第81話 佐渡呉斗

 翌日、俺はメールで指定された喫茶店に向かった。

 店員に案内された奥の席には、既に四人が座っていた。きっちりと、ジェルでオールバックに決めた高身長で眼鏡の男性がこちらを見て立ち上がる。


「芦屋君ですね。来てくださってありがとうございます。今回の依頼の代表者を務める佐渡さど呉斗くれとと申します。今回の依頼は敵が二級妖怪の可能性が高く、四級陰陽師を入れるのは安全の面から反対だったのですが……君なら問題なさそうですね。よろしくお願いします」


 と言って、手を伸ばす。

 凄い丁寧な人だな。グレーのスーツがとても似合っている。


「こちらこそ、新米ですがよろしくお願いします」


 俺達は手を握手を交わす。年齢は二十代後半ほどだろうか。

 他のテーブルには三人の陰陽師が座っている。

 二十代前半の女性に、三十代後半の男性が二人だ。


「それでは全員揃いましたので簡単に説明しましょうか。今回の依頼には大きく二つの目的があります。誘拐された女性達の救出、そして京都の理伝村の山に巣食っている妖怪の討伐です。おそらく敵の長の推定レートは二級以上。長は私が殺ります。三級陰陽師三人は邪魔が入らないように周囲の妖怪の討伐をお願したいです」


「「「はい」」」


「芦屋君、君は基本的に索敵のみです。八百から聞いています。索敵能力も高いと。私達はできるだけ敵本体との戦闘へ向けて霊力を温存したい。頼めますか」


「勿論」


「ありがとうございます。日々、被害は拡大しております。明日朝の便で村へ向かいます。では最後に報酬の話ですが、総報酬は五千万。振り分けは私が半分。三級の三人には八百万円ずつ。芦屋君には百万円で考えておりますがよろしいですか?」


 それは随分……こちらが高いな。

 通常階級が違う陰陽師が組む場合、一つ階級が違うと報酬は十倍ほどに上がる。二つ違うと百倍だ。

 俺が五十万円貰えるのなら、三級は五百万、二級なら五千万といったところか。

 これは階級一つ違えば、十倍位活躍に差が出るからだ。

 通常通り等分するのならば、佐渡さんは三千八百万円。三人は三百八十万円。俺は三十八万円位か?


「随分、佐渡氏の報酬が少ない気がします。おそらく敵の主力と戦うのは佐渡氏。それでは不公平な気がします」


 女性陰陽師が声を上げる。


「別に構いません。私は久しぶりに陰陽師に復帰するロートルです。皆さんのお力を借りることも多いでしょう。では、明日からよろしくお願いします」


 佐渡さんは立ち上がると、そのまま去っていった。


「佐渡さん、相変わらず格好良いわぁ……!」


 女性陰陽師が呟く。帰り会計をしようとしたところ、既に佐渡さんによって支払われていた。

 スムーズで格好良いじゃないか。どうやら、今回の代表者はできる男らしい。

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