第104話 俱利伽羅牢
まさに神速。
大天狗では目でも追えないほどの速度で一瞬にして距離を詰める。
「なっ⁉ 人間達がどうなっても――」
大天狗は言葉の最後を言う暇もなく、真の爪により吹き飛ばされる。
隣山まで吹き飛ぶほどの一撃。
大天狗達も想像を超える速度に一瞬固まってしまう。
その隙にもう一体に、爪による一撃が叩き込まれる。
「ガアアアア!」
もう一体の大天狗が地面に叩きつけられる。
「化け物め!」
そう言って、大天狗が風で攻撃をかける。
だが、真が口から放つ光線で、一瞬で氷漬けに変わる。
錫杖を持った大天狗は自らが戦っている神狼の強さに完全に恐怖を覚える。
「人間がどうなってもいいのか! 所詮は狼だな!」
強がって、呉斗達に攻撃をしようと構えた瞬間。
「
呉斗が叫ぶ。同時に錫杖を持った大天狗の周囲を炎の渦が覆いつくす。
大天狗はこれが自らを閉じ込める牢獄だと一瞬で察知する。
「ふざけるな! 人間風情がァ!
大天狗は錫杖に風を纏わせると突きを放つ。
一瞬で崩せると思ったその牢は大天狗の一撃を軋みながらも耐えていた。
「ずっと耐えられるなんて思っていないさ。だが、少しだけお付き合い願おうか」
呉斗は汗を流しながら、必死で倶利伽羅牢を展開し続ける。
自分の手持ちの中で最も質の良い護符を複数使い、残りの霊力も全て込め、それでも十秒も閉じ込めることができない。
だが、呉斗はそれでよかった。
自分の責務は果たせたのだから。
「舐めるなああああ!」
怒りのこもった一撃は遂に、牢を貫いた。
「殺して……え?」
牢を破った先に見えたのは目前まで迫った真。
「侮った人間に一本取られたな」
笑いながら、真はその爪で大天狗を切り裂いた。
蠅叩きで叩かれた蠅のように、大天狗は地面に叩きつけられ、そのまま動くことはなかった。
「終わったか。あちらは……まだのようだな」
真は道弥達を見て、呟く。
「強いとは聞いてましたが……ここまでとは。今までは力を抑えていたんですね。芦屋家と言えば、酷い扱いを受けているのは想像に難くない。そんな少年がここまでになるのは、決して平坦な道のりではなかっただろう。道弥君、君はかっこいいな。八百が貴方を推しているのが分かりましたよ」
道弥達と黒曜の凄まじい戦いを、呉斗は見ていた。
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