第72話 スカウト
試験終了から一夜。
家に戻った俺は久しぶりに自分の布団でゆっくりと休んだ。
未だに心は全く整理がついていない。だが、現状では力不足なのは確かだろう。
居間へ向かうと、父が俺を見て大声を出す。
「遅いぞ、道弥! 今日もテレビはお前の話題で持ち切りだ!」
テレビに目を向けると、そこには昨日の陰陽師試験のことを放送されている。
『この結果は、七年前の安倍家次期当主と名高い安倍晴海さんの記録を彷彿とさせますね』
テレビではもう何度も見た狩衣を着た陰陽師のおっさんが話している。
『晴海さんと言えば、最年少一級陰陽師となったことで一気に脚光を浴びましたが、七年前も陰陽師試験でも二位と大差をつけて合格してましたね。ということは、芦屋道弥君は晴海さん並だと、言うことですか?』
『一概には勿論言えません。ですが、私は個人的にはそのレベルなのではないかと思っています。近年、この二人ほどの大物は誰も出てきていません。彼らは次世代を担う存在なのは間違いないでしょう。その証拠に御三家ではない大手陰陽師事務所はほぼ全ての事務所が彼のスカウトを表明しています。一級陰陽師の居る事務所は現状殆どないですので、大きくリードできると考えているのでしょう』
「スカウトねえ……」
と俺が呟くと、母がキッチンから顔を出す。
「道弥、スカウトの方沢山家の前に来ているわ。どうするかは任せるけど、話くらいは聞いてあげたらどう?」
「……分かった」
俺は面倒だな、と思いつつも玄関に向かう。
「私でも知っている大物が、前には来ているぞ」
とどこか興奮気味に父は言う。あんた息子がスカウトされているんだから少しは怒ってもいいんだぞ。
玄関の扉を開けると、そこには十人を超えるスカウトが一斉にこちらを振り向く。
スカウトを専門としている事務員から明らかに上級陰陽師の雰囲気を纏わせた男など様々だ。
「芦屋道弥君、スカウトに参りました! 君の才能は素晴らしい。私は代々木陰陽師事務所のスカウト部門統括の桃山です! 年収一千万以上を保証、貴方の才なら一億以上も可能です。そして契約金は一億円をご用意しております! よければお話できませんでしょうか」
一億とは中々景気のいい話だ。だが、二級陰陽師の年収は一億は優に超える。そう思うと二級以上の若手に一億もおかしくはないのか?
「いや、芦屋君! 門前陰陽師事務所でこそ君の才能は輝く! 私は代表の門前小太郎。君の姿を見た瞬間に分かった。君は本物だと。うちに来て天下を取らないか!」
情熱的な誘いである。目が据わっている。
その後も大量のスカウトから怒涛のセールストークが繰り広げられる。
「おいおい、お前ら。困ってるじゃねえか」
どのように断るか考えていると、低いがよく通る声がその場に響く。
その声を聞いた瞬間、騒がしかったスカウト達が動きを止める。
「なに、あんたには関係ないだ……ろ?」
その言葉の主の方へ振り向いたスカウトが言葉を失う。
その顔は驚愕に染まっていた。
「ま、まさか御三家の現当主が直々にスカウトとは……」
スカウト達は一様に顔を歪める。
そこには袴を着た四十代後半の男が立っていた。
「少し話していいかい? 俺は、
現代の陰陽師御三家菅原家現当主、菅原岳賢はそう言って笑った。
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本日から再開します!
二章の始まりです(*'▽')
ついでに宣伝も(笑)
筆者の書いている
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