 その夜、全国ネットでニュースがあるニュースが流れた。


「兵庫県の奥大池を守護する土地神と、兵庫県陰陽師支部長である辰田洋二たつだようじ 二級陰陽師を殺害した妖怪を祓除のため、菅原岳賢一級陰陽師が派遣されました。菅原氏は芦屋道弥四級陰陽師と共に、妖怪と交戦。その結果芦屋氏が問題の妖怪を祓除したと陰陽師協会は発表しました。こちらが問題の奥大池の映像です」


 テレビに映されたのはアナウンサーと、完全に地形が変わり果てた元奥大池と山の姿である。


「こちらをご覧ください。完全に地形が変わっており、激闘の跡が見て取れます。奥大池は完全に消失しており、地元民からは嘆きの声が聞こえます」


 地元民が悲しむ声がテレビで流れた後、スタジオに代わる。


「凄い映像でしたね。今回事前情報で土地神を殺したのは一級妖怪と発表されてましたが、一級妖怪を四級陰陽師が祓うことは可能なのでしょうか?」


 キャスターの言葉に、狩衣姿の陰陽師が答える。


「通常不可能です。ですが芦屋道弥君なら不可能とは言い切れません。なぜなら彼は一級陰陽師相当の霊力があると噂されていました。今回の結果からやはり彼は一級陰陽師相当の実力があることを世間に証明したということでしょうね」


「岳賢氏が同行していたこともあり、道弥氏が良いとこどりをしたのではという意見もありますが、その件についてはいかがでしょうか?」


「岳賢氏はインタビューで、今回の任務について道弥氏が居なければ殺されていたと話していました。彼はあまり忖度をしない方なのでリップサービスではないと思いますね」


 陰陽師の男が断言する。


「そんなに強いのなら早く階級をあげるべきではないのでしょうか?」


 アナウンサーの言葉に、陰陽師が頷く。


「その通りですね。ですが、現状飛び級という制度は陰陽師界に存在しません。とはいえ彼なら大丈夫でしょう」


 このニュースは大きく話題となった。

 陰陽師ファンの中でも道弥の強さは議論の的であったが、今回の件で大きく評価があがる。

 道弥が将来の陰陽師界を背負うと誰もが考え始めた。

 この勢いに乗りたいのは陰陽師界だけではない。


「この子、この間の特番に出演してくれた子でしょう? ゴールデンの二時間スペシャルに拡大して放送しようよ」


 道弥が特番に出ると聞いた夕日テレビの上の者が、視聴率になると考え特番を拡大することに決めた。

 それをなによりも喜んだのはゆまである。


「ゴールデンタイムですら夢のようなのに、拡大だって!? やったあ! スタジオにも呼ばれるみたいだし、最高ね!」


 喜んだゆまから道弥に電話がかかる。


「ねえ、道弥。二時間スペシャルになったのよ! 聞いた?」


「聞いたよ」


「スタジオにも呼ばれるみたい! 道弥も来てよ! 知らない人ばかりなの……」


 不安そうな声で鳴き落としにかかるゆま。


「やだよ」


 淡々と断る道弥。


(なんで俺がテレビでトークを披露しないとならないんだ)


「道弥が出てくれないと、私スタジオに呼ばれないのよ。皆を見返すためには必要なの」


 それを言われると道弥も弱かった。


「それが目的か! 仕方ないな」


 色々サポートしたのも、全てはゆまが売れて見返すため。アイドルにとって出演の機会が大事なのは道弥も理解していた。


 こうして道弥も夕日テレビ局に向かうこととなった。

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