再会…11
たかが風呂だ!! 何てこたぁないんだ!! と思っちゃいるが
やっぱり明るい風呂場でお互いに肌を晒すとなると照れくさい。
寝所ではとても恥ずかしがる秀穎だが、風呂や井戸端は平気だ。
今も島田に風呂といわれて嬉しそうにしている。
秀穎は平気なのか?それともただ気づいてなだけか?
こうなったら勢いしかない。秀穎の手を取ってさっさと風呂に行く。
「ほらっ!! いくぞ!!」
照れくささを誤魔化しながら、そそくさと風呂場に向かう。
さっさと着物を脱いで湯船に向かった。
秀穎よりも先に入っていると、脱衣所から声がする。
「そ、、そぉさん…」
「どうした?」
「あ、、あのさぁ」
「どうした?」
「は、、恥ずかしい」
何を今頃言ってるんだか…。
こっちが照れてる時は全く意に介してなかったくせに。
「背中を向けてるから、そのうちに来なよ」
「う、、うん」
何も知らない仲でもないのに、俺達は背中合わせに風呂に入った。
時折、触れる背中が更に動悸を早くする。
「秀穎…」
「宗さん…」
「あ… 秀穎からどうぞ」
「そ、宗さんから、どうぞ」
お互いに久しぶりでどうしていいか判らない。
嬉しくて嬉しくて照れくさくて照れくさくて…。
日々人を斬ることが平気になってる俺にも、
まだ初心な気持ちが残ってるらしい。
背中合わせのまま、秀穎にもたれる。
「ねぇ… 本当に久しぶりだぁねぇ」
「だね、宗さん」
「だなぁ… あれからさ毎晩毎晩、月を眺めていたよ」
「空は繋がってるからって、そういったよね」
「うん。言った」
言葉では足らない。今まで、会えなかった時のこと
やっと会えた今の気持ち。言葉で伝えられないほどあふれる想い。
頭の芯がボーっとする。
ん… いやそうじゃない。これは… まずい!!
「秀頴! 出るぞ!!」
「どうしたの宗さん。いきなりさ」
「まずい!! まずいんだよ!!」
「何? お役目でもあるのかぃ?!」
「ち、、ちが、、、 湯あたり!!」
倒れる前に湯船から出た。普段ならもう少し入っていられるはずなのに
今日はいつもより短時間で頭がクラクラしてきた。
きっと湯あたりでなくて、秀頴あたりだ… 思わず笑った。
「もぅ 宗さん何?」
「湯あたりじゃねぇや。秀頴あたりだったらしい」
「へっ? おいら?」
「そう、おいら。この人が原因だ」
「さあ、さっさと風呂から出て、酒なと奢ってくれねぇかな?」
「おうよ! おいらだって望むところさ」
そそくさと風呂を出て、場所を替え屯所に近い座敷のある居酒屋へとくりだした。
色気があるんだか、ないんだか… 全く俺達らしいというのか、なんというのか…
友情と情愛の両方をいったり来たりする、この塩梅がなんとも心地いい。
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