第1話 神殺しの略奪者(シーラ)
人生が2度あれば......あなたは何をしますか?
—それが例え、どんなに苦しいものでも—。
—それが例え、終わることのない物でも—。
—それが例え、大切な物でも......“奪って壊す”ことが出来ますか?
何故、〇はその人生を選んだのか、理由は忘れてしまった。
終わることのない悲しみを何度味わった事だろう。時空を超えて、何度、世界を救ったのだろう。考えることを忘れて、今はその存在さえ怪しいほど廃れた何か—物—モノ—者だった。
これは、〇の始まりの物語。
「—おぬしの二つ目の人生は.......呪いに浸食された者を殺すことじゃ」
始まりは、そう.....確かこんなことを言われた気がする。
一つ目の人生も魅力的だった。—なのに、いまいちピンと来なかった。
その頃は.....確か、俺だったか。俺は神に二つ目の人生を聞いた。
—名前は思い出せない。だけど、確か俺は呪いに浸食された者に殺されて、神に何もない空間に運ばれたと言われた気がする。
神は確か、俺にその後
「この“略奪者”の力をおぬしに与え、まずは神を殺してもらう」
俺は「は?」と思ったが面白そうだったからそれを受け入れた。
略奪者の力は禍々しい漆黒のオーラと呼ぼうか、球体と呼ぼうか悩む謎の物体で、初めは困惑したはずだ。
その謎の物体を神からもらうとそれは弾けて消えた。
何かが込み上げるような感覚を知り、それがこの略奪者の力だと分かる。
「成功じゃ」
神がそう言うとほぼ同時刻に俺の周りに知らない連中がどこからか現れる。
そいつらは俺に敵意をむき出しにしながら囲む。
「ちょっとゼウス。これはどういうつもり?」
連中の中の一人が神に話しかける。それと同時に神の名前がゼウスだと分かった。
「なに、おぬし等にはこやつの尊い犠牲になってもらうんじゃよ」
神ゼウスが右の手を挙げて一回パチンと指を鳴らすと同時に奴らの動きが止まった。
正確に言えば目に見えない糸のようなもので拘束されているのだが、当時の俺にはそんなことなど知っているはずが無かった。
「んなっ!ゼウス!あなた本気なの!?」
連中の中の一人がまた問いかける。
「もちろん。本気じゃよ。....●●(自分の名前)、今からこやつらを殺してもらうぞ」
俺は動揺していた。だが、俺の動揺など関係なく事が進む。
「そやつらのどこかに触れてみよ」
俺は恐る恐る手を伸ばした。
「やめろ、やめてくれえぇぇぇぇぇ」
その声で一瞬戸惑うが、「やれ」と神に言われ、謎の力で強制的にそいつに触れた。
そいつは触れた瞬間、淡い光に変わった。
次々と触れていくものが淡い光になる。俺の意思とは関係なく体が動き、また一人、また一人、淡い光になって消えていく。悲鳴が飛び交い、目から涙を流して、心の中では「やめて!もうその手を止めて!!」と強く願うがそんなのお構いなしに次々と手はまた一人と伸びていく。
—すべて、淡い光になった頃には俺に感情なんて無かった。涙も枯れて、目元は赤くなり、その目には光が無く、俺は数えきれない程の神を殺した。
「おめでとう!おぬしは神の権能を得たことにより、いろんな力を手に入れ—」
神に歯向かおうと力を込めたが、動かない。
「....無駄じゃよ」
その言葉で、俺は歯向かう事をやめた。
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