幕間④

 ここはどこだろう?

 見渡す限りが闇に包まれている。

 何も見えず、何も聞こえない。

 完全な闇に包まれたこの空間は、まるで黒というよりも色がないという方が正しいのかもしれない。

 自分はなぜこんなところにいるのだろう?というか、自分は誰だ?思い出そうとしても、頭にもやがかかっていて思い出せない。

 重りでもつけられたかのように体が重く、動く気分にもなれずそのままぼーっと座っている。


 座ったままで一体どれくらいの時間が過ぎただろうか。

 ふと耳元でシャンと音が鳴った気がした。

 反射的に振り返ると一匹の光る蝶が舞っていた。

 蝶は光の軌跡を描きながらひらひらと飛びながらこちらから離れて行ってしまう。

 飛んでいく蝶を見て、闇に染まっていた心が少しだけ色を見せた。

 これを見逃したら、もうここから動くことなんてできないと。

 重たい体を持ち上げて衝動に引っ張られるまま蝶を追いかけた。

 何度も足がもつれるが、それでも蝶に置いて行かれないようになんとかついていく。

 疲れ果てて、追いかけるのをあきらめてしまおうかと考えたその時、蝶の向かう先にかすかだが光が見えた。

 そのかすかな光がこの暗闇の出口であるという確信が自分にはあった。あの蝶は自分を出口に導くためにやってきてくれたのだ。そう信じて光の方へもう一度歩き出す。

 もうすでに疲れで足の感覚はなく、本当に進んでいるのかわからないくらいのペースでしか足は動かない。

 それでも、足は止めない。

 止めてはいけない気がしたからだ。

 前を飛んでいる蝶も待ってくれているのように飛ぶペースを下げてくれている。

 気が遠くなるほど時間をかけて光へと進んでいく。

 一歩ずつ一歩ずつ、少しでも前へ。

 最初はかすかだった光も、進むにつれてだんだんと大きくはっきりと見えてくる。

 光が近づくにつれ自然と両手が光の方へと伸びていく。

 伸びた両手が光に触れた瞬間、視界が白くまばゆい光に塗りつぶされた。

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