第145話 八雲
この数刻前、ムチを仕留めた道弥の元に黒曜から連絡が入った。
『道弥、大奥池に居た妖怪は八雲だったよ』
『え? 八雲なの? あいつ何しているんだ……』
まさか千年前の仲間が暴れているとは道弥も思わなかった。
だが同時に八雲は戦闘狂な面があって定期的に強者を探して暴れまわるところがあったため、納得する面もあった。
このまま放置しておく訳にもいくまい。
『一級陰陽師を筆頭とした集団が八雲の元を訪れたみたいだけど、相手にはならないだろうね』
(それって岳賢さんなんじゃ……)
『黒曜、それは俺の知り合いだ。絶対に殺させるな。負けそうになったら乱入しろ。俺もそちらへ向かう』
『道弥の知り合いだったのかい? 知っていたら止めていたのに。なら僕が出よう』
『頼んだ』
黒曜からの連絡を終えた道弥が、真を顕現させる。
「ゆま、すまない。少し行くところができた」
「え!? 私を置いてどこに行くつもりなのよ!?」
ゆまは道弥の言葉に驚く。
「大奥池だ」
「大奥池? 最近二級陰陽師が殺された所? そんなの一級陰陽師に任せればいいじゃない」
「俺じゃないと駄目なんだよ」
道弥の言葉にどこかゆまは納得する。
あんたみたいな四級陰陽師が行ったって仕方ない、と言えなかった。
それほど道弥は強かったからだ。
「仕方ないわね。私を放置するくらいなんだから、活躍するのよ」
「勿論」
道弥はそう言って真に跨ると、空を翔けた。
そして、遂に道弥と八雲は相対する。
「今回は黒曜とのタッグですか。私で良いですのに」
莉世は岳賢の側に立って、両者を見ていた。
(心配ですわね。道弥様が至強なのは間違いありませんが、八雲は千年間戦ってきていたのですから。それにタッグが黒曜なのもよくありません。私なら余裕でしたのに)
「共に戦わなくてよいのか?」
「道弥様が二人で良いと判断されたのなら大丈夫です」
(おそらくタッグで戦うのは、自らを追い込み霊力をあげる目的もあるのでしょう。まあ、いざとなれば私も参戦しますが)
酒呑童子こと八雲は二本の刀を取り出す。
妖刀・覇璃魔(はりま)。酒呑童子の二振りの愛刀である。
「まずは挨拶代わりだ。火行・
「
幾重に放たれる紫焔を、黒曜の竜巻が巻き込み、紫焔を纏う槍のような竜巻が八雲を襲う。
その一撃を受けた八雲が吹き飛び、地面に叩きつけられる。
すっかり更地になった地面に埋まった八雲が体を起こす。
「たまらねえなあ。俺とまともに戦える奴がようやく現れたんだ。千年ぶりかあ? 最高だあ! 行くぜ」
消えたと皆が錯覚するほどの一歩で一瞬で八雲は距離を詰めると黒曜に刀を振り下ろす。
その一撃を黒曜は愛刀で受け止める。
二人の衝撃により空間が歪み、弾ける。
数刻の鍔迫り合い。
「お前、力で俺に勝てると思ったのかあ?」
八雲は無理やり力で黒曜を弾き飛ばした。
「式神が消えちまったなあ! おいいいい!」
八雲が道弥に迫る。
「守護護符よ。その力を示し、我を守護せよ」
道弥が結界を展開する。
八雲の一撃を結界は受け止めるも、傷が入る。
「そんな結界じゃたいした時間稼ぎにもならねえぞぉ?」
「数秒時間を稼げれば十分さ。なあ黒曜」
道弥の言葉と同時に、黒曜が一瞬で八雲に迫る。
「
黒曜の一撃を刀で受けた八雲は、完全に受け止めること叶わず何十メートルも吹き飛ばされた。
「お返しだよ、くそ爺」
「お前も爺じゃねえか、黒曜」
肩を押さえながらも立ち上がる八雲。
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