スキルの設定、過激な暴力描写、そして、善悪という不確かなものの間に生じる葛藤や変化、祈りが魅力的な作品です。
正しいとは何なのか。主人公・志郎や女神・ペルシュナ、それ以外の様々なキャラクターを通して、きっと考えさせられることと思います。
他の作品と同じく、この作品の転生者たちも女神によってスキルを与えられているのですが、その多くは魔族と癒着し、人々を苦しめる存在となっています。志郎は神の代行者として、そんな転生者たちに罰を下します。
その神罰代行がとにかく容赦ないのです。転生者たちは罪のない人々を苦しめている「悪」の側なのですが、かと言って、志郎を「善」と呼ぶには彼は苛烈すぎます。相手に一切情けをかけず、徹底的に死に追いやるその様は、時に「悪」の側に見えるほどです。
また、神の代行者、人々を苦しめる転生者、殺人犯……同じ「殺す」という行為であっても、そこに違いはあるのか? 立場や動機等によっては正当性を持つのか? 正義になるのか?
現実世界の戦争や犯罪、死刑などとも重ねて考えることのできる内容でもあると、個人的には思います。
悩む。間違える。変わる。一度決めた立場や価値観を引っくり返す。
そういった不確かな世界で生きる人間は、神の前ではやはり、迷える存在なのだろうと思います。
神と人。その関係性を感じられるところも本作の魅力であると、私は感じました。
実は、最終話へのコメントに「続きがあったら読みたい」と書こうか迷いました。続編の構想があったとのお返事をいただいて、書けば良かったー!と思ったので、こちらに書かせていただきます。
少し気になっている点もありますし、何より非常に魅力のある作品だと思いますので、いつかまたこの世界に触れることができたら嬉しいなと思います!