第125話 酒呑童子
地面から、漆黒の狼が現れるとそのまま大鬼に襲い掛かる。
餓狼の牙が大鬼の右腕に刺さる。
だが、それをものともせず大鬼は笑いながら餓狼を殴りとばした。
(ふむ……普通の大鬼は二級程度であるが。こ奴、通常の大鬼より強いな。知能も高い)
「餓狼、喰らいつけ」
その言葉と共に、餓狼が再び襲い掛かる。
「それはさっき見たぞ、爺」
大鬼は手に持つ刀で餓狼を両断した。
だが、斬られた餓狼はそのまま形が崩れ、大鬼の影に溶け消えてしまう。
「
次の瞬間、背後から餓狼の牙が大鬼の首に深く突き刺さる。
鈍い肉に刃物が突き刺さるような音と共に、大鬼の首が裂かれた。
「天真、そっちはどうじゃ? と、いらん世話じゃったか」
横を見ると、既に天真が中鬼を倒していた。
「この程度、問題になりません」
「それでは先に進もうかいのう」
二匹の鬼を下し、菅原家は先に進む。
池に近づくにつれ、騒がしい音が聞こえる。
「呑気に宴会なんてしやがって!」
天真が悪態をつく。
そして一行は遂に酒呑童子達のいる奥大池に辿り着いた。
皆一様に酒を飲み、盛り上がっている。
一筋縄ではいかない妖気を皆が纏っているが、その中でも別格の妖気を纏う者が二人いた。
宴の中心に居る酒呑童子と、そのそばに居る茨木童子。
(な、なんだ……あの化物は!? 鬼? 本当に人の敵う相手なのか?)
天真はその姿を見ただけで大きく身震いをした。
「頭領ー、あいつ等を殺った奴等が来たようですぜ!」
「うぃ~。ようやく来たかあ! お前等を待ってたんだ。楽しませてくれるんだよなあ!」
部下の大鬼の言葉を聞いた酒呑童子が笑った。
(おそらく側に居るあの女の鬼が二番目に強い。おそらく勝てぬが……時間は稼がんとなあ )
「側の女は儂がやる。お前達は他の鬼の相手を。岳賢、メインは任せたぞ」
「大丈夫か、玄六さん。爺さんにはきつかろう?」
「馬鹿にするない。まだ現役じゃて」
玄六は茨木童子を見据えて言う。
天真は茨木童子を見て、体が僅かに震えていた。
(昔一度だけ一級妖怪討伐任務に同行したことがある。あの妖気、一級以上じゃないか。部下ですら……)
爺ちゃん、無理だ。
と、天真は言えなかった。
誰かがあの化物の足止めをしなければならないことを理解していたからだ。
俺も一緒に戦う、と言いたかった。
だが、天真は怖かった。
茨木童子と戦えば十秒も持たない、と本能的に感じていたからだ。
そんな天真の様子を見て、茨木童子が嘲笑する。
「こんな所に坊やをつれてくるなよ。怯えているじゃないか」
「天真は周囲の鬼を頼む。お前如き、儂一人で十分よ。吞んだくれの鬼に従う小鬼程度な」
「酒呑童子様を侮辱するとは! 飛雷!」
主を馬鹿にされ怒った茨木童子は手から一閃の雷を放った。
その雷は玄六を貫き、そのまま背後の木々も貫き燃やした。
◇◇◇
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