第5話 1年が過ぎました
僕が秘密の特訓を始めて1年が過ぎたよ。
姉様はまだ兄様には勝てないみたい。それでも前みたいに駄々っ子にはならずにグニャグニャ体操と筋トレを頑張ってるみたいだよ。
勿論だけど兄様もね。
「スージェ、今日は兄様の腕に初めて木剣がかすったの!」
六才になった姉様はもう僕の頭を
「スージェは毎日、どこに行ってるの?」
姉様からヤバい質問が来たね。でも僕はボブと打合せ済みだから慌てないんだ。
「僕はボブの所で庭に生えている木や草花について教えて貰ってますよ、姉様」
そしてこれも嘘じゃなくて、週に2日は本当にボブに庭木や草花について教わっているんだ。毎日じゃないってだけでね。
「いいなぁ、スージェは。毎日遊べて。私なんて勉強、勉強、勉強、ばっかりだよっ!」
いえ、姉様。剣術のお稽古は勉強じゃないですよね? 週に3日だった剣術のお稽古を六才の誕生日に父上に
「そうだ! スージェにも私が習ってる算学の勉強を見せてあげる!」
いい事を思いついたみたいに僕に言ってきましたけど、姉様…… 分かっても答えは教えませんからね。解き方はお教えしますけど。
そして姉様が差し出してきた家庭教師の先生の手作りドリルを見てみると……
姉様…… せめて一桁の足し算ぐらいは出来るようになりましょう。僕としてもこの姉様の勉強嫌いはヤバいと感じた瞬間だったよ。そこで僕は一覧表を作って姉様に一桁の足し算をお教えする事にしたんだ。こんな感じだよ。
0.1.2.3.4.5.6.7.8.9.
0. 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2. 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
3. 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
4. 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
5. 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
6. 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
7. 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
8. 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
9. 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
これを見た姉様は、
「凄い! スージェ、天才だね!!」
と大はしゃぎをしている。その声が部屋の外にまで聞こえていたのか兄様がノックしてから開いてた扉から入ってきたんだ。
「どうしたんだい、ウィズ。そんなにはしゃいで?」
そこで姉様は僕の作った一桁足し算一覧表を兄様に見せた。
「見て! 兄様、スージェが考えたの! 凄いでしょ! これなら先生の説明よりも良く分かるわっ!!」
一覧表を見た兄様の反応は
「へぇ〜、凄いね。良く出来てるよ。でも、これを見て答えを書くのはダメだよ、ウィズ。ちゃんと足し算を考えてごらん」
と一覧表を使いながら姉様に一桁の足し算を丁寧に教えていく。
「そうなのね!! 分かったわ、兄様! 先生より分かりやすい! 私の算学は兄様に先生をして貰うわっ!! さっそく母様にお願いして!」
と部屋を飛び出しそうになる姉様を慌てて止める僕と兄様。
「姉様、待って!」
「ウィズ、ちょっと待つんだ!」
僕たち二人から止められてキョトンとする姉様。
「何で止めるの二人とも?」
「あのね、ウィズ。僕が教えるのは何の問題も無いんだけどね」
と兄様が言い、その後を僕が続ける。
「それを母上に言って兄様が姉様の家庭教師にしてしまうと今きて下さってる先生が無能だって言うことになるから、それだと先生がクビになっちゃうんだ」
で、その後を更に兄様が続ける。
「でもね、僕は今の先生が教えて下さる事が良く分かって楽しいからクビになって貰いたくないんだよ。だから、分からない所は先生の教えの後にコッソリと僕に聞いてくれれば教えるから、母上に僕に教わるという話はしないでくれるかな?」
その僕たちの言葉に姉様はコックリと頷いた。
「そうだったわ。兄様はあの先生の教え方で良く分かってるのよね…… うん、分かった。分からない時は後でコッソリと兄様に聞くことにする!」
良かった、姉様も分かってくれたようだ。兄様と姉様の家庭教師をしてくれているのはうちの
僕が思うに兄様は淡い恋心を抱いてるんじゃないかなと思う。誰にも言わないけど。
それから数日が過ぎて姉様も頑張ったみたいで、二桁の足し算も出来るようになったってはしゃいでいたよ。
僕は今は【筋力の極意】からの教えを受けているんだ。
僕の脳内にこんな言葉が浮かんでいる。
『筋力は筋肉に
? いや、
そう思っても僕の脳内の言葉は変わらない。
『筋力は筋肉に
う〜ん…… どういう事なんだろう?
その答えが分かったのは更に1年が過ぎ、僕が五才になった時だったんだよ。
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