再会…14

秀頴のお役目は4日に1度の交代制。こっちは一応の順番はあるものの捕り物の相手や状況によって、出て行く隊が決まる。俺の一番隊は手練がそろっている分、他の隊よりも出動頻度は高い。


お互いのお役目の合間を縫って、2人で京を歩いた。秀頴の好きそうな甘味処、蕎麦、天ぷら、鰻。京に来て一年、教えて貰った店に出向き味を確かめ秀頴が来た時に

どこに連れて行くのか、京に関する薀蓄やらとにかく2人で京を共有したかった。


店を選定する時に一番難しいのは江戸と京の味の違いだ。

うす味でも美味しいと思えるもの、物足りないもの、様々あった。

特に鰻は背開きでないし、金串を使う店もあって味や身の柔らかさが違っていた。

秀頴の好みの味の鰻屋を探すのに苦労した。


 秀頴と会うための準備。秀頴と京で会うことは夢のまた夢だと思いながら一緒に歩くことを夢みていた。それが実現できる幸せを噛み締めていた。


再会の喜び、照れ屋でおくてな秀頴が積極的に求めてくれたこと何もかもが嬉しかった。この気持ちを秀頴に伝えたい… でも今渡してしまうと他の人の目に触れてしまうかもしれない、それ以上に本心を知られてしまう照れくささがあった。

ここは少し趣向を凝らせて…。文は江戸に送ってみてはどうだろう。江戸に戻った秀頴を俺の文が待っている…、いいかもしれないな。


文を送る場所も決まったことだし、江戸で秀頴を待つ恋文を書いてみた。



   ★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★


伊庭 八郎秀頴様


無事に江戸に戻れた様で何よりだね。

京で再会したあの夜の翌日、この文を書いているよ。


ねぇあれほど秀頴が欲しいと思ったことはなかった。あの時ほど秀頴が愛おしいと思ったことはなかった。今までもずっと秀頴を欲しいと、愛おしいと思っていたけれど離れている間に気持ちはさらに膨らんでいたようだよ。

秀頴の魅力は変わらないどころか、今まで以上に魅力的で俺を引きつけるよ。


それと、あ、えっと… 来てくれて有難う。

秀頴から求めてくれることはないかもしれないと思っていたし、俺もそういうのは苦手なのだと思ってたのに、そうじゃなかった。

秀頴の手の中にある我が身はとても幸せを感じていたよ。俺は

秀頴のものだと確かに実感できた幸せはこの上ない。本当に幸せだよ。


京に上がるわがままを許してくれて有難う。自分の矜持を優先させた俺を

嫌わずにいてくれて有難う。有難う。

秀頴でなければ駄目なんだ。俺には秀頴だけだよ。有難う。


変わらず好いてる。変わらず好いてておくれね。    

                         宗


   ★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★



この文のことは秀頴が江戸に帰るまでの秘密。寂しく江戸に戻った時に喜んで貰えまいかと願いを込めて送るよ、秀頴。



お互いにお役目の無い時に会う約束をするものの、俺の役目が不規則で部屋で待って貰っても会えない時もあった。秀頴と会うためなら日にちを変更できた用事も、ここ京では思う様にならない。江戸と京の違いがここにあった。


それでもお互いに会う時間を作って京を満喫した。

調べあげ、厳選した人気の甘味処は秀頴の口にあったようで努力した甲斐がある。美味しいものを食べている時の、秀頴の嬉しそうな表情を見るだけで幸せになれた。


鰻屋では江戸と京の違いと題して薀蓄を語り、江戸っ子でも美味しいと思える鰻を探したのだと自慢した。金串で焼く鰻をみたことがない秀頴にはピンと来ない話題だったのか、

「金串だと美味しくないの?」


と食の探求に余念のない秀頴らしい返答が返ってきた。美味しくないというよりも竹串で慣れてる江戸っ子にはちょいと馴染みのない身のしまり方と焼加減なだけで好みによっちゃ江戸っ子でも美味しいと感じるかもしれないと京の味の説明もぬかりなく

さらに一言付け加える。


「試しに食うのも一興だろうが薦められたもんじゃねぇぞ」

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