028:ゴースト・ラインからの刺客
試験日時に指定された場所までやって来た。
紫電に乗りながら辺りを索敵する。
しかし、相手となるAランクの傭兵の姿は見えない。
何かが可笑しい。妙な胸騒ぎの正体は――スラスターを噴かせた。
頭上から何かが勢いよく落ちてきて爆ぜる。
地面を滑りながら避けていって、俺はスモークを散布して煙に隠れた。
俺を見失った敵は辺り一帯を爆撃している。
謎の敵は完全武装であり、絶対に試験官ではないと断言できた。
やっぱりこうなるのかと思いつつ、俺は役に立たない武装をパージして。
一気にスラスターを噴かせて煙から飛び出した。
センサーを動かして上空を見れば、遥か頭上より爆撃機が飛行していた。
俺はそれをマーキングしながら、マップを開いて指定のポイントへ急ぐ。
そんな中で敵の接近を知らせるアラートが鳴り響いて。
四機のメリウスが高速接近してきていた。
俺はそれを何とか振り切ろうとして加速して――あった。
指定のポイントに到着すれば一つのコンテナが置かれていた。
俺はそこに降り立ち、中から出てきたアームが武装を換装し始めた。
まだか、まだか――来たッ!
敵が肉眼で捉えられる距離まで迫っている。
相手からロックオンされて、ミサイルが放たれた。
小型のミサイルが放たれて――換装が完了する。
勢いよく上昇して、迫りくるミサイルに向かってプラズマ砲を向けた。
シェル内が青く発光してバチバチと音が鳴る。
俺は引き金を引いて勢いよく弾を乱射した。
精度はそれほど良くないものの、連射性能はピカ一で。
迫りくるミサイルを全て撃ち落して、俺はこれを放った敵へと距離を詰めようとした。
黒いメリウスたちは散開して、手にはヒートブレードとアサルトライフルを携行している。
装甲は厚く、肩部や脚部にはミサイルポッドも取り付けられていた。
見た目はゴテゴテとしている癖に妙に機敏で。
人間の動きではなく常軌を逸した機動で飛び回っている。
俺は奴らが無人機であると確信していた。
「――ゴースト・ラインかッ!」
何処で俺が昇級試験を受ける情報を手に入れたのか。
分からないが、今はそれを考えている余裕はない。
プラズマ砲を乱射しながら距離を取って、相手の動きを観察する。
奴らはセンサーを赤く発光させながら連携攻撃を仕掛けてきた。
一機が肉薄してブレードで切りかかってくる。
その隙を埋めるように頭上に上がった敵がライフル弾を放ってきて。
後方へと移動しようとすれば、背後からもう一機が切りかかってくる。
残った一機は全体が見える位置で停止していた。
スラスターを噴かせて包囲網を突破しようと試みる。
背後の敵が接近してきてブレードを振るい――胸部装甲を軽く削られた。
ギャリギャリと嫌な音が響いて。
俺は機体を回転させながら避けて、一気に距離を離す。
後方より追随してくる無人機は俺の動きを止めようと弾丸を放ってきた。
精密な射撃であり、俺はそり立つ壁をスライドしながらその弾をプラズマ砲で焼き払う。
内部機関により弾は作られていくものの、バレルは消耗品だ。
このまま使い続ければいずれおしゃかになる。
その前に何とかケリをつけたいところだけど――そう簡単にはいかないだろう。
上空よりミサイルの接近を確認。
一気にスラスターを噴かせて加速する。
上空からロックオンされてミサイルが俺を追ってくる。
俺は限界まで速度を上げて、後方を向きながらプラズマ砲を放つ。
バチバチと音を立てて弾が勢いよく飛ぶ。
発光する弾がミサイルを焼き爆ぜさせた。
爆発音が響き黒煙が上がって、その中を無人機が突破する。
ぐんぐんと距離を詰めてくる無人機たち。
それを視界に入れながら、俺は更に加速して上空へと行って。
空中で待機している爆撃機に対して遠慮なしの砲撃を浴びせた。
「堕ちろッ!!」
プラズマの一斉放火を浴びて鉄の塊から爆炎が上がった。
これで空中からの攻撃を警戒する必要が無くなった。
ひと先ずの安心を覚えつつ、俺はこうなれば短期決戦に臨む覚悟で戦いを挑もうとした。
「出力全開――はぁ!?」
俺が機体の能力を解放させて更に加速して――相手も追いついてきた。
見れば少しだけ発光しており、確実にパクりやがった。
汚い猿真似であり、俺は憤慨しながら急速反転し相手に突っ込んでいった。
ライフル弾とプラズマ砲がかち合って爆ぜて、互いに煙の中を突っ込んで交差して。
スラスターの粒子で線を描きながら、お互いに極限の状態で戦った。
一定の距離を保ちながら弾丸を発射。
互いに装甲を削りながら決定打を与えられない。
風を切り裂き飛翔して、ゼロ距離による攻撃をしようとすれば観察していた一機が横やりを入れてくる。
あの機体が謎であり、先ほどから戦闘に積極的に加わらずにいる。
一体何の真似なのか――試すか。
機動力を活かして相手をかく乱しに掛かる。
機械に真似できないであろう軌跡を描いていく。
俺の周りを飛ぶ敵の弾丸を紙一重で避けながら、遠目から観察する一気に狙いを付けて――弾丸を放つ。
他の敵を狙うそぶりを見せて奴へと弾丸を放った。
すると、敵は驚こともせずに悠々と弾丸を回避して――今だッ!!
