第58話 ミツケタ
真剣な声色の謝罪に、俺は首を傾げた。いったい何があったんだ?
「どうした、リーゼント?」
俺の言葉を聞き、リーゼントは顔を上げる。
「俺は自分が真の漢と認めない漢には、決して従わないと決めてました。真の漢というのは強いだけじゃ駄目なんです。強さと共に『優しさ』がなければ、真の漢とは言えません。正直初めはただの子供だと。だが、違いました。貴方は『強く』、『優しい』真の漢でした。俺の目が節穴でした」
「俺は強いが、優しくはねえよリーゼント」
そう言って、リーゼント部分を指で軽く弾く。
「一度裏切ろうとした仲間を、全てを知ったうえで許し、仲間のために怒り、命を懸けて助けにいく漢が、漢じゃない訳がないです。俺はしっかりと感じました。道弥さんの高潔な魂を……!」
とキラキラした目でこちらを見つめている。
そう思っていたら、宙から莉世が降って来た。
「えらいわ! あんたもようやく気付いたのね。道弥様の素晴らしさに! 凡人の癖にやるじゃない!」
「姐さん! すみません……俺の目が曇ってました。道弥さんは強く優しい仁義の漢でした」
「姐さんなんて……! 私がまるで、道弥様の妻のような響き……嫌いじゃありませんわ」
喜んでいる莉世。
人の式神を姐さんって言うな。
「凄いね、道弥君」
と苦笑いをするゆず。
とりあえず、ゆずの治療でもするか。
「莉世、ゆずも治してやってくれ」
「今行きますわー」
莉世の力により、ゆずの骨折や傷は痕が残ることもなく綺麗になった。
「ありがとうございます!」
ゆずが何度も莉世に頭を下げている。
「道弥様以外を治すことなんて、滅多にないのですから感謝しなさい」
話していた莉世が空に顔を向ける。
「道弥様、羽虫が」
莉世の目線の先には三本足の烏、八咫烏が飛んでいた。
誰かの式神か? それとも偵察?
八咫烏はこちらに目を向けると、言葉を発する。
「コッケイ! コッケイ!」
なんだあいつ。とりあえず祓うか。
「ヤツキガアベケデアルコトモシラナイマヌケ、ミツケタ!」
八咫烏はそうはっきり言った。
「え……?」
俺は突然の言葉にただ思考停止した。
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