第10話 広まる情報

 謎の少年の、一瞬での結界破壊で子供用スペースの場は騒然としていた。


「あの子は誰だったんだ?」


「凄い才能だぞ。あれほどの子。将来は一級も夢じゃない」


 道弥の正体を知らない者達が騒ぐ一方で、芦屋家の者だと知っている嫌味を言っていた者達は口を閉ざした。


「何かの間違い……よね? 芦屋家が、ありえないわ」


「何かずるしたのよ。結界破壊用の呪具を持たせてたんじゃない?」


「そうに違いないわ」


 彼女達は、一瞬での結界破壊は結局呪具を仕込んでいたせい、ということで落ち着いた。

 馬鹿にしていた芦屋家の、しかも子供がそこまでの実力を持っているとは思えず、呪具という方がよっぽど納得できたためだ。

 あの衝撃的な光景から、残りの子供達はすっかり委縮してしまう。


「さっきとは名前が分からなかったから、一番は陸君だよ?」


 と少年はスタッフに声をかけられるも、顔は全く納得していない。


「……そんな一位要らない」


 少年は苛立ったように言い放つと、その場から走り去っていった。

 その騒ぎを聞きつけて、陰陽師協会の上役もやって来た。


「なんの騒ぎだ、これは?」


「実は……六歳くらいの子供が、簡易結界を一瞬で破ったんですよ。しかも完全に解読した上での解除です」


 それを聞いた上役は、笑う。


「一瞬で? 見栄を張った親が力を貸したのではないか? 六歳の子が一瞬で破るとは信じられん。名は?」


「それが、名前を聞けず。芦屋家の子では? という意見もあるのですが確定できず……申し訳ありません」


「芦屋家……か。もし本当に一瞬でやったのなら上級の実力は間違いなくあるだろうな。まあ、危害とかが出たのなければ良い」


 上役はそう言って、本部に戻る。


(芦屋家など久しぶりに聞いたな。確か現当主は四級だったはず。スタッフの結界が不完全だったか、呪具だと思うが……一応心に留めておこう)




 陰陽師フェスタの翌日、ある少女は悩んでいた。

 昨日会った少年のことが忘れられなかったからだ。

 殆どの人間にあまり興味を示さない少女は、自分の気持ちに驚いた。

 なぜ自分が少年に興味を持っているのか、うまく言葉にできなかった少女は、使用人に少年の家を訪ねると伝え、ふらりと家を出た。


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