第137話 雲母坂ゆま
ゆまは十三歳の頃、東京でスカウトされアイドルグループ『ハニーレディガール』の一員となった。
今まで自分は平凡だと思っていたゆまはそれを大いに喜ぶ。
(私ってやっぱり可愛いんだ! グループって聞いたけど、ナンバーワンを目指そう! 私ならできるわ!)
やる気に溢れアイドルデビューしたが、現実はそんなに甘くはなかった。
(凄い……皆可愛い子ばっかりだ。あの人スタイル凄い……。あの子も歌めちゃくちゃ上手いし。私って何ができるんだろう?)
ゆまは全力で活動を行ったもののグループ七人中四位というなんとも言えない成績であった。
(私より可愛い子も多いし、歌が上手い子も多い。いったいどうすればいいんだろう?)
ゆまは必死に考えるも、答えは出ない。
「ゆまちゃんは可愛いし、頑張っているからすぐもっと人気出るよ!」
悩んでいたゆまに声をかけたのはグループの先輩でありながら人気ナンバーワンの奈良坂りんね。
金髪のボブカットがトレードマークで、人懐っこい笑顔で多くのファンを魅了しており、ゆまも尊敬していた。
「けど、もうずっと四位ですし……」
「うーん、なにか個性つけてみたらどう? 最近陰陽師流行っているし、陰陽師はどう?」
「陰陽師ですか? やったことないですが……」
ゆまにあまり陰陽師の知識はなかった。
テレビでたまに見る、妖怪と戦う人というイメージだ。
「なんでもやってみないと! 一緒にハニガもりあげていこ!」
りんねが両手を握って笑う。
(そんな簡単になれると思えないけど)
「頑張ります!」
そう思いながらも、限界を感じていたゆまはアドバイスに従って陰陽師試験専門の塾を訪れる。
「君、霊力多いねー。才能あるよ」
塾を運営していた陰陽師が言う。
ゆまには陰陽師の才能があった。
訓練をして一年半後、彼女は十五にして合格を勝ち取った。
それから二年後十七にして彼女は四級陰陽師に昇格する。
テレビには一定の陰陽師の需要があったこともあり、ゆまのテレビ露出も少しずつ増えていく。
陰陽師アイドルという売り方のためか、変な仕事も多かった。
廃屋など怖い所ばかりロケに行った。妖怪と戦わされることもあった。
「お疲れ様~、ゆまちゃん良かったよー」
「ありがとうございます!」
スタッフに手を振った後、ふまは妖怪の反撃により斬れた膝を消毒する。
(傷残らなきゃいいけど。色物枠でだって構わない……露出が増えればそれだけハニガの知名度があがる。宣伝もいっぱいしたし、効果が出てきたかな?)
地道な活動のお陰か、ゆまの人気はグループ内でも二位まで上がっていた。
一位のりんねに迫る勢いだ。
(ふふ、りんねさんのお陰だ。一緒にこれからもハニガを盛り上げていけたらいいな)
ゆまは二足の草鞋で余暇も殆どなかったが充実していた。
ある日、いつもは夜まで続くロケが早く終わった。
(こんなの久しぶりだな。たまには事務所戻ろっかな。りんねさん居るかな?)
事務所内のハニーレディガールの控え室に向かう。
ドアを開ける直前、中からメンバーの声が聞こえた。
「まじありえなくない? 私の冗談本気にしちゃって。なんだよ、陰陽師アイドルって。きも。変な恰好してさ。」
その声はゆまの尊敬するりんねの声だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます