第124話 お前が欲しい
黒曜は岳賢たちに気付き、そちらに顔を向ける。
「そう警戒するな。土地神を殺したのは僕じゃない」
「お前は何者だ! ここは立入禁止だぞ!」
三級陰陽師の一人が大声を上げる。
「止めんかあ! うちの者が大変失礼した。私は菅原岳賢と申します」
岳賢が部下を怒鳴りつけると、そのまま黒曜に頭を下げる。
「別に僕は構わないよ」
「貴方が土地神を殺したと疑っている訳ではないが、なぜここに? ここは今ごたついている」
「君達と同じさ。異変を調べに来た。君は中々強いようだけど、帰った方が良い。
そう言って、黒曜が上を見ると地面に下りてくる大天狗の姿があった。
突然の大天狗の姿に、皆が固まる。
(大天狗……! 一級妖怪だぞ!? なぜこれほどの妖怪がこの男に従っている!? この男はいったいどれほどの――)
天真は大天狗の姿を見て固まってしまう。
「黒曜様、敵の長の姿は確認できませんでしたが、部下は確認できました。おそらく長は……」
部下である大天狗が黒曜に耳打ちをする。
「なるほど」
黒曜は無言で頷いた。
「岳賢とやら、僕は仕事を果たしたためもう帰るよ」
「お待ちを! 先ほどは御忠告大変感謝する。黒曜殿、大天狗を従えている所を見るとさぞ高名な大妖怪と見受けられる。失礼を承知で申し上げるが、俺の式神になってはくれないだろうか? 俺単体では適わずとも貴殿の助力があれば、勝てるのではないか?」
岳賢は突然、黒曜をスカウトし始める。
その圧倒的な強さを感じ取ったのだ。
「貴殿の力が欲しい! 頼む! この通りだ! あなたが望むものをなんでも差し出そう!」
だが、岳賢の言葉に大天狗が剣を握る。
「貴様如きが黒曜様に何を抜かす」
「別に良いよ。今、僕は機嫌が良いからね。度胸は買うが、君程度では力不足だ」
「……そうか。非礼を詫びよう。最後にもしよければ、池に居る妖怪を教えてくれないか?」
その言葉を聞いて、黒曜は少しだけ考えるそぶりを見せる。
「……鬼だ」
黒曜はそう一言だけ告げると、部下の大天狗と共に風に乗り去って行った。
黒曜が消えた後、菅原家皆が大きく息を吐く。
「なんじゃあの怪物は! あんな怪物、陰陽師五十年やってるけど数えるほどしか見たことないわい!」
玄六が大声で言う。
「玄六さん、勝てたんですか?」
「馬鹿言え。逃げたからまだここに居るんじゃ」
「岳賢、お前の発言にも肝を冷やしたわい。奴が襲ってきた場合、ここで全滅もあり得たぞ?」
「玄六さん、すみません。ですが、どうしても彼が欲しかった」
「何者だったのじゃろうなあ?」
「分かりませんが……一級の枠に入らぬほどの歴史に名を残す大妖怪なのは間違いないでしょう」
思わぬ大物の登場に、皆疲れを見せるがまだ何も始まっていない。
再び精鋭達は池を目指して進む。
池まであと少しという所で、武装をした大鬼と中鬼が、酒を飲みかわす場面に出くわす。
「おいおい、来たぞ。頭に報告だ」
「前来た奴よりは強そうだな」
鬼達は笑いながら、盃を放り投げ立ち上がる。
「岳賢~、お前は後ろにおれ。ここは儂等の出番じゃさかい。天真、ほれ、中鬼は任せるぞ」
「はい!」
玄六は印を結ぶと地面に手を当てる。
「
◇◇◇
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