再会…12
久しぶりに秀頴に会って、もう理性の歯止めがきかないギリギリのところで
何とか平静を保っているフリをしていた。
秀頴は平気な顔で風呂に入ろうというし、
それを考えただけで湯立ってしまいそうな俺がいた。
もう限界だ。湯あたりを口実に風呂から上がり
早々に屯所を出た。屯所に私室があるとはいえ、両隣は近い。
左之さんといっちゃんだから黙って見逃してくれるだろうけれど
今日は今まで江戸で会っていた時とは違う。一年間会えなかったことで
俺の理性は首の皮一枚残っている、そんな感じで座敷へ急いだ。
まだ慣れない京の地。用向きがあって座敷には行ってはいるが
艶っぽい泊まりは皆無なので、どこに行けばいいのか見当がつかない。
とりあえず、泊まれる座敷を聞いて出かけてきた。
屯所から程近い場所の座敷になだれ込んだ。
膳を用意して貰い、そのまま朝まで誰も来ないようにお願いした。
やっと二人きりになれた。
そう思って秀頴を見つめていると視界がくもって秀頴が見えない。
「宗さん?」
にじり寄って来る秀頴は、不思議そうな顔をして俺の頬を撫でた。
秀頴の手が濡れている。体は正直に再会を喜んでいた。
俺を見ている秀頴の目にも熱いものがこみ上げていた。
お互いの頬を撫でながら、目で気持ちを伝える。
もう理性は限界。歯止めはききそうにない。
いきなり徳利の酒を口に含み、口移ししながらゆっくりと押し倒した。
「宗さん?」
「悪い。酒と飯はあとでたんまり食べりゃいい。でも今は先に…」
その先の言葉は秀頴の手で遮られた。
「宗さん。それはね、おいらも同じだよ」
そういってくすくす笑っている。やっぱり変わらない。
その笑顔が嬉しくて、可愛くて更に煽られてしまう。
その白い肌も、細いがしっかりとした肉の厚みも変わらな…い?
あれ、少し痩せたのか?
秀頴の体を這う手が止まった。
「どうしたの? 宗さん?」
「いや… 痩せたか?」
「もう。宗さん、そりゃそうだよ。旅の間、皆おいらの寝る邪魔をしてくれてさ
ちゃんと眠れやしない。食べても食べても足りゃしなかったよ」
「沢山食べられたろう?そりゃ願ったり叶ったりだな」
「宗さん。誰のせいだと思ってるの? 痩せたのは誰のせい?」
「俺だね。そう俺のせいだ。罪滅ぼしに… 何をしたらいい?」
「さぁてね」そう言ってくすくす笑い始めた。
「駄目だ秀頴。もう我慢できないよ。ねぇこれじゃ罪滅ぼしにならないかぃ?」
「さぁてね」またくすくす笑っている。
少し手を止めてみる。
「宗さん、罪滅ぼしはしなきゃでしょ?」
「ん? いいかぃ?」
「ん…」
そう言って俺の首に腕を回してくる。秀頴も同じ想いだ。
これまでの、江戸での時は夢じゃなかったと確かめる様に貪り合う。
京に来て一年。遊郭やらなにやらに行ってないとは言わない。
憂さ晴らしに、用向きの付き合いで何度か出向いた。それは否めない。
ただ、その度に俺の求めているものが明確になる。欲しいと思うものはたった一つ。
体も心も全てを満たせるのは秀頴しかいないと実感する。
その時の寂寥はなんとも言いがたいほどに辛く寂しくなってしまう。
憂さ晴らしにならない遊びは止めた。
そして今、本当に求めている人が目の前にいる。この気持ちの高揚と
満たされた心。人を斬るようになって澱んでいた感情が清流に押し流されていく。
やっぱり秀頴でなけりゃ駄目なんだと、つくづく思い知った。
「宗さん? 何か考えごとしてるでしょ?」
「あ… ごめん」
「否定しないんだ」
「いやさ、やっぱり秀頴でなきゃ俺は駄目なんだなと実感してたんだよ」
「そ、、宗さん。何をいきなり」
「いや、本当に実感したんだ。秀頴がいいね。俺は秀頴が好きだよ」
「ん、おいらも」
お礼の代わりに口付ける。秀頴がさらに色香を増す。またそれに煽られる。
求めても、求めても終わらない。このままずっと一緒にいれたらいいのに…
そんなことを思っている俺の下から声がした。
「宗さん。お腹すいた」
食べることが好きな秀頴も健在だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます