第140話 雲母坂ゆまVS旧鼠の長

「行くわよ、弥胡!」


 ゆまはすぐさま式神・弥胡を召喚する。

 弥胡は大きく跳びあがると、旧鼠の長にその爪で襲い掛かる。

 だが、その一撃は旧鼠の長の尻尾によって弾かれてしまう。

 しかし、弥胡の一撃によって長の動きが一瞬止まった。


「一瞬止めれば十分よ。りんぴょうとうじゃかいじんれつぜんぎょう! 全てを守る壁をなりて、皆を守らん。結界術・宵壁よいかべ急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう!」


 ゆまが護符を持ち呪を唱えると、ゆまと長を囲むように結界が展開される。

 それと同時に周囲に居た旧鼠の手下達が結界外に締め出される。

 これは道弥がゆまの結界に力を加えたからだ。


「これで手下は入ってこれないわよ。弥胡!」


「狐火・大炎」


 弥胡の尻尾から直径三メートルを越える炎球が放たれ、長に直撃した。


「入った!」


 炎球の爆発により、周囲が爆煙に包まれる。

 爆風から飛び出してきた長は、体毛が焼けている程度しかダメージが入っていない。

 その突進を受け、弥胡が吹き飛ばさせる。


「弥胡!? 火行・火雀!」


 ゆまの周囲に鳥を象った火が浮かび上がると、群れをなして長に放たれる。

 長はそれをものともせずにゆまに襲い掛かる。

 それをゆまはなんとか横っ飛びで躱す。


(全然効いていない……。やっぱり勝てないんじゃ?)


 敗北という言葉がゆまの脳裏によぎる。


「いや、効かないのなら、効くまで何度でもくらわせてあげる!」


 旧鼠の長はゆまと弥胡を格下と判断したのか、冷静にゆまを見つめ鳴いている。

 弥胡とゆまの攻撃を、長は素早いステップで華麗に躱す。


「でかい癖に素早いわね!」


 攻撃を躱した長は、ゆまを狙い再び突進を仕掛けた。


「危ない!」


 弥胡はゆまの首根っこを咥えると、突進を避ける。


「た、助かったわ」


「ゆま、思ったよりも一撃が重い。気を付けて」


「分かった」


 ゆまは長の攻撃を警戒して、遠距離から炎で攻撃を浴びせる。


(ダメージが通らない。もっと大きい一撃を!)


「弥胡、連撃で攻撃を重ねるわ。これで決める」


「分かった」


 素早いステップを踏む長が、直線に突っ込んで来る時を待つ。

 そして、その時が来た。

 突進してくる長目掛けて、弥胡が狐火を放つ。


「狐火・蒼炎」


「火行・朱雀すざく!」


 弥胡が放った巨大な蒼の炎に、ゆまが放った巨大な鳥・朱雀を象った炎が触れる。

 弥胡の蒼炎と重なり、より大きな蒼炎の鳥となって長に襲い掛かる。

 その一撃は長に直撃し、再び爆煙が結界中を覆った。

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