魔女の貸本屋~人食いフェアリー・テイル~

緑月文人

あらすじ

二十世紀初頭の英国で貸本屋を営む若い夫婦を装う魔女と使い魔がいた。

 魔女は、店を訪れた少女にある御伽噺を読み聞かせる。

 ・物語の内容

 とある家の一人娘アリスと仲良くなった家事妖精のホブゴブリンがいた。

 アリスは体が弱く寝たきりだったがホブゴブリンと仲良くなるにつれ、彼に名前を与える。

 ある日珍しく体調がよかったアリスは外へ出かけるがあまりに色素の薄い外見から、気味悪がられ、近くの少年から石をぶつけられる。けがの治療のため、再び部屋にこもり泣くアリスをホブゴブリンは慰める。笑顔を見せるようになったアリスだが、その後体調が悪化して亡くなってしまう。両親は嘆き悲しみ、家を手放して遠くへ去ってしまう。

 アリスが死んだことを理解しているが受け入れたくなかったホブゴブリンは、彼女がいつか帰ってくると自分に言い聞かせ掃除を行う。ある日、外に出かけたホブゴブリンはアリスに石をぶつけた少年を目撃する。

 彼がいるせいでアリスがいまだに戻ってこられないのかもしれないと思ったホブゴブリンは、彼を追い払おうとする。だがその後の記憶が途切れて、気づけば少年の姿はどこにもいない。

 おびえて逃げたのだろうと思い屋敷に変えるホブゴブリン。その後も屋敷に忍び込む少年たちを見つけ追い払うが、やはりその時の記憶がない。

 記憶がないこととアリスが戻ってこないことに不安を感じながら、屋敷の中でアリスを待ち続けるホブゴブリン。

 そこに一組の男女が現れる。魔女とその使い魔と自己紹介し「人食いの魔物を退治しに来た」と告げる彼らに困惑するホブゴブリン。いきなり腕を切り落とされ怒るが、その腕を見て驚愕する。さらに、鏡で異形になり果てた今の自分の姿を見せられ、自分がいつのまにか、子供を殺す人食い妖精・バクベアになり果てていることに気づき、恐怖し絶望する。殺してほしいと願うバクベアに答えて殺す男女。自分が犯した罪と家事妖精でなくなったことに恐怖するバクベアだが、最期にある言葉を聞いて、かすかな安堵を抱いて死ぬ。


 少女に物語を読み聞かせ終えた魔女と使い魔は、一日の仕事を終えた後に自室に戻り本来の姿(少女に読み聞かせた物語の中の魔女と使い魔)に戻る。

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