第108話
「誰かの式神になど、二度とならんと思っていたんだけどね。再び世話になるよ」
「こちらこそ、よろしく頼む」
こうして、黒曜が再び式神となった。
契約が終わった後、放置していた佐渡さん達の元へ行く。
「すみません、お待たせいたしました。どうでしたか? 陰陽師も捨てたもんじゃないでしょう?」
「そうだな。さっきの君はとっても格好良かった。陰陽師も悪くない、そう思えた。きっと私はあの日からずっと止まっていたんだと思う。逃げたのだ。父の罪から、陰陽師の責務から。そろそろ、前を向く時がきたのかもしれないな」
佐渡さんはそう言うと、雪乃さんの方へ向き合う。
「雪乃、六年前の事件は全て我々佐渡家が悪かったです。本当にすみませんでした。謝って済む話でないのは分かっています。だが、私には謝ることしかできません。そのうえで、頼みます。どうか、私に再び陰陽師として働くことを許してほしい」
そう言って、深々と頭を下げた。
「いいの。こっちこそ、六年前はごめん。貴方が全力で妹のために戦ってくれたのは知ってる。あの時責めたこと、ずっと謝りたいと思ってた。多くの人のために頑張っている呉斗が誇りだったわ。だから、これからも貴方のしたいことを」
「雪乃……」
二人は幸せそうに見つめあっている。
佐渡さんが陰陽師に戻るようになったのは嬉しいことだが、この二人はこれからどうするのだろう。
「あんたたち、いいムードになってるけど、これからどうしますの? お別れですの?」
莉世が切り込んだ。流石だ、空気なんて読まない。
「えっ⁉ どうって、ねえ……」
雪乃さんが混乱しながら、佐渡さんを見る。佐渡さんは雪乃さんの手を握り、その目を見据える。
「いや、私はこれからも雪乃と一緒に居たいと思っている。もう一度付き合ってくれないか?」
「……こちらこそお願いします」
雪乃さんは顔を真っ赤にしながら照れくさそうに微笑む。
良かった。二人はお互い思いあっていただろうに、不幸があってこうなっていたのだ。
「じゃあ、依頼も終えたし帰りましょう」
「お前等ーーー! 俺をわすれるんじゃねえええ!」
大声の方向へ振り向くと、そこにはぼろぼろになった花開院大樹の姿があった。
生きてたのか、お前。
「お前、命の恩人にその態度とか、本当どうしようもないな」
俺は呆れたように言う。
「何が命の恩人だ! 俺はお前達に助けた覚えなどない! 俺だけでも倒せたのだ。お前達は俺の依頼を勝手に奪った。このことはしっかり協会に報告させてもらうぞ!」
クズ過ぎる……。
「あんた、助けて貰ったのに、なんて態度なの?」
未希が苛立ったように言う。
「なんだあ? 証拠はあるのか? 証拠は!」
うーん、黒曜を調伏したところを見ていなかったのだろうか?
黒曜に至っては腰の刀に手を伸ばしている。いつでも斬れるようにだろう。
「証拠? 佐渡さん、あれをお願いします」
「なっ⁉ なぜそんなものを……⁉」
俺の言葉と共に、佐渡さんが取り出したものを見て、大樹は言葉を失った。
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