残り時間を使って一気にブーストする。
スラスターがイカれるかどうかのハイブーストで。
俺は奴へと一気に接近して、そのまま鋭い蹴りをお見舞いしてやった。
呑気に回避行動を取った無人機はまともに俺の蹴りを喰らって。
装甲をぐしゃりと凹ませながら錐もみ回転していた。
しかし、姿勢制御システムによって空中で体勢を戻して。
ビタリと止まったそれはゆっくりと俺へと視線を向けてくる。
そうして、俺へと通信を繋げてきて話し始めた。
《いやはや、素晴らしい力だ。やはり貴方は逸材ですね。初めてお会いしてから、貴方の可能性に目を付けていましたよ》
「……お前、あのスキンヘッドか」
《スキンヘッドとは魅力が無いですね……ふむ、私の事はハイドとお呼びください》
自らをハイドと名乗った男の声には覚えがある。
俺を帝国で捕まえて拷問していた男であり、今はあの無人機越しに話しかけてきていた。
確実にあの中には搭乗していないものの、こういう機能も隠し持っていたのか。
俺はお前らの狙いは何なのかと問い詰めた。
新人類やイレギュラー、それを研究して何を成し遂げたいのか。
《今はまだ言えませんねぇ……ですが、近いうちに理解できましょう。それよりも今は、此処を突破する方法を見つけた方が賢明ですよ……切り札も時間切れのようですしね》
リミッターを再度付けた状態で、奴らに勝てるのか。
もう一度能力を解放したところで、エネルギーが圧倒的に足りない。
ダメージは与えているものの、相手は未だに健在で。
勝機があるとすれば、俺が更に成長する以外に方法は無い。
こんな短時間で俺は自らの殻を破れるのか――やってやるしかねぇッ!!
「お前ら纒てスクラップにしてやるよ。さぁ来いッ!!」
《ハハハ! 見せてくださいよ! 貴方のその力をッ!!》
スラスターを噴かせて一気に上空へと上がる。
追随してくる無人機たちはセンサーを点滅させて。
俺は強く歯を食いしばりながら、更に機体を加速させていく。
限界ギリギリに高度をまで上がっていく。
機体から嫌な音が聞こえてきてアラートが鳴り響く。
意識が朦朧としていく中で唇を血が出るほど噛んで――此処だッ!!
一気にスラスターを逆噴射させて急停止する。
そうして、横を通り過ぎていく無人機を見ながら今度は地上へと降下していく。
プラズマ砲を構えながら乱射して、奴らを下から狙い撃つ。
「その速度で撃ったら、真面に狙いがつかないだろう――喰らってくたばりやがれッ!!」
風の抵抗を強く受ける奴らと違う。
俺はバカすかと弾を放って避ける事も出来ない奴らを攻撃した。
ライフル弾を放ってくるが直線では掠める事も出来ない。
豆鉄砲と化したそれを無視しながら、俺がプラズマ砲がおしゃかになるまで弾を撃つ。
一機は全身に弾が被弾して空中分解を起こして、もう一機は回避しようとして姿勢を崩してスラスターに弾を被弾させた。
一気に二機を堕として、もう二機――俺は驚いた。
「何処に――ッ!!」
残りの二機を探せば、遥か上空で静止していた。
奴らはアサルトライフルを投げ捨てて――一気に降下してくる。
限界までスラスターを噴かせてブーストしている。
連続によるブーストによって奴らは俺との距離を縮めて――左腕をもぎ取られる。
咄嗟の判断で回避したが間に合わず。
後から来た一機に腕を取られてしまった。
空中で視界が揺れて、何とか姿勢を制御して地面に着地した。
俺は呼吸を大きく乱しながら、空中で俺を見下ろす二機を睨みつける。
あの無人機たちとは違って、こいつらの動きは妙だ。
まるで、要所要所で誰かが操作しているようで。
完全なる無人機というわけではないのかと思いながら俺は警戒した。
腕を取られて頼みのプラズマ砲も使い物にならない。
俺はそれをパージして、地面に突き刺さっている敵のヒートブレードを掴んだ。
「やってやるよ――ぶっ殺すッ!!」
ブレードの切っ先を構えて猛然と襲い掛かる。
そんな俺を静かに見つめる敵は、氷のように冷たい殺気を放ってきていた。
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