第57話 失せろ
「夜月の秘密……?」
俺は咄嗟にそう返してしまった。
俺の反応に、陸はいけると思ったのか話し続ける。
「ああ! あんたも感じていたはずだ。夜月は何か隠していると。あんたは騙されてんだよ。なに、何かを求めたりはしねえ。ただ、俺を見逃してくれればいい。先ほどの非礼も謝る」
陸は必死に頭を下げる。
「確かに夜月は何か俺に隠していたようなそぶりがあったな」
「だろう! あいつは大嘘つきなんだ! 俺はあんたに同情してる。だから俺が真実をあんたに伝えてやる!」
必死で話す陸。そんな陸に俺は告げる。
「だが、もし夜月が何かを隠していたとしても俺は夜月から直接聞く。お前のような下種から何か聞くつもりはない。俺達の関係にお前が土足で踏み込むことを許すつもりはない。失せろ、下種が」
陸の顔が真っ赤に変わる。
「てめえ! 夜月は――」
次の瞬間、真が振り上げた前足を陸の腹部に振り下ろす。
その一撃は地面を砕き、陸の骨をも砕く。陸の体はビクンと大きく跳ねた後、白目を剥いて完全に沈黙した。
呆然としているゆずの元へ向かう。
「大丈夫か。遅れてすまなかったな」
「いえ……助けてくださってありがとうございます。私謝らないといけないことが。実は陸さんに――」
「最後にこちらを選んだ。それだけで十分だ」
俺はゆずの言葉を遮るように告げた。
「ごめんなさい……」
ゆずは大粒の涙をこぼした。
「泣くでない、少女よ。最後に過ちに気付いて、正しい道を選べた。それが大事なのだ」
真が、ゆずに声をかける。
「もしかして……大口真神様ですか?」
「我を知っているか。感心だな」
真が神様モードの対応をしている。
「知ってるも何も、伝説の神様じゃないですか! 私一度神社にお参りに行ったこともありますよ!」
ゆずが憧れのスターにあったかのような目で真を見つめている。
俺が死んでいる間に、随分有名になったものだ。
「我は全てを見ておったぞ。良い式神を持っているな」
その言葉を聞き、凄い幸せそうな顔を浮かべる。
「はい! 自慢の式神なんです! あ……あの、陸は死んでいるんですか?」
恐る恐るゆずが聞いてきた。
「いや、生きているはず? 生かす価値はないんだが……こんな馬鹿のために失格になるもの馬鹿らしいからな」
「そうですか……良かったです」
「こんな奴のこと、案じなくていいのに」
「いや、こんな奴のために、道弥君が失格になったら嫌ですから」
そう言って、ゆずが笑う。中々言うようになったな。
俺は倒れた奴等から勾玉を回収する。
陸が二十二点、他から五点、計二十七点を得た。
元の物と合わせて、百六十四点である。
勾玉の回収が終わった頃、リーゼントがようやくたどり着いたようだ。
だが、いつもの睨むような目つきではなく、真剣な顔をしていた。
「道弥さん、貴方は真の漢だった。今まですみませんでした。無礼な行いを謝罪させて下さい」
リーゼントは膝を開くと、両手で膝を掴み、深々と頭を下げた。
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