再会
再会…9
明けて文久四年。
公方様のご上洛に際して、何かと忙しい。
昨年末には水戸関連の同士もいなくなり、新選組の幹部は
試衛館に縁のあるものばかりになった。
俺も偉そうにするつもりは無いのだが、人が増えて
教える立場だったり、現場を指揮する立場が確立したことで
年上の人までも俺のことを「先生」と呼びたがった。
その呼び方はどうも収まりが悪いので辞退させて貰った。
困り果ててどう呼べば良いかと尋ねてくるので
「沖田さん」にして貰った。
やはり、しゃちこばるのは性に合わない。
偉そうにしているより、一緒に戦う人達と遠慮なく交流できるのが
楽しかった。あちこちで、へらへらと減らず口を叩くので
近藤先生はもちろんのこと、歳さんにも叱られることがあった。
そして秀穎からの次の文が来たのは年が明けてからだった。
★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★
沖田総司様
宗さん
初めての京の冬で
無理をしてないだろうか
私はご府内を出たのは初めてで、
見るもの聞くものが珍しくてたまらないよ
今日の宿は飯に川魚の煮たものが出て
たいそう美味しかった
昨日の宿は漬け物が
美味しくて、ついお代わりをしたよ
大津まであと数日
そうしたら、もう次は大坂だよ
待っていてね
秀頴
追伸
ねぇ、新選組も大坂にくるよね
公方様のお迎えにさ
★,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜★
ん? 公方様のお迎えで大坂? すでに行った後だぞ。
ってことはさぁ、そろそろ秀穎が京に来てる頃だぁねぇ!!
やったぁ!!近々会える!! 秀穎!! 秀穎!!
待ってたよ。この日をずっとずっと待ち焦がれていたよ!!
秀穎も同じだよね。あぁもう!! どうしたらいいんだろう。
こりゃ急いで、秀穎がいつ訪ねて来ても良い様に
門番の連中に話をつけておかなきゃだ!!
文を握り締めたまま、表に向かった。
玄関近くまで来て、いっちゃんとすれ違った。
「そうちゃん、えらく浮かれてるね?」
「おぅ!! 伊庭が来るんだよ!! 伊庭が!!」
いっちゃんと話をしていると表から声がする。
えらく騒々しい。表の方を見ると門番がこちらにやってくる。
「お、、沖田さん!! あの… その伊庭って人が… あの…」
「あん?! 伊庭?!」
「は、、はい!! そうなんです。それでちょっと…」
「宗さん!!」
「ひで、、い、いや、伊庭!!」
「宗さーーん!!」
走り寄る秀穎。夢のようだ!!
門番は困った様に、こちらの様子を伺う。
「沖田さん。あの本当にお知り合いで?」
「あぁ!! もちろんだよ!!」
「で、、あの伊庭って…」
「おい!! お前さん江戸の伊庭道場って聞いたことないか?」
「あっ、、は、、はいっ! 知ってます!!」
「そこの次期ご当主だ!!」
「ええっもしかしてあの… 沖田さんお知り合いで?」
「ん、江戸からの友人だ。これからは伊庭が来たら改めなくていい。俺の部屋へ
案内しておいてくれないかな」
「は、、はいっ!!」
どうも皆、秀穎が気になって仕方がないらしい。
早く部屋に戻って二人きりにならなければ落ち着かないな。
部屋に戻る途中、影に隠れながらこちらの様子を伺う奴が一人。
誰かと思えば島田だ。
「どうした島田?!」
「あ、、あの伊庭さん?ってあの伊庭道場の…」
「あぁそうだよ。伊庭の小天狗とか麒麟児とか言われてるあの伊庭だ!!」
その言葉を聞いた途端、島田の顔がパッと華やぐ。
「どうした?」聞いて気づいた。島田は心形刀流だ!!
「あ、、あの…」
「思い出したよ。お前さん心形刀流だったぇねぇ」
「は、、はい!! だから嬉しくて!!」
「そうか、また時間があれば来るだろうから…」
まだ話をしたそうな島田を置いて、秀穎の手を取って自室に連れて行った。
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