第3話〜べっぴんさんが揃いなこって

 エントランスホールにはこの館にいる全員が集まっただろうか。夫人は上機嫌で自分の召使い達を紹介した。


「このクッキー達は我が家の物ですのよ?決して雇った訳ではありませんわ」

「そうですか。こりゃまたペっぴんさんが勢揃いなこって」


 この世界ではクッキーを飼っている数が多ければ裕福であり見栄があるとされているため、雇ったりするサービスもあるようだ。


 そして信濃は興味がなさそうに、そのクッキー達を観察していった。


「ほらアナタ達、自己紹介をなさい」


 夫人がそう言うとクッキー達は一体ずつ、信濃と桜子に自己紹介をした。


「アタシ、シャンティ。正式名称はマロンシャンティ。食事、楽しんでいけば?」


 極西のクッキーの平均ぐらいの身長で、紫と赤のメッシュが入った茶髪のショートのメイドのクッキーだ。彼女からは葡萄とクリームの匂いがする。


「メアリーはピンクレースメアリー。探偵様、お食事会楽しんでくださいね!きゃはは!」


 極西クッキーの最低ラインの身長だ。ピンクのフリルがついた可愛らしいメイドのクッキーで、顔のそばかすであるゴマが可愛らしい。


 髪はクリームタイプらしく巻き髪のくすんだ金髪とインナーカラーとしてピンクが入っている。人工の苺の香りが物凄くする。


「ボクはシェンホンフェイさ、フェイって皆呼んでいるよ。今夜はよろしく」


 フェイと名乗るクッキーが桜子と目が合う。そして彼女に対して微笑んだ。


 このクッキーの目の真ん中には星が付いており、星を加工し、目をちゃんと見えるようにするのは名人でも極めて難しいとされる。大変希少価値のあるクッキーだ。


皮膚の質感が餅のようで、髪は滑らかな白餡で極東のクッキーだろう。


 そして一体だけ極東のある華の国の高級そうな民族衣装を身にまとい、赤いピアスが揺れている。薄暗いピンクと赤のメッシュの入った髪で、団子にしてあり、これもまた派手な飾りがついている。


 一見、中性的ではあるが声質的に男であろう。香ばしくスパイシーな香りがする。彼は桜子を少し見た後に信濃と目を合わせる。


「うぅ…ヒヤシンスブルーチェリーですぅ。チェリーって言いますけど…こ、今夜は楽しんでください!」


 二つに別れた髪色は青とピンクであり、おさげには色違いのリボンが両方につけられている。色味的に中々派手なクッキーである。彼女だけメイド服の袖がなく、長い手袋をつけている。


 そして右目にはモノクルがついており、カカオと紅茶の匂いがする。いかにも気が弱そうだ。


「そして僕がご夫人に仕え、この館の指揮監督を務めさせて頂いております。料理長ベーカリー・オーナーと申す者です、以後お見知りおきを」


 彼は大柄のコックで、黄色い尖った目、頬に赤のハートのマークがあるのが特徴的だ。彼だけは人間で、何も匂いがしない。


「本当にぺっぴんさんばっかりで」

「五分の二は男性ですよ?」


 桜子には冗談は通じない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る