始業式の朝

口羽龍

始業式の朝

 今日は4月7日。今日は始業式だ。昨日まで春休みだった学生は、今日からまた登校する日々が始まる。その中には、今年度は受験の学生もいて、今年度にかける日々は様々だ。


 満子(みつこ)は都内に住む高校2年生。今年度最初の登校だ。昨日まで春休みで、体を休めていたが、今日から登校だ。少しずつ現実へと戻っていく。また今年度も頑張らないと。


 満子は地下鉄の駅の構内を走っていた。向かう時に少し焦って、地下鉄に遅れそうだ。早く行かねば。


 満子がホームにやって来たちょうどその時、10両編成の長い電車が汽笛を鳴らしてやって来た。車内はとても混み合っている。いつものラッシュアワーの光景だ。少しずつ元の日常が戻っていく。そして、これから1年間、どんな事が起こるんだろうと思い浮かべた。


 電車が到着すると、満子は近くの出入り口から電車に乗った。電車は満員で、歩く場所がない。


「ドアが閉まります、ご注意ください。駆け込み乗車はおやめください」


 ドアが閉まり、電車はホームを後にした。これもいつもの光景だ。春休みが終わった事を実感させる。


「はぁ・・・」


 満子は息を切らしていた。いつもは走らないのに、少し焦ったせいでこうなってしまった。


 と、満子は電車に乗っている筋肉隆々の男が気になった。先月の同じ電車では見かけなかった。新入社員だろうか? とてもかっこいいな。


「何だろうこの人・・・」


 電車に揺られて数十分、満子は電車から降りた。高校へはここから徒歩だ。満子と同じ高校の生徒が何人か降りた。


「満子、おはよう」


 満子は振り向いた。そこには晴美(はるみ)がいる。1年生の頃の同級生だ。果たして今年度も一緒になれるんだろうか?


「おはよう」


 満子は笑みを浮かべた。懐かしい顔だ。また1年、仲よくしよう。


「今日から始業式だね」

「うん」


 2人はいつものように改札を出て、高校への道を歩き始めた。今年度はどんな出会いがあるんだろう。その先の出来事は、まだ見えない。




 満子は新しい教室に入った。幸いにも、晴美と同じクラスになった。その中には、1年生でも一緒だった人もいる。少し懐かしい。またその子とも仲良くしたいな。


「おはよー」

「また満子ちゃんと同じクラスかー」


 翼(つばさ)は笑みを浮かべている。かわいい満子とまた同じクラスになれた。本当に嬉しい。


「またよろしくね」

「うん」


 しばらくすると、体育館に移動になった。これから始業式だ。始業式に併せて、着任式も行われる。今年度からやって来た先生が自己紹介をする予定だ。


 始業式を終えて、着任式が始まった。今年から着任する先生が、壇上に集まっている。他校からやって来た先生もいれば、今年から先生になった人もいる。


「それでは、今日からこの学校にいらっしゃった先生を紹介します」

「あれっ?」


 と、満子は壇上にいる男が気になった。今朝の息の地下鉄で見た人だ。服も一緒だ。この高校に新しくやって来た先生だったのか。まさか、行きの地下鉄で見かけるとは。


「どうしたの?」


 横にいた晴美は、満子の反応が気になった。どうして反応しているんだろうか? 知っている人がこの中にいるんだろうか?


「この人、今朝の地下鉄で見かけるの」

「新任の先生だったんだー」


 晴美は驚いた。まさか、満子と同じ地下鉄で向かっていたとは。何という偶然だろう。


「この人は、本原和重(もとはらかずしげ)先生です。今年の3月、大学を卒業して、この学校にいらっしゃいました。皆さんには、保健体育を教えていただきます」


 保健体育の先生だったのか。だから、あんなに筋肉隆々なのか。どの部活を指導するんだろうか?


 その後、クラスの担任が発表になる。このクラスには、誰が担任になるんだろう。優しい先生がいいな。


「えー、2年C組、本原和重先生」


 満子は驚いた。まさか、あの先生が今度の担任だとは。こんな偶然、あるんだろうか?




 クラスに戻った満子は、担任の先生を待っていた。他の人も新しく着任した先生を待っている。


「来た!」


 誰かが声を上げた。廊下を見ると、担任の先生が歩いている。本原先生だ。


 本原先生が入ってきた。生徒は驚いた。まるでボディービルダーのような体型だ。いかにも保健体育の先生っぽい感じだ。かっこいい先生だな。


「えー、今日からこのクラスの担任になった、本原和重と申します」


 教室の生徒は、本原先生の話を聞いていた。今日からこの人が担任なんだ。どんな1年になるんだろう。期待したいな。


 今日の学校を終えて、満子は帰ろうとした。明日もまた学校だ。頑張ろう。


「あれっ、君、今日の行きの地下鉄で見かけなかった?」


 と、誰かに話しかけられた。満子は振り向いた。そこには本原先生がいる。満子は驚いた。まさか、本原先生も私を見つけたとは。


「そ、そうだけど」

「まさか、同じ地下鉄で向かうとは」


 きっと明日も同じ地下鉄で学校に向かうんだろう。また見かけたら、世間話でもしながら登校しようかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

始業式の朝 口羽龍 @ryo_kuchiba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説